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人気の街ランキングで長年上位にランクインしている街、吉祥寺。駅から車で10分も走れば、写真のような畑が目に入ってくる。都会の住宅地の中に残されたこうした広い畑が、2022年以降に消えてしまい、宅地として不動産市場に大量供給される問題があると指摘されている。1992年に改正された法律が定めた30年という期限が到来して、その多くが宅地化されるとみられているのだ。

相続問題や不動産市場で注目される生産緑地とは?

生産緑地と住宅

1992年に改正された法律とは「生産緑地法」。良好な都市環境を確保するため、都市部に残存する農地の計画的な保全を図る目的で制定された法律だ。1992年に同法が改正された際、市街化区域内の農地は「宅地化すべき農地(=宅地化農地)」と「保全すべき農地(=生産緑地)」に分けられた。

 

市街化区域とは「すでに市街化を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図る地域」とされる。つまり、農地を転用して宅地化(市街化)を進める区域である。政策の推進のため、自治体は農地にかかる固定資産税を宅地並みの水準まで引き上げるなどの施策をとった。

 

しかし、東京にも練馬の大根や江戸川の小松菜といった名産品があるように、市街化区域といえども農作物の栽培で優れた農地として活用されているエリアもある。新鮮な農作物の供給源として都市近郊に保全すべきこうした農地のため「生産緑地」制度が導入された。

 

生産緑地は、主に三大都市圏の特定市(東京23区は併せて一つの市とみなす)において地区指定される。その際、次の3つの要件を満たす必要がある。

  1. 公害又は災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること
  2. 500㎡以上の規模の区域であること
  3. 用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること

 

2015年3月末時点の統計調査によれば、首都圏では、東京都で練馬区、八王子市、立川市、町田市などに、神奈川県で横浜市、川崎市などに、千葉県で船橋市、柏市などに広く生産緑地地区が指定されている(国土交通省:平成27年都市計画現況調査より)。

 

生産緑地のメリットとデメリット

前述のように、三大都市圏の特定市にある市街化区域内の農地は、宅地化を進めて市街化を促す目的から、農地といえども原則として宅地並みに課税される。そのため、多くの農地が宅地化されてきた。1993年から15年で宅地化により区域内の農地は半減した。

 

一方で、生産緑地に指定されると固定資産税や都市計画税といった「保有税」が大幅に軽減されることになる。また、相続税においても納税猶予制度の適用を受けることが可能になり、安心して農業経営を行うことができるようになる。こうしたメリットは大きく、宅地化によって市街化区域内の農地が半減した15年の間、生産緑地は1割ほどしか減少していない。

生産緑地の2022年問題_図1

図1 出典:国土交通省

 

もちろんメリットばかりではなく、デメリットもある。生産緑地の所有者は農地としての管理が求められ、「売れない」、「貸せない」、「借りられない」、「建てられない」という制限を背負うことになる。生産緑地は基本的に売ることができず、第三者に貸すこともできない。また、生産緑地を担保として金融機関から借り入れを行うこともできず、生産緑地の上にアパートやマンションを建てることもできない。後述のように30年間、農業を経営する義務が貸せられることになる。

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一度指定されたら解除が難しい生産緑地

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いったん生産緑地に指定されると、指定を解除できる機会は滅多にこない。農業経営だけの収入では不安だからと、生産緑地を解除してアパートや駐車場経営で収入を得ようと考えても、思い立ったときに解除ができるわけではない。

 

生産緑地の指定を解除するには、

  1. 生産緑地の指定後30年が経過した場合
  2. 農業従事者又はそれに準ずる者が死亡した場合
  3. 農業従事者に農業ができない故障が生じた場合

 

のいずれかのときに、自治体に生産緑地を買い取るように申し出る必要がある(通称「買取申請」と呼ばれる)。今までは2か3の場合にしか買取申請をすることができなかった。

 

買取申請をうけた場合、、市町村長は特別の事情がない限りその生産緑地を時価で買い取るものとし、買い取らない場合1ヶ月以内に「買い取らない旨の通知」をし、その後2ヶ月間、他の農家へのあっせんに務めなければならないとされている。あっせんが不調の場合にようやく生産緑地の指定が解除されるのだ。

 

実際にはこうした買取申請は儀式的なもので、自治体が買い取ることも、他の農家にあっせんされることもほぼない。そのため買取申請から3ヶ月後には生産緑地の指定が解除される。解除されると「売れない」「貸せない」「借りられない」「建てられない」といった制限がなくなるが、翌年から固定資産税等の優遇措置もなくなる。ただ所有しているのでは、土地が広いだけに所有者の税負担は大きい。売却するか、賃貸住宅等を建てて「有効活用」するほかはない。土地の上にアパートなどの賃貸住宅を建てれば、固定資産税や相続税を下げることができるからだ。

 

 

生産緑地の2022年問題

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相続が発生したり、両目の失明や手足の喪失といった大きな障害を負うなどした場合以外では申請できなかった生産緑地の指定解除が、30年経過しただけ(前述1)で可能となるのが「不動産の2022年問題」の発生原因である。1992年に改正されてから30年を経過するタイミングが5年後に迫っている。

 

国土交通省の都市計画現況調査によると、全国で13,442ヘクタール(約4,000万坪)にのぼる生産緑地のうち、東京都だけで3,296ヘクタール(約1,000万坪)を占めている。およそ1/4が東京都内の土地だ。23区内だけでも、463ヘクタール(約140万坪)と、東京ドーム約100個分の土地が潜在的に不動産市場に供給される可能性がある。2022年以降、都市部の生産緑地が指定を解除され、毎年のように不動産市場に多く放出され需給バランスを崩すと見られるのが「不動産の2022年問題」の中心である。

 

もちろん、30年経過したからといってすべての所有者が生産緑地の解除を行うものとは考えにくい。しかし農業従事者の高齢化や後継者不足も避けられないなかで、たとえ30年経過しなくても、相続(所有者死亡)や農業後継者がおらず農業経営が続けられない場合には生産緑地を解除するしかないことを考慮すれば、大規模な生産緑地の不動産市場への流入は避けられないだろう。

 

立地が良ければオフィスビルやマンションの経営に乗り出すこともできるだろうが、そもそも山手線の内側に生産緑地がないことからも、恵まれた立地というのは少ない。そのため、多くが小規模なアパート経営に乗り出すか、戸建て分譲業者に売却すると考えられる。とりわけアパート経営に関しては、近年、相続税対策で増えたアパートとの競争激化が避けられない。こうした状況下でアパートの供給が増えれば、さらなる空室問題が予想される。これから相続させる・相続する当事者にとってはよくよく検討しなければならない課題だ。

 

2053年には1億人を割り込むと言われる人口減社会は、これから本格的な到来を迎える。高度経済成長時代のような、農地の宅地化により住宅を増やしていくという都市計画行政からの、大幅な転換が求められている。

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執筆者: やさしい相続編集部