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遺産分割は相続人の利害がダイレクトに衝突するため、相続のプロセスの中でも特に重要なポイントです。相続人全員が納得できるような着地点を探すためには、「遺産分割の方法」についての知識が不可欠です。遺産分割には複数の方法がありますので、これらを組み合わせることにより、「争続」にならない平和な遺産の配分を行うことができます。

 

この記事では、数種類の遺産分割の方法の中でも、相続財産に占める不動産の割合が多い(※注1)わが国の相続で一般的な「代償分割」について、くわしく解説していきます。

 

注1:相続財産の中で最も多くの割合を占めるのは、田畑や土地・家屋といった不動産(全体の38.0%)。国税庁「平成27年度の相続税の申告状況について

 

代償分割とは?

代償金を支払って代償分割する

遺産分割とは相続財産を相続人同士で分割する手続きです。しかし、相続財産は分割できるものばかりではありません。不動産のように物理的に分割するわけにいかない相続財産も存在するのです。代償分割とは、そのような場合に一部の相続人が相続財産を現物で取得して、その相続人は「代償金」を他の相続人に支払うという遺産分割の方法です。

 

(1) 代償金の支払いは分割払いも可能

代償金の支払いは一括払いである必要はありません。相続人同士の同意があれば、分割払いを選択することもできます。不動産など高額の相続財産の場合、代償金を一括で支払えるだけの資金があるとは限りません。そのため、分割払いで合意できるのであれば、分割払いを選択するのが現実的でしょう。

 

(2) 代償金は現物支払いも可能

代償金の支払いは、なにも金銭だけに限られません。相続人同士の合意があれば、現物(何らかの価値のあるモノ)で支払うことも可能です。たとえば、金銭に代えて、株式などの有価証券や不動産、骨董・古美術品などで代償金を支払うことも可能です。

 

※注:現物支払いの場合、譲渡損益に注意

現物支払いを選択すると、その現物は支払時の時価で評価されます。現物の財産の「取得時の価格」と「支払時の時価」に差がある場合、譲渡損益が発生することを意味します。

 

たとえば、600万円で取得した株式を代償金の支払いに使い、支払時の時価が1,000万円である場合、差額の400万円の譲渡益が発生することになります。この譲渡益には所得税が課税されることになってしまいます。そのため、代償金を現物で支払う場合には不用意に税金を発生させないよう、注意が必要です。

 

その他の遺産分割の方法

遺産分割の方法

遺産分割には、代償分割の他に、現物分割・換価分割・共有分割の3つの方法があります。

【遺産分割の方法】

  • 現物分割
  • 代償分割
  • 換価分割
  • 共有分割

 

遺産分割の方法のくわしい解説は「遺産分割の方法(現物分割・代償分割・換価分割・共有分割)まとめ」をご参照ください。

参考記事:【換価分割編】失敗しない遺産分割協議書の書き方

 

代償分割が選択される3つのケース

代償分割はどんなときに使うの?

相続財産が分割しにくい場合や、分割できない事情がある場合に代償分割が選択されます。代償分割が選択されるのは、主に次の3つのようなケースです。

【代償分割が選択される主なケース】

  1. 相続財産に不動産が含まれるケース
  2. 一部の相続人が被相続人のご自宅や土地を使い続けるケース
  3. 事業を引き継ぐケース

 

(1)相続財産に不動産が含まれるケース

代償分割と不動産

現金や預金といった相続財産は1円単位で分けることができますから、比較的簡単に分配が可能です。一方で、不動産の分割は物理的にも手続き的にも簡単なものではありません。相続人全員が納得できるように不動産を分割するのは難しいことなのです。

 

不動産の分割が難しいため、その不動産を相続人全員の共有にすることもありますが、あまりお勧めできる方法ではありません。共有にしてしまうと、不動産を売却する際に相続人全員の同意が必要となり、自由な処分ができなくなってしまうためです。

 

遺産の共有は遺産分割を先延ばしにするだけの方法です。次の世代の相続が起きたとき、不動産の共有者が多いため手続きが困難になってしまうケースも少なくありません。仮に1世代の相続人が3人いるとした場合、2世代目で9人、孫の世代にあたる3世代目では27人の共有財産となってしまい、もはや全員に連絡を取り合意を形成することは非現実的でしょう。

 

そのようなことにならない為に代償分割があります。代償分割により不動産を相続したい相続人は不動産を、そうでない相続人は代償金を受け取ることで、相続人全員が納得できる遺産分割を行うことができます。

 

(2) 一部の相続人が被相続人の自宅や土地を使い続けるケース

相続した家に住み続ける場合に代償分割を選ぶ

被相続人が生前、一部の相続人と同居していた場合にも代償分割が利用されます。たとえば、同居していた自宅の名義が亡くなった被相続人になっていた場合、その物件は相続財産となり遺産分割の対象になってしまいます。そうすると、同居していた相続人は住む家を失ってしまう可能性があります。

 

そこで、代償分割を利用します。同居していた相続人が自宅を相続し、その他の相続人に代償金を渡すことで、その家に住み続けることができるのです。

 

(3)事業を引き継ぐケース

事業承継と代償分割

個人事業であれ法人(会社)であれ、被相続人が営んでいた事業を一部の相続人が引き継ぐケースでも、代償分割が有効です。株式などを含む事業のための財産は相続の対象となりますが、これを相続人全員が相続してしまうと、オーナーシップや事業用資産の分散が起きてしまいます。そうすると、事業を引き継ぐ相続人にとっては会社の円滑経営や意思決定の妨げとなり、結果的に事業価値が既存したり事業運営が困難になってしまう危険があります。

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そこで代償分割が利用されます。事業を引き継ぐ相続人が事業用財産を引き継ぎ、その他の相続人には代償金を渡すことで、事業用資産の分散を防ぎ、事業を継続することができるのです。

 

代償分割の際の注意点

代償分割の際に注意すべきポイント

代償分割を利用することで、より柔軟に相続財産を分けることができますが、いくつか注意すべき点があります。

【代償分割の注意点】

  1. 代償分割には相続人の合意が必要
  2. 代償金の支払いには多額の現金が必要
  3. 代償金の支払いで揉める危険がある

 

(1)代償分割には相続人全員の合意が必要

代償分割を行うといっても、相続人ひとりの一存で決めることはできません。相続人全員に合意してもらう必要があり、少なくとも代償金のやり取りを行う相続人同士で合意する必要があります。

 

(2)代償金の支払いには多額の現金が必要

代償金の支払いに現物払いが可能といっても、実際の支払いで利用されることが多いのは現金です。代償金を支払う相続人は当然その資金を用意しなければなりませんが、代償金は高額になることも多いため、その資金を準備できるかどうはきちんと検討する必要があるでしょう。

 

(3)代償金の支払いで揉める可能性がある

代償金の支払いが決まったとしても、その支払いがきちんと履行されるとは限りません。特に代償金の分割払いを選択したケースでは、受け取り側は代償金を回収できなくなる危険も高まります。最悪の場合、代償金の支払いを巡って相続人同士で争ってしまう可能性がありますから、代償分割を選択する場合には支払い可能性・回収可能性にまで注意するようにしましょう。

 

代償分割と生命保険をセットで使うのがおすすめ

生命保険をうまく使って代償分割をスムーズに完了させる

生命保険金を上手に利用すれば、代償金の支払いのための資金を準備することができます。被相続人が被保険者で、相続人が受取人となっている生命保険契約の保険金は、 相続財産ではないため、遺産分割の対象とはなりません。そのため、受取人となっている相続人が単独で受け取ることができます。

参考記事: 相続財産のすべて~やさしい相続マニュアル~の項目「例外的に相続されない財産その3、生命保険金」

 

これを代償分割とセットで利用するとどうでしょうか?代償金を支払う予定の相続人を受取人とする生命保険を契約しておけば、相続が発生した後で生命保険金を受け取り、そのお金を代償金の支払いに使うことができるのです。

 

ただし、この方法を利用するには代償分割を行うことを想定し、あらかじめ生命保険契約を結んでおく必要がありますから、相続が始まってから検討を始めても手遅れであることにご注意ください。相続で失敗しないためには、事前の準備がなによりも大切です。

 

代償分割がある場合の遺産分割協議書の書き方

代償分割がある場合の遺産分割協議書

相続人全員が合意して遺産分割協議が成立すると、後日の紛争を防止するために合意内容を記録に残し、遺産分割協議書を作成します。

 

代償分割を選択する場合でも、遺産分割協議書の書き方は標準的なものと基本的に変りません。ただし、一部異なる点があります。必ず遺産分割協議書に代償分割を選択した旨を明記することです。

 

(1)代償分割の旨を遺産分割協議書に記載すべき理由

代償分割を行う場合、相続人の間で代償金として金銭などのやり取りが発生します。遺産分割協議書に代償分割の旨を記載しない場合、この金銭などのやり取りが贈与とみなされ、贈与税が課税されてしまうおそれがあります。

 

遺産分割協議書には「相続人Aが相続人Bに対して、代償金として◯◯円を支払う」と書けば十分です。この一文があるかどうかで、贈与税の負担の有無が決まってしまうかもしれませんので、必ず記載するようにしてください。

 

(2) 代償金の金額・支払方法・支払期限を記載する

代償金のやり取りは、通常は相続人同士の間、つまり親族間で行われます。代償金の支払いとはいえ、親族に対して支払いを請求することは何だか気が引けてしまう、という方は多いのではないでしょうか?しかし、遺産分割協議とはそもそもお金に関わる交渉と契約ですので、厳しく当たらなければなりません。

 

代償金の支払方法や支払期限を曖昧にした結果、代償金の支払いがうやむやになってしまうことが少なくありません。特に、代償金の支払いを分割払いにした場合、時間の経過とともに代償金の回収が難しくなることがあります。相手も人間ですから、支払わずに済むものは支払いたくないという心理が働くことに留意しましょう。

 

そのため、遺産分割協議書には、代償金の金額・支払方法・支払期限を明確に記載しておきましょう。このように、代償金の支払いの詳細を遺産分割協議書に記録しておくことで、代償金を回収できる可能性を高めることができます。あなたが代償金を受け取る側の場合、一括払いを基本に交渉するのが望ましいでしょう。

 

代償分割と遺産分割協議書のまとめ

代償分割のまとめ

いかがでしたか?代償分割を上手に利用することで、遺産分割の幅が広がり、遺産分割を成功に導ける可能性がぐっと高まります。そのため、相続財産に不動産が含まれる場合や、事業を引き継ぐ相続人がいるといったケースでは、代償分割のご利用を検討してみてください。なお、高額の財産の分割や不動産の手続きなど税金が絡んでくる場面では、どのようなやり方が最も特をするのか、弁護士や税理士など専門家の知識を活用することをお勧めします。

 

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執筆者: やさしい相続編集部