相続が始まると相続人全員で「遺産分割協議」を行わなければなりません。全員で協議しないと無効になるだけでなく、誰が・何を・どんな方法で取得するかという分割のパターンも多岐にわたるため、遺産分割は相続のヤマ場となる難しい手続きです。

 

この問題を解決する方法のひとつが「複数の遺産分割の方法を組み合わせる」ことです。では遺産相続の方法にはどのようなものがあるのでしょうか?この記事では4種類の遺産分割の方法と利用すべきケースをくわしく解説していきます。

【相続と遺産分割:基礎編】遺産分割の基本ルール

遺産分割の第一歩、共有状態の遺産をわける

故人(被相続人)の相続財産は、相続が始まってすぐに各相続人に割り振られるわけではありません。いったん相続人全員の共有財産になります。

第八百九十六条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

第八百九十八条
相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

この相続財産は、いつまでも共有状態のままにしておくわけにもいきません。なぜなら共有状態になっている相続財産は、その処分(売却など)に相続人全員の同意が必要となるためです。たとえ相続人の1人が「土地や建物を売却して相続税の支払いを準備しよう」と思っても、相続人全員の同意を得る必要があり、個人の意志だけでは動かせないのです。

 

そこで必要となるのが遺産分割です。遺産分割は、共有状態になっている相続財産を各相続人に帰属させる手続きです。遺産分割をおこなうことによって、相続財産は各相続人のものとなるのです。

 

遺産分割はいつでも自由におこなうことができますが、必ず相続人全員で決めることが必要になります。

第九百六条
遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

第九百七条
共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。

 

 

遺産分割が難しい理由

遺産分割で相続争いが発生しやすい

遺産分割のしかたを決めるには、相続人全員が話し合い、その全員が同意する必要があります。相続人全員が簡単に同意してくれるかというと、なかなか簡単ではありません。遺産相続は「財産の取り合い」という面も否定できず、誰かが得をすれば誰かが損をするという真剣勝負の場でもあるからです。

 

お金を目の前にすると人は簡単に目の色が変わりますし、相続人の嫁や夫などの関係ない人間が口を出してきて話がややこしくなることもあります。こうした金銭的な利害の対立をうまく乗り越えるためにも、遺産の分割にはいくつか種類があるということを知っておいて損はありません。

 

【相続と遺産分割:分割編】遺産分割の4つの方法

遺産分割の4つの方法

相続人の間に利害対立があるといっても、複数の遺産分割の方法を組み合わせて使うことで、その対立をいくらか軽減することができます。ここでは、その複数の遺産分割の方法をご紹介していきます。

 

遺産分割には、次の4つの方法があります。

【遺産分割の4つの方法】

  1. 現物分割
  2. 代償分割
  3. 換価分割
  4. 共有分割

 

遺産分割の方法その1 現物分割とは?

現物分割で遺産を相続する

現物分割とは相続財産をそのままの形で、相続分に応じて分割する方法をいいます。一般的に遺産分割といえばこの現物分割を指す場合が多く、もっとも簡単な遺産分割方法です。

 

<現物分割の例>

相続財産を、

  • 現預金は相続人Aさん
  • 不動産は相続人Bさん
  • 有価証券(株式)は相続人Cさん

それぞれが相続します。AさんとBさんCさんのそれぞれの相続分が公平に釣り合っていれば、現物分割を選択するのが第一候補ということになります。もちろん、不動産と有価証券の評価額はそれぞれきちんと算出する必要があります。

 

現物分割が利用されるケース

現物分割は多くの相続財産の分割で用いられます。また現預金だけが遺産である場合など、簡単に分割できる場合にも現物分割が用いられます。ただし遺産の内容が不動産や各種権利といったそのままでは分割が困難な財産しかない場合は、現物分割でなく他の方法が用いられます。

 

遺産分割の方法その2 代償分割とは?

代償分割で相続する

代償分割とは、一部の相続人(Aさん)が相続財産を現物で取得し、Aさんは相続人Bさんに対して、代わりに代償金を支払うという遺産分割の方法です。

 

<代償分割の例>

相続財産に自宅不動産しかない場合に、

  • 相続人Aさんが自宅不動産を相続する
  • 相続人BさんはAさんから現金を受け取る

といった形式を取ります。もっとも、Aさんにこの代償金の支払余力がない場合は選択できません。

 

代償分割が利用されるケース

代償分割が利用されるのは、おもに相続人が故人(被相続人)の名義の不動産に住み続けることを希望する場合や、一部の相続人が故人の事業を引き継ぐ場合です。

 

〈ケース1〉相続人が被相続人名義の不動産に住み続けることを希望する場合

相続人の一人が被相続人と同居していた場合を考えるとわかりやすいでしょう。相続人・被相続人が同居していた自宅不動産は、相続が始まると相続人全員の共有になり、遺産分割の対象になります。同居していた相続人がこの自宅不動産を単独で引き継げないとなると、その相続人が住む家がなくなる等の不都合が生じます。

 

そこで、代償分割が選択されます。代償金を支払えば、同居していた相続人が自宅の不動産を単独で引き継ぐことができます。

 

〈ケース2〉一部の相続人が事業を引き継ぐ場合

被相続人が営んでいた事業を相続人の一部が引き継ぐ場合にも代償分割が利用されます。事業を営むためには株式を含めて事業用資産が必要になりますが、現物分割で遺産を分割してしまうと、各相続人に事業用資産が分散して相続されてしまい、事業を引き継ぐ相続人が事業を継続することが難しくなってしまいます。

 

そこで代償分割が利用されます。代償金を支払うことにはなりますが、代償分割を行うことで事業用資産の分散を防ぐことができ、事業を引き継いだ相続人は安心して事業を行うことができます。

 

代償分割のくわしい解説は「【代償分割編】失敗しない遺産分割協議書の書き方」をご参照ください。

 

遺産分割の方法その3 換価分割とは?

換価分割で相続する

換価分割とは、相続財産の一部または全部を売却して得た現金を、各相続人の相続分に応じて分配する方法です。たとえば時価1,000万円の不動産が相続財産に含まれる場合、その不動産を現金1,000万円に換金して、その現金を相続人に割り当てる方法が換価分割です。

 

換価分割が利用されるケース

換価分割が利用されるのは、相続財産の中に相続人の誰も引き継ぎたくない不動産がある場合などです。たとえば亡くなった方の自宅の土地建物を相続人の誰も利用する予定がない場合、修繕費や将来の値下がりを考慮して、なるべく早く売却してしまった方が相続人全員にとってプラスになる場合などです。そこで換価分割を利用することで、不動産の売却収入を各相続人が現金で相続できるのです。

 

換価分割のくわしい解説は「【換価分割編】失敗しない遺産分割協議書の書き方」をご参照ください。

 

遺産分割の方法その4 共有分割とは?

財産を共有分割で相続する

共有分割とは、各相続人の持分を決めて共有で分割する方法をいいます。共有分割の対象となった相続財産は、各相続人の持分割合に応じた共有状態になります。

 

共有分割が利用されるケース

他の遺産分割の方法とは異なり、共有分割は積極的に利用される方法ではありません。それは、共有分割は単なる「遺産分割の先延ばし」であり、相続トラブルの引き金となってしまうことがあるためです。

 

共有分割のくわしい解説は「【共有分割編】安易な利用に注意、共有分割と遺産分割協議書の書き方」をご参照ください。

 

 

遺産を分割する4つの方法 まとめ

遺産分割の4つの方法

遺産分割にはさまざまな方法があります。それぞれの特徴を生かして、それぞれを選択、あるいは組み合わせて利用することで柔軟に遺産を分けることができます。実際には遺産の評価額を算出したり、これらの方法を組み合わせるためには専門的な知識や経験が必要となることが多くありますから、遺産分割の際には弁護士や税理士などの専門家にご相談されることをおすすめします。

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執筆者: やさしい相続編集部