相続の大論点!遺産分割を徹底解説!

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相続の場面で、常に問題になるのが「遺産分割(いさんぶんかつ)」です。ここでは、たくさんの人が一度は直面するであろう遺産分割の問題について、くわしく解説していきます。

 

 

遺産分割で揉める理由

「遺産分割」とは、被相続人(故人)の相続人(遺産を引き継ぐ人)が複数いる場合に、誰が、どの財産をどのくらい引き継ぐのかを確定する手続きです。遺産分割が相続の大きな問題となる原因は、相続人が誰なのか、相続財産がどれだけあるのか、遺言の有無やその内容、遺産分割の方法が決まらない、相続人同士の感情のもつれなど様々です。

 

 

遺産分割の手順

ここでは遺産分割の手順を説明しますが、ここでご紹介する手順はあくまで一般的な遺産分割の手順ですから、各家庭の事情に合わせてご参照ください。

 

 

〈ステップ1〉相続人を確定させる

被相続人が亡くなったら、まずは必ず相続人を確定させてください。相続人がいるかどうか不明な場合には、戸籍謄本などを取り寄せて、家族関係を調べるところから相続は始まります。

 

 

〈ステップ2〉相続財産を確定させる

相続人を確定させたら、次は被相続人の遺した財産(相続財産)がどれだけあるのか調査し、確定しましょう。また、遺産分割対象とはならないけれども相続分の計算上必要となる遺贈財産(いぞうざいさん)や生前贈与財産(せいぜんぞうよざいさん)についても確認しましょう。

 

 

〈ステップ3〉遺産の一覧表「財産目録」を作成する

相続財産を確定させたら、次は財産目録(ざいさんもくろく)を作成します。財産目録とは、遺産を一覧にした書面です。

財産目録の作成は、法律上必ずしも求められているわけではありませんが、遺産分割を円滑にする役割や、相続登記の手続き・相続税の申告手続きにに利用されるため、必ず作成するようにしましょう。

 

 

〈ステップ4〉遺産分割の方法を決める

財産目録を作成したら、実際に遺産分割を行います。遺言書がある場合には、遺言執行者(いごんしっこうしゃ)を選任するなどして遺言書の内容を実行します。遺言書がない場合や遺言書が無効な場合、あるいは相続人全員で合意した場合などには、相続人同士で話し合いを行い、遺産を分割する方法を決めます。

 

 

〈ステップ5〉遺産分割に必要な手続きを行う

相続人や親族間だけでは遺産分割の話し合いがまとまらない場合、調停委員に話し合いに参加してもらう「調停手続き」や、家庭裁判所の裁判官による判断を仰ぐ審判手続きを行うことになります。これらを「遺産分割調停(いさんぶんかつちょうてい)」「遺産分割審判(いさんぶんかつしんぱん)」といいます。遺産分割の内容が確定したら、登記などの名義を実際に移転する手続きに移ります。

 

 

〈ステップ6〉必要な場合は遺産分割をやり直す

遺産分割は、一度で完了することが理想です。しかし、きちんとした遺産分割が行われなかった場合、遺産分割を再び行わなければならないことがあります。

 

 

ここまでのまとめ

  • 遺産分割は相続トラブルが起きやすい「相続のヤマ場」です
  • 遺産分割は6つのステップからなります

 

 

そもそも遺産分割とは?

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そもそも、遺産分割とはどういったものでしょうか?ここでは遺産分割の概要を解説していきます。

 

 

相続が始まったときの遺産は誰のものか?

遺産分割とは、相続の開始によって相続人が被相続人(亡くなった方)の財産を一括して承継した後、その財産を誰がどれだけ取得するかを決める手続きのことをいいます。そもそも相続人が複数人いる場合、相続の開始によって被相続人の財産は相続人全員で共有状態になります。「共有」とは、みんながそれぞれその物の所有者であるけれど、みんな単独で自由に使うことのできない状態といいます。ですから、遺産分割とは、被相続人の財産を共有している不便な状態から、自由に使うことができる状態へ移行する手続きといえるでしょう。

 

 

遺産分割が必要となるケースとは?

遺産分割は、相続人が複数人いることが前提です。相続人がひとりだけであれば、遺産のすべてを無条件にその相続人が相続するわけですから遺産分割は必要ありません。相続人が複数いる前提で、次のいくつかの場合に遺産分割をする必要が生じてきます。

 

 

遺言書がない場合には遺産分割が必要!

被相続人が遺言書を遺していない場合には遺産分割が必要になります。

遺言書とは、被相続人が相続人その他の人に対して最期の意思表示をする機会です。そして、被相続人はその遺言書の中で、相続人やそれ以外の人に対して、相続財産の一部または全部を譲り渡す意思表示をすることができます。遺言書に財産を譲り渡す旨の記載があれば、基本的にはその財産は譲り受ける人に引き継がれることになりますから、遺産分割の手続きを行う必要はありません。一方で、遺言書に財産を譲り渡す旨の記載がない場合には、遺産分割の手続きをする必要が生じます。

 

 

遺言書の内容や生前贈与などに争いがある場合には遺産分割が必要!

遺言書があり、財産の譲り渡す旨の記載がある場合でも、遺産分割を行う必要がある場合があります。

 

 

法律関係で争いがある場合-遺言・生前贈与・死因贈与

たとえば、遺言書や生前贈与などの有効性を争っている場合には、遺産分割が必要になります。遺言書が無効になると、当然に遺言書がなかった状態になるため、遺産分割の必要性が生じます。また、すでに行われた生前贈与の有効性についても争われる場合があります。たとえば、相続人のうちの1人が被相続人から不動産を譲り受けたとして登記をして所有権を移転している場合に、その登記は相続人が強引に被相続人の印鑑などを使って行った、などといった争いがある場合です。その主張が認められた場合には、その不動産は被相続人の相続財産となり、遺産分割の対象になります。

 

 

死因贈与(しいんぞうよ)についても、争いの種になりやすい問題です。死因贈与とは、贈与者(あげる人)の死をきっかけに受贈者(もらう人)に対象財産の所有権を移転する契約をいいます。死因贈与は、贈与者と受贈者の合意によって行うことができるため、遺言書による必要はありません。反対に、遺言書がなくとも死因贈与があったとして、相続人や相続人以外の第三者が争うことが多いようです。

 

 

争いの解決の方法-調停・裁判

これらの法律問題を解決する手段として、調停や裁判があります。遺言書などの相続財産にかかわる争いは、家庭に関する問題ですので、初めから裁判をするのではなく、調停による話し合いによる解決を目指します。それでも解決できない場合には、遺産の範囲の確認のための裁判を行うことになります。

 

 

遺言書があっても、相続人全員で合意した場合は遺産分割を行う

遺言書は被相続人の最期の意思表示ですから、それをぞんざいに扱う人は少ないでしょう。ただし、遺言書を作ることによって「誰にいくら相続させるか」を決めたいといっても、現世で生きるのは遺された人ですので、最終的に決定する権限は相続人にあることになります。それため、相続人全員で遺産分割をすることに合意するのであれば、遺言書があったとしても遺産分割をすることはできます。ただし、相続人以外の第三者への遺贈が含まれる場合とそうでない場合とで、遺産分割を行える遺産の範囲は異なります。

 

相続人以外の第三者への遺贈が含まれていない場合の相続財産

相続人以外の第三者への遺贈が遺言書の内容に含まれていない場合、相続人全員の合意による遺産分割の範囲は、相続財産全体になります。これは、相続人が取得できるのは被相続人の財産のすべてになるためです。

 

 

相続人以外の第三者への遺贈が含まれている場合の相続財産

相続人以外の第三者への遺贈が遺言書の内容に含まれている場合、相続人全員の合意による遺産分割の範囲は、相続財産のうち遺贈された財産を除く相続財産になります。これは、相続人が取得できるのは被相続人の財産のうち、遺贈された財産を除く部分に限られるためです。

 

 

ここまでのまとめ

  • 相続がはじまった時点で、遺産は相続人の共有状態になります
  • 遺産分割が必要となるのは、遺言書がない、あるいは何らかの争いがある場合などです

 

 

相続人を確定させる

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遺産分割は相続人同士で行いますから、その相続における相続人が誰になるのか確定する必要があります。

 

 

法律で決まっている相続人の範囲

誰が相続人となるのかは、法律で定められています。法律で定められた相続人を「法定相続人(ほうていそうぞくにん)」といいます。法定相続人とは次の者をいいます。

 

  • 第1順位相続人 被相続人の子
  • 第2順位相続人 被相続人の直系尊属
  • 第3順位相続人 被相続人の兄弟姉妹
  • 配偶者

 

順位が上の法定相続人がいる場合には、下位の順位の法定相続人は相続人となることはできません。たとえば、被相続に子がいる場合、被相続人の両親や祖父母などは相続人になることができないということです。配偶者がいる場合には、配偶者は常に相続人となり、第1~第3順位の相続人とともに相続人となります。第1順位及び第3順位の法定相続人が、被相続人が死亡する前に既に亡くなっている場合には、その子らが代わりに相続人になります。これを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」といいます。

 

 

相続人の範囲は変更することができる

相続人の範囲は法定されたものだけではありません。被相続人の意思や相続人の行動などにより相続人の範囲を修正することができます。相続人の範囲が変わる例としては、遺言書による包括遺贈(ほうかついぞう)、養子縁組、相続人の欠格(そうぞくにんのけっかく)、相続人の廃除(そうぞくにんのはいじょ)、相続放棄(そうぞくほうき)などがあげられます。

 

 

遺言書による相続人の範囲の修正

遺言によって相続人の範囲を修正することができます。

たとえば、「〇〇に、相続財産のうち3分の1を相続させる」といったように、割合により遺産を相続させる旨の遺言書を作った場合、遺言書の相手方(受遺者)は相続人と同じ扱いをされることになります。受遺者になるのは、下位の順位の法定相続人でも法定相続人以外の第三者でも構いません。

 

 

養子縁組による相続人の範囲の修正

養子縁組をすれば、養子と養親は法律上の血縁関係を結ぶことになりますので、相続人となります。子や父母のいない被相続人の遺産を兄弟が相続しようと考えていても、被相続人が誰かと養子縁組を結べば、その養子が第一順位の相続人となって遺産を相続することになります。

 

 

相続人の欠格による相続人の範囲の修正

相続人になる予定の者が被相続人を殺害したり、被相続人の財産を隠匿した場合には、その者は自動的に相続人でなくなります。これを「相続人の欠格(そうぞくにんのけっかく)」といいます。相続人の欠格にあたる事情は、相続人としてあるまじき行為をした者として法律で定められています。

 

 

相続人の廃除による相続人の範囲の修正

相続人の一部に遺産を相続させたくない場合、被相続人が相続人を相続人でなくする方法があります。これを「相続人の廃除(そうぞくにんのはいじょ)」といいます。相続人の廃除は、廃除するにあたって相当な理由のある場合に被相続人の申し立てと家庭裁判所の審判によって認められます。なお、相続人廃除をされた者に子がいる場合、その子は代襲相続人となります。

 

 

相続放棄による相続人の範囲の修正

相続人が被相続人の相続財産を取得したくない場合、相続放棄の手続きを取ることができます。相続放棄をすると、被相続人の有していた財産を承継しないでよいだけでなく、一切の負債からも解放されることになります。相続放棄は、相続の開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申述をすることで認められます。相続放棄をした場合には、同じ順位の法定相続人または後の順位の法定相続人が相続人となります。

 

 

相続分を確定させる

相続人の範囲を確定させると、次は各相続人にどれだけの相続分があるかを算定します。同じ順位の相続人が複数人いる場合、相続分はその頭数での按分になります。配偶者と第1順位から第3順位の相続人の両方がいる場合、相続分は次のようになります。

 

  • 配偶者:第1順位相続人=1/2 : 1/2
  • 配偶者:第2順位相続人=2/3 : 1/3
  • 配偶者:第3順位相続人=3/4 : 1/4

 

配偶者と第1順位から第3順位の相続人の両方がいて、かつ第1順位から第3順位の相続人が複数人いる場合には、上記の配偶者との按分割合をさらに頭数で分け合うことになります。

 

 

誰が相続人かを調べる

親族との関係が疎遠になると、相続人として誰がいるのかわからない場合があります。また、愛人との間の子どもをこっそり認知していた場合や養子縁組していた場合には、戸籍などを調べてみて、はじめて相続人の存在に気づくことがあります。遺言書による認知などの場合には、戸籍に表れないけれども相続人となる人が存在する場合もあります。

 

 

なぜ相続人を調べなければならないのか?

相続人の調査が必要となるのは、親族にとって相続人の範囲が必ずしも確実ではないからです。相続人の範囲を誤解したまま遺産分割をしたところで、相続人全員での遺産分割でないため、その中での合意は無効になってしまいます。無効な遺産分割をして、再び遺産分割のやり直しをする場合などは確実に親族で揉めることになりますので、紛争を予防する観点からも遺産分割前に相続人の範囲を確定する必要があるのです。

 

 

どうやって相続人を調べるか?

相続人の調査方法としては、戸籍謄本の取り寄せ、遺言内容の確認が主となります。戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍を取り寄せることで、被相続人の生前の親族関係を明らかにすることができます。生前の養子縁組などは届出をしたうえで戸籍に記載されていなければならないため、戸籍の記載がないけれども養子縁組をしたという者を相続人の範囲からきちんと排除することができます。一方で、遺言書によって認知することで、戸籍に載っていない者が被相続人の子となることがあります。このように、戸籍謄本等だけでは相続人の範囲は確定しないため、遺言書の確認をする必要があります。

 

ここまでのまとめ

  • 相続人は法律により決まっています
  • 相続人の範囲はさまざまな事情により修正・変更されます
  • 相続の手続きは、誰が相続人かを明確に把握することからはじまります

 

 

相続財産を確定させる

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相続人の範囲を確定させると、その相続人同士で分け合う財産の範囲も確定させる必要があります。ここでは、遺産分割の対象となる相続財産にどのようなものが含まれるのか、どのようなものが含まれないのか解説していきます。

 

 

相続する遺産「相続財産」

相続財産となるものは、被相続人の一身専属の権利義務を除く、すべての権利・義務です。すべての権利・義務ということは、被相続人の有していた資産だけでなく、負債(つまりマイナスの財産)も相続の対象となります。また、相続財産の中には、相続の開始によって相続人全員で共有状態になり遺産分割の対象となる財産と、相続人の具体的相続分に応じて当然に按分されて帰属する性質のものがあります。

ここでは、それぞれの相続財産について解説していきます。

 

 

プラスの財産「積極財産」

相続財産となるものには、被相続人の資産、つまりプラスの財産が含まれます。被相続人の資産のうち不動産や動産などのモノについては、相続の開始によって基本的には相続人同士の共有となります。一方で、特定の相手方に対して金銭等の支払いを請求できる権利である債権については、相続人の相続分に応じて按分されます。

 

 

不動産・動産・自動車

我が国では、相続財産のうち、もっとも大きな割合を占めるのは土地や建物といった不動産です。また、家財や貴金属類といった動産、自動車も相続財産として相続しやすいものといえます。これらの財産は、遺言書などによる遺産分割の指定がなければ相続人間での共有となり、遺産分割をする必要が生じます。被相続人が生前、実質的に所有していたものが相続財産に含まれます。そこで問題となるのが各種財産の名義問題です。

 

 

名義が被相続人の財産

不動産登記名義などの名義が被相続人のものである場合、基本的にはその財産について被相続人のものと考えられます。ただし、被相続人と他人が税金支払いの観点から被相続人に名義だけ移転していた場合など、実質的に被相続人の財産とは言えない場合には相続財産ということはできません。

 

 

名義が被相続人でない財産

名義が被相続人のものでなくとも、実質的に被相続人のものといえる場合もあり得ます。被相続人が自分と同居する子どものために自己費用で建物を建て、登記移転料を軽減するため子ども名義で保存登記をすることがあります。その意図が生前贈与であるならば、問題は異なりますが、あくまで被相続人の所有であることを自覚していた場合などは被相続人が実質的に所有していたものといえます。この場合、名義が被相続人でなくとも、その財産は相続財産となります。相続人以外の名義の財産について名義人とその帰属について争う場合には、対象の財産についての遺産確認請求をする必要があります。

 

 

現金

被相続人が財布の中に所持していた現金も相続人間での共有となります。また、家の中に隠してあったタンス預金なども相続人間での共有財産となり、遺産分割の対象となります。注意すべきなのは、一般的に同じものと考えられている現金(紙幣・貨幣)と銀行等への預貯金の扱いは別だということです。預貯金は次の金銭債権の項目にあたります。

 

金銭債権

金銭債権とは、特定の者に対して一定の金銭を支払ってもらえる権利です。銀行その他金融機関に対する預貯金もこの金銭債権にあたります。金銭債権は相続人間で共有とならずに、相続割合に応じて自動的に按分されます。

 

 

金銭債権の分割例

たとえば、金銭債権が1,000万円、相続人が配偶者、子A、子Bの場合、相続割合は次のようになります。

 

〈相続割合〉 配偶者:子A:子B=1/2 : 1/4 : 1/4

 

そのため、金銭債権1,000万円は次のように分けられます。

〈分割例〉

配偶者:子A:子B=500万円 : 250万円 : 250万円

 

このようにして、個別の相続人に帰属した債権については、相続人各自が個別に権利行使することができます。

 

 

金銭債権の取扱い

金融機関は、相続人全員の合意書を提出しなければ預金を引き出せないとする運用を従来から行ってきました。現状の金融機関の対応は各金融機関の運営方針に任されていますので、被相続人の預貯金のある金融機関について問い合わせて確認してみましょう。

 

 

生命保険受取金

生命保険受取金とは、生命保険契約に基づき、被保険者の死亡を原因として受け取ることのできる給付金のことをいいます。終身保険であれば、相続人が保険金の受取人となることが多いと考えられます。このように相続人などが受け取る生命保険金は、契約に基づいて発生する請求権ですので相続財産には含まれません。それゆえ、遺産分割の対象にもなりません。ただし、保険金の受取人は保険金の受け取りについて特別受益とみなされ、相続分を減額される可能性はあります。相続人が保険掛け金等の負担をしていない場合には特別受益とみなされることが多いといえます。

 

死亡退職金

死亡退職金とは、死亡を原因として相続人等に対して支払われる給付金のことをいいます。死亡退職金には、生前の被相続人の労務対価の後払いの性質と被相続人親族の生活保障の側面があります。労務対価の側面が強い場合には死亡退職金は被相続人に本来帰属すべきものであったとして相続財産となる可能性があります。

 

借地権・借家権

借地権・借家権とは、土地を賃借りする権利、家を賃借りする権利ですが、相続の対象となる財産です。借地権・借家権は、相続が始まると相続人間で共有となり、遺産分割によって最終的に権利の帰属先を決する必要のある財産です。なお、遺産分割までは相続人各自に相続分に応じた借地権・借家権が存在するので、各相続人が借地権・借家権を行使して対象財産を使用したり、利益を得たりすることができます。ただし、相続持分の過半をもってしても少数持分を有する相続人が対象財産の使用などを禁止することはできず、その相続人の持分を超える権限分について償還請求ができるにすぎません。

 

 

株式・社員権

株式・社員権といった会社やその他法人の持分権は相続の対象となる財産です。株式・社員権などは、相続が始まると相続人間で共有となり、遺産分割によって最終的に権利の帰属先を決する必要があります。なお、非公開株式等については経営権の集中・維持の目的のため相続人に対して会社から株式買取請求権を行使される場合があります。

 

 

投資信託受益権・国債・社債

投資信託受益権・国債・社債は相続の対象となる財産です。投資信託受益権・国債・社債は、相続が始まると相続人間で共有となり、遺産分割によって最終的に権利の帰属先を決する必要があります。これらは運用状況による変動収益であったり、利払いであったりと細かい性質は異なりますが、定期的に金銭を受けとることができる権利です。そのため、通常の金銭債権と同じように相続分に応じて自動的に分割されるかのように誤解されることもありますが、裁判所の判例では当然に分割されるものではないとの判断がなされています。

 

 

祭祀財産

祭祀財産とは、家系図、位牌、墓碑、墓地などの先祖を祭るために使用される財産をいいます。この祭祀財産については相続の対象とはなりません。ですので、共有にも遺産分割の対象にもなりません。祭祀財産は被相続人の遺言または相続人間の話し合いで先祖の祭祀を主宰する人に承継されます。

 

 

一身専属の権利

被相続人の一身専属にかかる権利については相続財産の対象とはなりません。一身専属の権利とは、その権利の性質上、被相続人の身に帰属すべきものをいいます。要は、被相続人その人でなければ認められないような権利のことをいいます。生活保護給付、老齢年金、公営住宅の使用権、親権者の地位、不要請求者の地位などが一身専属の権利としてあげられます。

 

 

マイナスの財産「消極財産」

相続財産には消極財産、つまり負債も含まれます。以下では代表的な負債について相続財産となるか、どのように承継されるか解説していきます。

 

 

借金

被相続人の負債として代表的なのは借金です。消費者ローンから借りたものや住宅ローンなど様々なローンがありますが、借金は基本的に相続財産として相続人に引き継がれます。相続人が複数人いる場合には、相続人の相続割合に応じて借金の額も按分されて各相続人に承継されます。各相続人はあくまで自分の相続分に応じた割合について負担するにすぎないため、他の相続人の負担する借金について債権者に支払う義務はありません。

 

 

保証人・保証債務

保証債務とは、債務者が義務を履行しない場合(借金を返済しない場合など)に備えて、代わりに義務を履行しまたは賠償責任を負担する債務をいいます。その債務を負う者が保証人です。保証人の地位及び保証債務については基本的に相続されます。ただし、身元保証のように将来発生しうる債務について包括的に保証する保証人はその契約を締結した者の一身に専属するものであるとして相続されません。なお、既に保証契約によって生じている債務については借金と同様に各相続人に相続分に応じて帰属しますので、ご注意ください。

 

 

抵当権・根抵当権

抵当権・根抵当権が土地建物といった不動産に付着している場合があります。このような担保も相続の対象になります。なお、抵当権・根抵当権は付着している不動産の帰趨に影響されますので、遺言や遺産分割によって対象不動産を取得した相続人等がその負担も承継することになります。

 

 

事業に関する負債

自営業を営まれている場合などには、事業に関する様々な負債を抱えていることがあります。それらの負債をどのように承継するのかは、事業形態によって異なってきます。

 

 

法人の形態をとっている場合の負債

株式会社、有限会社などの法人の形態をとっている場合、事業に関する負債は事業に対してかかります。そのため、負債を承継するのは会社の株式を引き継ぐ相続人や、社員権を引き継ぐ相続人が負担することになります。なお、事業主は事業に関する保証人となっている場合もありますが、保証人の地位の相続は前述のとおりです。

 

 

法人形態でない場合の負債

法人形態ではなく、個人で事業を行っている場合、事業にかかる負債は被相続人個人にもかかってくるものです。そのため、被相続人が亡くなった場合には相続人が相続分に応じて負担することもありえます。なお、債権者と相続について話し合い、事業を受け継ぐ相続人に債務を集中させ、その他の相続人の債務を免除してもらうこともありえます。ただし、そのためには債権者の同意が必要なため、常に債務を集中させることができるとは限りません。

 

 

被相続人の財産の相続人への帰属方法のまとめ

被相続人の財産については、積極財産も消極財産も共に相続人が承継します。不動産、動産といった所有物や賃借権といった権利については相続人間で共有となります。一方、金銭債権などの債権は相続分に応じて相続人に分割して帰属します。生命保険金、死亡退職金の一部は相続財産とならずに契約条項に応じて帰属が定まります。祭祀財産、一身専属権は相続財産とならないことに注意が必要です。負債は、基本的には相続分に応じて相続人が各自負担します。抵当権などの担保は付着している不動産を取得する者が負担し、事業に関する負債は法人形態であれば事業を承継する者が負担します。

 

 

ここまでのまとめ

  • 相続財産にはプラスの積極財産とマイナスの消極財産があります
  • 積極財産には、不動産や預貯金などが含まれます
  • 消極財産には、借金や保証人の地位などが含まれます
  • 遺産が相続財産となるかどうかの判定はきちんと行うようにしましょう

 

 

財産目録を作成する

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相続財産として何があるのか把握できたら、次は「財産目録(ざいさんもくろく)」を作成します。財産目録とは、遺産を積極財産、消極財産とに分類し、かつ各財産ごとに一覧表にしたものをいいます。

 

 

なぜ財産目録を作成する必要があるのか?

財産目録は、法律上必ず作成しなければならないわけではありません。しかし、財産目録を作成することにより、次のようなメリットが得られます。

 

  • 相続財産を漏れなく把握することができる
  • 遺産の分割を円滑に行うことができる
  • 相続税の申告を円滑に進めることができる

 

これらのメリットがあるため、多くの相続で財産目録が作成されます。

 

 

財産目録の作り方

財産目録を作るにあたって、特に定まった書式などはありません。各家庭事情に応じて作成されます。基本的には各財産ごとに相続財産を記載し、その評価額も記載します。ただし、後述するように、いくつか作成上の注意ポイントがあるとともに、作成の際に考慮すべき事情もあります。

 

 

財産目録を作る際に注意すべきポイント

財産目録を作成する目的は円滑な遺産分割協議の進行や相続税の納付に備えることですから、財産目録もその目的に沿った形式で作成されることになります。たとえば、財産項目ごとの財産の記載と評価額に加えて、財産を取得する人の名を記載する欄を作成したり、取得した相続財産の評価額の合計額を記載する欄などがあると遺産分割がしやすくなります。

 

 

財産の評価額の記載にあたって、不動産などについては複数の評価方法があることにご注意ください。相続税の納付に向けた不動産評価額を記載する欄と、相続人間で想定する不動産評価額を記載する欄を別途用意することで、より相続人間の公平を保つ効果があります。また、相続税の納付に際しては財産の特定が大切です。不動産の登記簿謄本や自動車の登録証、金融機関の名前・支店名・口座番号・預貯金の種等を明確に記入することで、後の手続きにかかる問題に対処することができます。

 

 

ここまでのまとめ

  • 財産目録の作成は義務ではありませんが、さまざまなメリットがあります
  • 財産目録に決まった書式などはありません
  • 財産目録は、後の相続手続きがラクになるように作成するようにしましょう

 

 

遺産分割の方法

 

財産目録を作成したら、いよいよ遺産を分割します。ここでは、遺産分割を進める基準や手順について解説していきます。

 

 

遺産分割の基準

遺産分割とは、相続人同士で話し合いを行い、誰がどの財産をどれくらい承継するか決める手続きです。ただし、話し合うとはいっても、ある程度の基準がなければ話も進みません。

法律上、遺産分割は「遺産の分割は遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」とされており、これはつまり「遺産の種類と相続人の状況から、その家庭ごとに適した遺産分割をせよ!」ということです。

これではなんだかぼんやりしていて、よくわかりませんね。そこでここでは、遺産分割において何を基準に分割すればよいのかについて、より具体的に解説していきます。

 

 

相続人との関係

相続人との関係でいえば、続人の相続分がどれだけあるか、相続人の生活状況や財産状況がどのようであるかが判断のポイントとなります。遺産分割協議はあくまで話し合いでの解決ですので、法律で定まった相続割合と異なる割合で相続財産を分割することもできます。合意により一切の相続分を取得しないという方法もあります(これは法律上の相続放棄とは異なります)。相続分を法定相続分よりも大目にもらう場合も、他の相続人が納得できるだけの理由を提示するべきです。例えば、寄与分にはあたらないけれど両親の介護を献身的に行った場合などは相続分を少し多めにもらえる事情になるでしょう。

 

 

相続財産との関係

相続財産との関係でいえば、どの財産をどれだけもらえるかがポイントになります。

相続財産に不動産がある場合、昔の慣習の名残から、長男や長女が不動産を相続することは比較的多く見られることです。また、たとえば居住用の不動産を同居する相続人が相続するなど、その不動産を有することでより多くの便益を取得できる相続人が相続することも多くみられます。預貯金などのような金銭債権がある場合は、相続分に応じて自動的に按分されますが、遺産分割協議によって特定の相続人に取得させることもできます。また、各不動産・動産を分割していく中で、清算金として利用する方法もあります。

 

 

遺産分割審判の場合

遺産分割審判の場合には、公平に遺産分割を進めさせるため、法定の相続分に寄与分や特別受益分を加減した具体的相続分を基準に相続財産を割り当てることになります。遺言書によって相続分の指定がある場合には、遺留分を侵害しない限度で指定された相続分をもとに判断されることになります。

 

 

財産を分ける方法

ここでは、財産を分ける方法について解説します。相続の開始によって共有状態となった全ての相続財産の共有状態を解消し、各相続人が単独所有できるようにするための方法となります。この財産を分ける方法には、次の4つの方法があります。

  • 共有分割
  • 現物分割
  • 換価分割
  • 代償分割

 

共有分割とは?

共有分割とは、特定の相続財産について相続分に応じた共有持分で取得する方法です。たとえば、1つの不動産を複数の相続人で共同で相続した場合、各相続人の相続分に応じてその不動産の持分を取得することになります。そうして取得した共有持分を不動産登記することになります。この方法は共有状態の解消とはいえませんが、現状維持の形で遺産を分割することができ、紛争を避けることができます。また、5年以内の期間を定めて遺言で分割禁止の指定がされた場合、この共有分割をすることになります。ただし、共有分割はただ単に遺産分割を先延ばししているだけだともいえます。そのため、共有分割の使用は最低限にとどめるべきといえるでしょう。

 

 

現物分割とは?

現物分割とは、特定の相続財産について相続人の一人に単独で取得させる方法です。この現物分割は、遺産分割において最も基本的な分割方法で、一般的な遺産分割というとこの方法を指します。たとえば、被相続人が居住していた土地・建物は長男に、賃貸用不動産は次男に、それ以外の財産は配偶者にといった形で配分されるのがこの現物分割の方法です。

 

 

換価分割とは?

換価分割とは、財産を売却するなどして金銭に換えて、その金銭を相続人に分配するという方法です。換価分割であれば金銭に引き直して配分することになるので、相続人間の不公平感を和らげることができます。ただし、その財産売ってしまうので、宝石などの特定の財産を取得したいと思ってもその願いはかないません。この換価分割は、対象財産の価格に相続人間で争いがあったり、金銭価値はあっても相続人は誰も欲しくない場合に行われます。

 

 

代償分割

代償分割とは、特定の財産を特定の相続人が取得する代わりに、他の相続人に対して相続割合に応じた金銭を支払うことに合意する方法です。代償分割であれば換価分割と異なり相続財産を所持したまま、公平な遺産分割を実現することができます。たとえば、次の例を考えてみましょう。

 

  • 相続財産の総額は1億円
  • そのうち8,000万円が居住用の土地・建物
  • 相続人は子A、子Bの2人

 

この場合に代償分割を行うと、その居住用の土地・建物を子Aが相続する代わりに、子1は子2に対して3,000万円を支払う、という合意をすることが考えられます。

 

 

相続分の譲渡・買戻し

相続人は、相続分をまとめて相続人以外の第三者に譲り渡すことができます。この場合、相続分の譲り受け人は相続人として扱われ、遺産分割手続きに参加することができます。ただし、他の相続人が相続分の買戻しを請求することができます。この方法により、相続人の一部が親族以外の者になった場合に、相続人を親族だけで固めるために譲り渡した相続分の評価額を金銭で支払って相続財産の共有状態から解消させることができます。

 

 

遺産分割に必要な手続き

遺産分割をするにあたって、「有効な遺言書がある場合」と「有効な遺言書がない場合」とで、遺産分割の進め方は異なります。また、遺産分割は相続人全員で行う必要がありますが、相続人の範囲が確定しない場合や相続人が遺産分割協議をできない状態にある場合があります。ここでは、遺産分割における様々な事態への対処方法を解説します。

 

 

遺言書がある場合の遺産分割の進め方

遺言書がある場合、遺産分割は基本的に遺言書に書いてある内容を実現してから行うことになります。相続人以外の人に対して特定の財産を譲り渡す旨の遺贈(いぞう)を行う旨の記載が遺言書にあるのであれば、遺贈を実行します。また、相続人に対して、特定の財産を相続させる内容であれば、その内容も実行します。そしてその後に残った財産について、遺産分割協議をすることになります。

 

 

遺言執行者がいる場合の手続きの進め方

遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ・いごんしっこうしゃ)がいる場合、遺産分割は遺言執行者が遺言内容を執行した後で行うことになります。たとえば、相続人以外の第三者への遺贈がある場合や、相続財産に対する債務の請求がある場合には、遺言執行者が第三者への遺贈や債務の支払いを済ませてから遺産分割を行います。相続人に対する特定財産を相続させる遺言がある場合には、その相続人が遺言執行者と話し合い、相続させる遺言を実行するかしないか決めてから遺産分割を行うことになります。遺産分割の内容は、(遺言執行者が行えることは)遺言執行者が実行することになります。

 

 

遺言執行者がいない場合の手続きの進め方

遺言執行者がいない場合、相続人が遺言内容について実行した後で遺産分割を行うことになります。遺言執行者がいない分、相続させる遺言を受けている相続人が遺言執行者と事前に話し合う必要はありません。相続させる遺言を受けている相続人は自身で遺言内容を受け入れるか、遺言に沿わない遺産分割をするか決めることができます。

 

 

遺留分を侵害している場合はどうすればいい?

遺言書のなかには、明らかに遺留分を侵害しているものもあります。遺留分とは、一定の相続人がもっている、遺産の一定割合の承継する権利をいいます。遺留分の侵害が明らかで、遺留分権利者も権利行使を予定している場合、遺贈を受ける者や遺言執行者との関係でどのように対処すべきか問題となります。

 

 

遺言執行者がいる場合

遺言執行者がいる場合であって、かつ遺贈内容が包括遺贈である場合、判例では遺言執行者に対して遺留分減殺請求の意思表示を行います。なお、特定遺贈の場合にも遺言執行者に対して遺留分減殺請求の意思表示をすればいいのか、または受贈者に対して行えばいいのかは判例上明らかになっていません。万全を期すため、双方に意思表示を行う必要があります。また、遺言執行者が遺贈内容を実行した後では、遺言執行者に対して遺留分減殺請求をすることはできません。受贈者のみに請求をすることになります。

 

 

遺言執行者がいない場合

遺言執行者がいない場合には、遺留分減殺請求の相手方は遺贈を受ける受遺者になります。遺贈内容の実行を受ける前から遺留分減殺の意思表示を行い、財産の取戻しや代償請求をすることができるのかどうかについては争いがあります。相続税の納付が遺留分侵害の事実を考慮せず計算し、遺留分減殺請求が確定してから更正処分の手続きをすることから、一度遺贈内容を実行するべきとの考え方もあり得ます。ただし、遺留分減殺請求にかかる受贈者の無資力の危険は遺留分権利者が負担せざるを得ないため、減殺請求及び保全手続きを行い、確実に財産の回復ができる体制を整えるべきでしょう。

 

 

相続人が揃わない場合の遺産分割

遺産分割は相続人の全員で行わなければならず、相続人が1人でも欠ける遺産分割の合意は無効となるのでした。ここでは、相続人が揃わないなかで有効な遺産分割を行うために注意すべきポイントを解説します。

 

相続人が未成年の場合

相続人が未成年の場合、相続人自身が遺産分割協議を行うことは望ましくありません。それは未成年者の法律行為の制限により、遺産分割協議をやり直さなければならなくなるおそれがあるためです。

 

 

未成年の相続人の親が相続人とならない場合

未成年の相続人がいる場合であって、その親が相続人でない場合には、親が未成年の相続人を代理する方法が考えられます。親は未成年の子の親権を有し、未成年の子に代わって未成年の子の財産管理処分をすることができ、かつ親がそのような役割を果たすことが適切だからです。未成年の相続人の親が相続人とならない場合とは、未成年の相続人が亡き片親を代襲相続する場合、両親が婚姻していない場合などがあります。

 

 

未成年の親が相続人となる場合

ところが、往々にして未成年の相続人とその親の両方が相続人となる場合があります。この場合、相続人となった親が未成年の子の代理をすることはできません。親が未成年の子の利益よりも自分の利益を優先してしまう場合があるからです。この場合、相続人となった親は子のために特別代理人を選任する必要があります。特別代理人は家庭裁判所へ申し立てることにより選任することができます。候補として考えられるのは、相続人でない近親者や弁護士などの専門家です。

 

 

相続人が行方不明の場合

相続人が行方不明の場合であっても、行方不明の相続人を抜きにして遺産分割をすることはできません。この場合も遺産分割は無効になってしまいます。しかし、行方不明で手をこまねいていることもできないので、行方不明者がいる場合の対処方法として法律上2つの手段が用意されています。それが、「不在者財産管理人(ふざいしゃざいさんかんりにん)の選任」「失踪宣告(しっそうせんこく)の制度」です。

 

 

不在者財産管理人の選任とは?

不在者財産管理人とは、対象者が音信不通などにより行方不明となっている場合に、その人の財産を代わりに管理する人です。行方不明者がいる場合には、他の相続人が家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申し立てを行い、裁判所に決定してもらいます。なお、この場合には合わせて不在者財産管理人の権限外の行為許可の手続きを行います。不在者財産管理人は、原則として行方不明者の財産管理に終始することが求められ、遺産分割などに参加することは権限外の行為として特別の許可が必要だからです。

 

 

失踪宣告とは?

失踪宣告とは、行不明者が普通に生活をしていて7年以上生死が不明な場合または事故・災害等によって1年以上生死が不明なときに行う手続きです。失踪宣告が出されると、対象者は生死不明になってから7年(事故等であれば1年)の期間が経過したときに死亡したとみなされます。なお、相続人が失踪宣告により死亡したとみなされる場合、失踪宣告を受けた人についての相続が開始されます。

 

 

胎児は相続人になるか?

実は、胎児には相続権があります。すなわち、被相続人に生まれる前の子どもがいる場合には、第2順位の相続人たる両親や祖父母などではなく、おなかの中の胎児が相続人になります。ただし、胎児は生まれてくるまで生きるか死ぬか定かではないため、胎児が生まれてくる前提で遺産分割を進めることはできません。胎児が生まれた後に、その母親または特別代理人が胎児の代理人となって遺産分割協議を行います。

 

 

相続人が認知症の場合の遺産分割

高齢化社会になると相続人も高齢となり、認知症を発症しているケースが少なくありません。認知症やその他精神疾患などにより、著しく判断能力が低下している相続人が遺産分割協議に参加した場合、遺産分割協議の合意をきちんとすることができなかったとして、遺産分割協議が覆ることがあります。このような場合には、相続人のために相続人の親権者は家庭裁判所に成年後見の申し立てを行い、成年後見人を選任してもらいましょう。成年後見人は後見対象となった相続人のために遺産分割協議を行ってくれます。

 

 

相続人が相続分を譲り渡した場合の遺産分割

相続人が相続分を相続人以外の第三者に譲り渡した場合、相続分を譲り受けた者は相続人と同様の権利を有し、遺産分割協議に参加します。相続分の譲受人に土足で家庭の相続事情に立ち入ってほしくないと思っても、相続分譲受人を除外した遺産分割を行うと無効になってしまいます。相続分譲受人を除外しつつ、有効な遺産分割協議を行う方法としては、譲渡した相続分の価額および費用を第三者に支払って、その相続分を取り戻すことができます。

 

 

ここまでのまとめ

  • 遺産分割には様々な方法があり、各ご家庭の事情にあわせて行うようにしましょう
  • 遺産分割が無効にならないよう、ルールにしたがって遺産分割を行う必要があります

 

 

遺産分割の手続き

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ここでは、遺産分割に必要な手続きについて解説していきます。遺産分割を行う方法は、次の3つです。まず、相続人同士で話し合いを行います。これを「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」といいます。

 

そして、遺産分割協議で話がまとまらない場合に行うのが「遺産分割調停(いさんぶんかつちょうてい)」です。この遺産分割調停は、裁判所の調停委員によって妥当な解決案を提示してもらう方法です。

 

最後に、遺産分割調停でも話がまとまらない場合には、「遺産分割審判(いさんぶんかつしんぱん)」を行います。遺産分割審判とは、家庭裁判所の裁判官により強制的に遺産分割内容を決めてもらう方法です。

 

 

遺産分割協議

相続人や相続財産を確定させ、財産目録を作成すると、次は遺産分割協議を行います。これは、相続人間の話し合いです。多くの場合、相続人と近親者たちだけで話し合いをすることになるでしょう。特定の相続人が遺産分割で不利になりそうな場合には、その相続人に弁護士が代理人としてつく場合もあります。

 

 

遺産分割協議の方法

誰がどのような財産をどれくらい相続するかは、上述した相続分や遺産分割の基準を頼りに行うことになります。また、被相続人が生前どのような言動を取っていたか、被相続人と相続人との関係性などを総合的に判断しながら、相続人各人が納得のいく財産の分け方をすることになります。

 

 

遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議によって分割内容が決まったら、遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)を作成します。遺産分割協議書とは、相続財産を相続人の間でどのように分け、誰がどの財産を承継するかを記した文書です。遺産分割協議書は法律上常に作成しなければならない文書ではありませんが、後の紛争回避や相続税納付の際に必要となってくる文章です。そのため、遺産分割がある場合には遺産分割協議書を作成されることを強くお勧めします。

 

 

遺産分割協議書の役割

遺産分割協議書の役割はいくつかあります。代表的な役割としては次のものが挙げられます。

 

  • 相続人間での遺産分割の合意を明確にする
  • 相続トラブルの防止
  • 不動産、預貯金、株式などの財産の名義変更
  • 相続税の申告書への添付

 

 

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書には、法定された書き方などは存在しません。ですが、有効な遺産分割協議書を作成するためには、相続人全員の署名または押印が必要になります。また、登記などの名義変更の場合には、対象の財産を明確にしなければなりませんので、作成の際には対象の財産がわかるように記載する必要があり、注意が必要です。

遺産分割協議書を作成する際に注意すべき主なポイントは次のとおりです。

 

  • 住所、署名は自筆で行う
  • 押印は実印で行う
  • 署名と押印の両方を行う
  • 未成年の相続人または認知症の相続人を代理する場合には相続人の名、代理人の名を明記する
  • 被相続人の名、死亡日、遺産分割協議書の作成日、協議した相続人全員を明記する
  • 相続財産の処分内容を具体的に明記する
  • 不動産については登記簿謄本、自動車は登録証、預金債権は通帳、株式や生命保険金等は証券等に照らして正確に対象財産を記載する
  • 代償分割の場合には代償金額と支払期限、支払い方法を明記する

 

こうしたポイントを意識しながら遺産分割協議書を作成するようにしましょう。

 

 

公正証書で遺産分割協議書を作るのがオススメ!

遺産分割協議書を作成する場合には、公正証書を作成することもおすすめです。公正証書とは公証役場にいる公証人によって作成される法律文書です。公証人に遺産分割協議内容を伝え、その公証人に内容通りの協議書を作ってもらうことになります。

 

 

遺産分割協議書を公正証書にするメリット

公正証書で遺産分割協議書を作成する際のメリットは、次のとおりです。

  • 有効な遺産分割協議書となることを担保してくれる
  • 相続人が遺産分割内容を履行しない場合に、強制的にその内容を実現できる
  • 紛争になった場合に、普通の遺産分割協議書よりも有力な証拠となる

なお、公正証書を作成してもらう場合には事前の予約をし、かつ手数料が必要になります。

 

 

遺産分割協議の限界

遺産分割協議はあくまで相続人間の自発的な話し合いが必要になります。相続人の一部が話し合いに応じない場合や遺産分割内容に合意しない場合には有効な遺産分割協議はできません。このように全員で納得のできる遺産分割ができない場合を想定して、遺産分割調停、遺産分割審判の制度が用意されています。

 

 

遺産分割調停

遺産分割調停とは家庭裁判所にて、民間人から選任された家事調停委員と家事審判官(裁判官)で構成される調停委員会が各相続人の意見を聞きながら妥当な遺産分割案を作成する手続きです。相続人の間で遺産分割の協議がまとまらない場合や、協議に応じない相続人がいる場合にこの手続きを利用して遺産分割トラブルの解決を図ることになります。

 

 

遺産分割調停に必要な手続き

ここでは、遺産分割調停のはじめ方について解説します。

 

 

遺産分割調停の申し立て

遺産分割調停は、相続人のうちの一人または数人で家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てをすることによってはじめることができます。遺言によって包括的な贈与を受けた包括受遺者をはじめ、相続分の譲受人、遺言執行者なども遺産分割調停の申し立てをすることができます。

 

 

調停の申し立て先(管轄)

遺産分割調停の申し立て先の裁判所は、申立人を除く相続人、包括受遺者、相続分の譲受人、遺言執行者等のうちの誰かの住所地を管轄する家庭裁判所です。また、遺産分割協議をする者全員で合意した場所の家庭裁判所にすることもできます。

 

 

調停調書の作成

遺産分割調停によって相続人全員が納得する合意内容が示された場合、調停調書を作成します。調停調書の作成によって、遺産分割は終了します。調停内容に従わない相続人がいれば、調停調書を根拠に強制的に調停内容の実現をすることができます。

 

 

遺産分割調停の限界

遺産分割調停は相続人全員が合意してその旨の調書を作成することで、はじめて効力が生じます。遺産分割調停調書を作ってしまうと、その内容に沿って遺産分割が行われます。調停内容は相続人間で納得のいくものにするよう心掛けます。しかし、調停もあくまで話し合い・協議の延長線にあります。それゆえ、調停の場でも臍を曲げてしまった相続人がいる場合には調書を作ることができず、調停も不調に終わってしまいます。このような場合には、遺産分割審判手続きに移行します。

 

 

遺産分割審判

遺産分割調停では相続人全員の納得が得られなかった場合に、遺産分割を行うための最期の手続きとしての遺産分割審判を行います。遺産分割審判は家庭裁判所裁判官が遺産分割で争っている相続人の言い分を聞き、適切妥当な分割案を提示します。相続人はその分割案に拘束され、強制的に遺産分割がなされることになります。

 

 

遺産分割審判に必要な手続き

遺産分割審判は遺産分割調停が不調に終わった時、すなわち全員の納得が得られなかったときや、相続人の一部が不参加を決め込んでしまった場合などに行われます。調停が上手くいかなかった場合、審判でしか遺産分割の問題を解決することはできませんので、自動的に遺産分割審判手続きに移行します。それゆえ、相続人らが特別に申立てなどをする必要はありません。

 

 

審判の確定

相続人確認の言い分を聞いて裁判官が遺産分割審判案を提示します。審判の告知がされてから2週間の経過によりその内容が確定します。内容に不服がある場合には、遺産分割審判をした家庭裁判所を管轄する高等裁判所がもう一度審判を行います。そのためには、不服のある相続人は審判の告知を受けてから2週間以内に、審判をした家庭裁判所に対して即時抗告をする方法により行います。

 

 

審判内容の実現

審判の告知から2週間が経過し審判内容が確定すると、相続人は審判内容に応じた遺産分割を行い、自身が相続する財産を取得することができます。この請求は財産を管理している他の相続人または遺言執行者に対して行います。代償分割をする旨の審判内容であれば、価額を支払う相続人に対して支払いの強制執行をすることもできます。

 

 

ここまでのまとめ

  • 遺産分割の手続きは、遺産分割協議・遺産分割調停・遺産分割審判の3種類があります。
  • 遺産分割協議で話し合いがまとまらない場合、遺産分割調停に移行します
  • 遺産分割調停で話し合いがまとまらない場合、遺産分割協議に移行します

 

 

遺産分割のやり直し

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遺産分割が終了したとしても、何かしらの問題が再燃することがあります。ここでは遺産分割の問題が再燃し、遺産分割をやり直さざるを得ない場合と、そうした場合における対処方法について解説していきます。

 

 

遺産分割をやり直すべき場合とは?

遺産分割をやり直すべき場合にはいくつもの場合があります。

相続人全員が一度は遺産分割内容に納得したものの再び協議をして遺産分割をやり直す場合、相続人の全員が参加していない遺産分割協議を行った場合など遺産分割が無効の場合、遺産分割協議を行ったけれど協議内容に沿った行動を相続人がとらないことにより遺産分割の合意を解除する場合などが考えられます。

 

 

協議による遺産分割のやり直し

遺産分割を行った後、相続人の合意により再び遺産分割を行うことは可能です。当初の遺産分割について、後述するような詐欺・強迫に至らずとも、納得できない遺産分割をさせられた場合であって他の相続人からも再度の遺産分割をすることの合意を得られた場合には遺産分割のやり直しができます。また、よくあるケースとしては、想定していたよりも不動産などの価格が大幅に上昇または下落し、相続財産の分割がアンバランスになってしまった場合などにも、相続人全員の合意によるやり直しをすることが考えられます。

 

 

ここでご注意いただきたいのは、すでに終わった遺産分割のやり直しによる財産の移転は税務上、遺産分割後の贈与と認定される可能性があるということです。贈与にあたれば贈与税が課される恐れもあるので、遺産分割のやり直しをする場合には税理士の判断を仰ぐのが賢明でしょう。

 

 

遺産分割の取り消し

遺産分割協議において、他の相続人から遺産の存否や額、相続人としての取り分について騙されたり、不利な内容の分割案を強く迫られた場合には詐欺または強迫を理由として遺産分割の取り消しを請求することができます。

 

 

遺産分割の無効

遺産分割を行ったとしても、その遺産分割が効力を生じず、再度やり直しをしなければらならない場合があります。そうした遺産分割の無効事由にはいくつかのパターンがあります。

 

 

戸籍上の相続人、包括受遺者、相続分譲受人を除外した遺産分割

遺産分割は相続人全員が参加しなければ原則として効力を生じません。戸籍上判明している相続人について遺産分割協議から除外してしまうと遺産分割協議は無効になります。また、包括受遺者は遺言によって相続人と同じ地位に立つので包括受遺者を除外した場合も無効となります。相続分について相続人から譲り受けた者も相続人と同じ扱いになるので、除外すると無効になります。そのため、はじめから相続人の一部を除外して遺産分割を進めようとしている場合には後々問題になることを想定して、きちんとすべての相続人を協議に参加させるようにしましょう。相続分譲受人についてはどうしても遺産分割から除外したければ相続分の買い取りを請求しましょう。

 

 

失踪宣告者、死後被認知者を除外した遺産分割

行方不明、生死不明により失踪宣告が出され、死亡したとみなされた者を除外して遺産分割を行い、後にその者の生存が確認されて失踪宣告が取り消された場合、遺産分割協議自体は有効です。ただし、失踪宣告の取り消しを受けた者は他の相続人に対して、相続分に応じて現に利益を受けている限度において財産または代価の返還を請求できます。死後認知を受けた者がいる場合、認知の事実を知らずに他の相続人だけで遺産分割をしてしまったとしても、遺産分割協議自体は有効です。被認知者は、遺産分割をした相続人に対して事故の相続分にかかる価額の支払い請求をすることができますが、遺産分割のやり直しを求めることはできません。

 

 

胎児を除外した遺産分割

胎児も相続人となります。被相続人が亡くなった時に、胎児が母体内にいる場合、胎児の出生を待ってから遺産分割をすることになります。胎児の出生を待たずに胎児を除いて遺産分割をしてしまった場合、遺産分割は無効になります。これは遺産分割時、胎児がいることを知っていたか否かは問いません。被相続人に妻がいる場合、おなかの中に子どもがいるかどうかを確認することが大切です。

 

 

遺産の一部を遺産分割協議から除外していた場合

遺産の一部を「これは遺産ではない」と誤信して、遺産分割協議の対象から除外して遺産分割協議を終了してしまった場合、相続人全員で「そのような財産を除いた遺産分割である」との合意がなされていない限り、遺産分割は無効となってしまいます。ただし、遺産分割を一からやり直すほどのものでもない、極わずかな財産の脱漏であれば無効とはなりません。無効となるかどうかの基準は相続財産全体の中に占める脱漏財産の価額や財産の性質などから判断されることになります。

 

 

遺産分割後遺言が発見された場合、遺産分割はどうなる?

遺産分割後に遺言が発見された場合、相続人全員での合意のない限り遺産分割は無効となります。なお、相続人が合意できるのは相続人に対する遺言部分だけですので、他人への遺贈等がある場合には、その遺贈を実行するため遺言は無効となります。また、遺言によって包括遺贈がなされた場合など相続人として扱うべき人が増えた場合には、その人が相続人として扱われていないので無効になります。

 

 

遺産分割の解除

遺産分割協議の内容そのものに文句はないけれど、遺産分割協議案に沿った遺産分割を他の相続人がしてくれない場合には、遺産分割の解除を主張することも考えられます。ただし、判例上は遺産分割協議の終了によって各相続人間に債権債務関係が生じるだけとなり、遺産分割合意をはじめからやり直しにすることはできないとの判断をしました。ですので、相続人の一部が遺産分割での合意内容を履行しないからといって遺産分割のやり直しを請求することはできません。注意しましょう。

 

 

審判後の遺産分割のやり直し方法

遺産分割審判は相続人間で遺産分割に合意できない場合の最後の手段でした。ただし、相続人にとって必ずしも審判内容が納得のいくものでもないのが実情です。遺産分割審判により確定した遺産分割であっても相続人全員の合意があれば、上記≪8.2. 協議による遺産分割のやり直し≫のように遺産分割をやり直すことができます。なお、相続人のうち1人でもやり直しを望まなかったり、やり直しの合意が確定する前に反故にする場合には、当初の審判内容に拘束されることになります。

 

 

ここまでのまとめ

  • 遺産分割は何度でもやり直すことができます
  • 遺産分割にはやり直しが必要な場合があります
  • 相続人や相続財産の一部を除外した遺産分割は、やり直しの対象となります

 

 

この記事のまとめ

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いかがでしたか?

これまで遺産分割に関する様々な問題に対して、様々な角度から解説してきました。

遺産分割はどのような場合に行われるのか、遺産分割対象となる財産はどの範囲なのか、遺言や相続人不明等の事情がある場合に遺産分割をどのように行うのか、遺産分割協議で解決しない場合にはどのように対処するのか、遺産分割をやり直す場合はどのような場合なのか、さまざまなケースがあり、遺産分割の問題は各ご家庭ごとに異なります。こうした問題に柔軟に対応するためにも、そして相続トラブルを起こさないためにも、遺産分割で悩まれた際には迷わず弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

執筆者: やさしい相続編集部