相続は「争族」とも呼ばれるように、相続には親族同士の争い・トラブルがつきものです。そして、そんな相続の中でも「誰がどれだけの遺産をどのように引き継ぐか」について決定する遺産分割は、もっとも相続トラブルが生じやすい相続手続きだといわれています。では、このトラブルはどのようにして解決すればよいのでしょうか?ここではその解決策の1つ、遺産分割調停・審判についてくわしく解説していきます。

遺産分割は相続のヤマ!

遺産分割トラブル

相続トラブルを生みやすい「遺産分割」とは?

人が亡くなると、その人の財産の相続がはじまります。相続人(遺産を引き継ぐ人)が1人だけということは珍しく、通常は複数いますから、相続人の間で相続財産を分ける必要があります。この相続財産を分ける手続きを遺産分割といいます。故人が生前にきちんと遺言書を作成しており、相続人の間でその遺言書の内容に異論がない場合には、その内容に沿って遺産は分割されます。しかし、遺言書がない場合や遺言書が無効な場合には、相続人全員で話し合って遺産を分割する必要があります。

 

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遺産分割が相続のヤマだと言われる理由

なぜ遺産分割で相続トラブルが生じやすいのでしょうか?

これにはさまざまな理由が考えられますが、主な理由としては次の2つが挙げられます。

  1. 法的判断の難しさ
  2. 相続人の感情のもつれ

 

 

〈遺産分割でトラブルが生じる理由その1〉法的判断の難しさ

相続財産の金額は、相続人が同じ序列(たとえば、亡き父親の遺産を相続する三兄弟など)であっても法律上は同じ金額にならないことがあります。たとえば、長男が父の看病を長年していて自分の時間と家計を犠牲にしてきたという事情がある場合、残りの兄弟よりも相続財産を多く相続する資格が得られることがあります(これを寄与分といいます)。

 

また、次男がマイホームを買うのに際して、父から多額の資金援助をしてもらった場合、残りの兄弟より相続財産として相続する財産が減ることがあります(これを特別受益といいます)。

 

寄与分・特別受益については、「いつ、誰がどれだけもらったか」がはっきりしない場合があります。また、そもそも寄与分・特別受益にあたるという認定がなされるかどうかも問題になりやすく、どちらも専門家による法的判断が必要になることが多いのが実情です。そのため、遺言書がない場合はもとより、遺言書がある場合であっても適切な相続財産の分割をしてほしいとの理由から話し合いが紛糾することがあります。

 

 

〈遺産分割でトラブルが生じる理由その2〉相続人間の感情のもつれ

上で述べたような事情はなく、亡くなった父親がお気に入りの三男をひいきした内容の遺言書を書いた場合はどうでしょうか?当然、兄弟間で熾烈な舌戦が繰り広げられることでしょう。このように、相続人全員に不公平感を抱かせないように、きちんと相続人全員が納得する形で遺産をわけるというのは、実はとても難しいのです。

 

 

話し合いで解決しない遺産分割トラブル

上でみたとおり、相続人間の話し合いだけで遺産分割を解決することは、なかなか困難です。中には、話し合いにすら応じようとしない相続人もいるほどです。そこで、こじれてしまった遺産分割トラブルを解決する制度が法律上用意されています。その制度が「遺産分割調停(いさんぶんかつちょうてい)」「遺産分割審判(いさんぶんかつしんぱん)」です。

 

 

遺産分割トラブルを解決する「遺産分割調停」とは?

相続トラブルを解決する遺産分割調停とは

 

遺産分割調停とは、家庭裁判所にて、民間人から選任された家事調停委員と家事審判官(裁判官)で構成される調停委員会が、各相続人の意見を聞きながら妥当な遺産分割案を作成する手続きをいいます。つまり、遺産分割でもめている相続人の間に裁判所が入って、互いに納得いくような遺産分割プランを提示してくれる手続きです。

 

相続人の間で遺産分割の協議がまとまらない場合や遺産分割の話し合いに応じない相続人がいる場合に、この手続きを利用して遺産分割トラブルの解決を図ることになります。

 

 

遺産分割調停は相続税対策にも効果的

小規模宅地等の特例(注1)の利用などのような相続税を低く抑える対策をするためには、相続税の申告期限(相続の開始から10か月以内)までに遺産分割を済ませておく必要があります。そのため、相続人同士で揉めていてなかなか遺産分割が終わらない場合には、小規模宅地等の特例のようなお得な税額軽減制度を利用できなくなるおそれがあります。

 

遺産分割調停を利用して遺産分割を迅速に成立させることは、相続人間のトラブルを早期に解決するだけでなく、相続税の負担軽減にもつながるのです。

 

(注1)小規模宅地等の特例とは、事業用敷地や居住用敷地を相続する場合において、相続人が事業の基盤や生活の基盤を失うことがないよう、一定の要件を具備することによりそれらの敷地の評価額を最大で80%下げ、節税を図る制度です。

 

 

遺産分割調停の申立ての方法

遺産分割の話し合いがまとまらない場合に、相続人・包括受遺者・相続分譲受人・遺言執行者のうちいずれかが、管轄の家庭裁判所に申し立てをすることによって、遺産分割調停の手続きは開始されます。また、相続人が合意した場所の家庭裁判所にも申し立てることができます。

 

 

遺産分割調停の申立てに必要な書類

遺産分割調停の申立てに必要な書類は次のとおりです。

 

  • 遺産分割調停の申立書
  • 被相続人の戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
  • 相続人全員の戸籍謄本、住民票または戸籍附表
  • 遺産目録と当事者目録
  • 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書、預金残高証明書など)

 

 

遺産分割調停の申立てに必要な費用

遺産分割調停の申立てに必要な費用は次のとおりです。

 

  • 収入印紙 1,200円分
  • 連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。)

 

 

遺産分割調停でも解決できないことがある

遺産分割調停は、相続人全員が調停案に合意し、その旨の調書を作成することではじめて効力が生じます。そのため、相続人のいずれか1人でも合意しない場合には、遺産分割調停によっても遺産分割トラブルを解決することができません。このような場合には、後述する遺産分割審判手続きに移行します。

 

 

最後の砦「遺産分割審判」とは?

最後の砦の遺産分割審判

遺産分割「審判」とは、遺産分割調停が不調に終わってしまった場合に始まる手続きです。この遺産分割審判では、裁判のようにお互いに主張・立証を尽くし、家庭裁判所の裁判官が主張や立証内容にもとづいて判断を下します。

 

 

遺産分割審判の申立て方法

遺産分割審判は遺産分割調停が不調に終わった時に、自動的に始まります。そのため、遺産分割審判の申し立てを別途する必要はありません。なお、遺産分割調停を経ることなく遺産分割審判を申し立てることもできますが、その大半は遺産分割調停にまわされてしまいますので、素直に調停から申し立てましょう。

 

 

審判の結果には従わなければならない!

遺産分割審判では、どんなに自分の主張が認められなくても審判の結果には従わなければなりません。いつまでも駄々をこねる相続人に対処するには適切ですが、自分も主張立証活動を怠ると不利な判断をされてしまいますのでご注意ください。

 

 

他人事ではない!遺産分割調停・遺産分割審判の件数

我が国では年間100万人以上の方が亡くなっていますから、これと同じ数だけの相続があるといえます。そして、遺産分割調停は年間10,000件程度、遺産分割審判は年間2,000件程度ですから、すべての相続のうち1%程度は裁判所の力を借りて相続トラブルを解決しており、実際にはもっと多くの相続トラブルが起きていることが推測されます。そのため、相続トラブルは決して他人事ではないことを念頭に置き、相続に臨むべきだといえます。

 

 

この記事のまとめ

専門家の見解家庭の数だけ事情はあります。遺産分割にかかる事情も人それぞれです。近しい人ほどトラブルになった場合には厄介で解決が困難ですので、問題が大きくならないうちに専門家に相談されることをお勧めします。

執筆者: やさしい相続編集部