相続放棄の無料相談窓口、弁護士が対応、2往復無料

遺言書による指定がない限り、相続財産の配分方法は相続人全員の話し合いで決めることになります(協議分割)。この遺産分割協議は参加者それぞれの思惑や利害が絡むため、全員が納得するような形で平和裏に終えるのがとても難しいプロセスです。

 

相続人全員が納得する遺産分割を実現するためには、いくつかの分割方法を組み合わせて柔軟に対処することが不可欠です。そこで、この記事では遺産分割の方法の1つ、「換価分割」についてくわしく説明します。

 

財産を分割する方法、換価分割とは?

換価分割のための土地の売却

換価分割とは、相続財産の一部または全部を売却するなどの手段で現金に換え、その現金を相続人で分け合う遺産分割の方法をいいます。換価分割を利用することにより、そのままだと物理的に分割しにくい不動産のような相続財産を柔軟に配分することができます。

 

換価分割では、一般的に相続人全員の名義で相続財産の共有の登記を行い、売却したあとで、その持分割合に応じて売却代金を分配します。

 

換価分割にメリットがあるケース

換価分割が利用される典型的な例を見てみましょう。

【換価分割が利用されるケース】

  1. 代償分割の代償金の支払いに問題があるケース
  2. 相続不動産の中に、相続人の誰も利用しない不動産があるケース

 

1.代償分割での代償金の支払いに問題があるケース

代償分割する資金が足りない

遺産分割の方法には、換価分割の他に「代償分割」という方法があります。代償分割とは、一部の相続人が相続財産を現物で取得し、その相続人が他の相続人に代償金を支払う方法です。この代償分割を選択するためには、現物を取得した相続人が代償金を支払えるだけの現金資産がなければなりません。

 

そのため、例えば同居していた親名義の家に住み続けたいと考えていた場合でも、代償分割を選択するための代償金が捻出できなければ、家を売却して現金で換価分割をすることになります。

 

代償分割のくわしい解説は「【代償分割編】失敗しない遺産分割協議書の書き方」をご参照ください。

 

2.相続不動産の中に、相続人の誰も利用しない不動産があるケース

誰も相続したくない田舎の家

現金・預貯金や有価証券など、相続財産はいろいろな形で遺されます。国税庁の発表によれば(※注1)、相続財産の中で最も多くの割合を占めるのは、田畑や土地・家屋といった不動産です(全体の38.0%)。

 

しかし、相続人となる子どもたちが進学や就職によって地方から都市へと人口が移動してきた日本では、相続人の全員が不便な地方の不動産を相続したくない、あるいは相続しても有効に利用できない場合が少なくありません。そこで、換価分割が選択されます。

 

換価分割を利用すれば、誰も利用しない不動産を相続しないで済みますし、その売却で得た現金を1円単位で柔軟に分割することができます。

※注1: 国税庁「平成27年度の相続税の申告状況について

 

換価分割のデメリット、所得税に注意

換価分割は便利な方法ですが、その利用にあたってはいくつかの注意点があります。

  1. 相続財産を手放さなければならない
  2. 所得税が発生する

 

1.大切な相続財産を手放さなければならない

歴史や思い出のある相続財産

換価分割は相続財産を現金等に換価する方法ですから、当然、その相続財産の現物を手放さなければなりません。このことで時に難しい選択に迫られることがあります。歴史や思い出などの金銭には代えられない価値をもつ財産の売却や、亡くなった方の名義の持ち家に住み続けられなくなる事態など、様々なケースが想定されます。そのため、本当に換価分割が必要なのか、よく検討することが必要でしょう。もしかすると、工夫次第では代償分割で足りるかもしれません。

 

代償分割のくわしい解説は「【代償分割編】失敗しない遺産分割協議書の書き方」をご参照ください。

 

 

2.換価分割による財産の売却で所得税が発生する

国税庁に余計な所得税をとられる

相続財産の売却で損益が生じると、その損益に対して所得税が課税されます。換価分割を選択してしまったせいで、そのまま現物を相続すれば納付せずに済んだ余計な所得税が、発生してしまう場合もあるのです。

 

例えば、相続財産の中に昔1,000万円で取得した不動産が含まれていて、これを換価分割のために1,500万円で売却できたとすると、売却価格と取得原価の差額500万円の不動産譲渡益が発生し、この譲渡益に所得税が課税されます(理解のため単純化した計算になっています。)。

 

このように、換価分割を選択すると所得税が発生することもありますから、相続財産の時価等をよく調べてから換価分割を選択するようにしましょう。

 

相続財産が居住用財産に該当すれば特別控除が使える

相続には最高で3,000万円の特別控除枠

換価分割の対象となる相続財産が居住用財産に該当する場合、最高で3,000万円の特別控除枠を利用できます。つまり、この場合、不動産譲渡益が最高3,000万円を超えない限り所得税が発生することはありません。

相続放棄の無料相談窓口、弁護士が対応、2往復無料

 

特例を受けるための要件

この居住用財産の特例を受けるためには、次の要件を満たさなければなりません。

(1) 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
(注) 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の2つの要件全てに当てはまることが必要です。
イ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
ロ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
(2) 売った年の前年及び前々年にこの特例の適用を受けていないこと(「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除きます。)。
(3) マイホームの買換えやマイホームの交換の特例若しくは、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
(4) 売った家屋や敷地について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
(5) 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年目の年の12月31日まで(注)に売ること。
(注) 東日本大震災により滅失した家屋の場合は、災害があった日から7年を経過する日の属する年の12月31日までとなります(「東日本大震災により被害を受けた場合等の税金の取扱いについて(個人の方を対象とした取扱い)【東日本大震災に関する税制上の追加措置について(所得税関係)】」をご覧ください。)。
(6) 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。特別な関係には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

引用元:国税庁ウェブサイト「マイホームを売ったときの特例」

 

 

特別控除枠の適用が除外されるケースに注意!

相続時の特別控除枠が受けられない条件とは

次の場合には、この特例の適用を受けることができません。

(1) この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
(2) 居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋
(3) 別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋

引用元:国税庁ウェブサイト「マイホームを売ったときの特例」

 

換価分割がある場合の遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書(換価分割)の注意点

換価分割がある場合でも、通常の遺産分割協議書の書き方と基本的に変わりません。

ただし、相続人全員を代表して相続人の1人が登記の名義人となる場合には、注意が必要です。この場合、換価分割の対象にした相続財産の売却収入は、登記の名義人の懐に一旦は入るものの、その後に他の相続人に売却収入を分配する場合、贈与税が課税される余地が残されてしまいます。

 

国税庁によれば、このような場合には下記のように「贈与税は課税されない」との見解が示されていますが、念のため遺産分割協議書に換価分割を行った旨を記載しておくのがよいでしょう。

共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません。

参考:国税庁ウェブサイト「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」

 

 

換価分割と遺産分割協議のまとめ

遺産分割協議と換価分割のまとめ

いかがでしたか?相続人の誰もが納得できるように遺産分割を行う事は難しいことですが、複数の遺産分割の方法を組み合わせることで、平和な遺産分割を実現することができます。ただし、これらの方法の適切な組み合わせには専門的な知識が必要となることも多いですから、各ご家庭の事情に即した最善の方法を見つけるためにも、弁護士や税理士などの専門家の利用をご検討されてみてはいかがでしょうか。

 

【関連記事】

相続財産のすべて~やさしい相続マニュアル~

【代償分割編】失敗しない遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書に添付すべき印鑑証明書の有効期限とその入手方法

遺産分割・遺産分割協議のすべて~やさしい相続マニュアル~

不動産を相続したら必要な相続登記とは?~やさしい相続マニュアル~

相続放棄の無料相談窓口、弁護士が対応、2往復無料
執筆者: やさしい相続編集部