成年後見とは?

成年後見制度

「病院で診療代金を払い忘れてきちゃった」、「しつこい訪問販売が断れなくなってきちゃった」、なんてことはありませんか。昔は何ということもなかったことができなくなる。老衰とは、だれしも抗えなくやってくるものです。

 

成年後見とは、そんなあなたの日々の心配を少しでも軽減してくれる制度です。あなたの身上の管理整理をしてくれたり、財産を適切に管理してくれます。

 

 

成年後見の制度

では、具体的に成年後見とはどのような制度なのか?ここからみていきましょう!

成年後見制度は、家庭裁判所が「あなたの物事をよく把握する力・理解する力」が衰えてきていると判断すると開始されます(家庭裁判所による審判)。成年後見が開始されると、あなたはご自身一人で土地や建物の売買といった大きな財産処分ができなくなります。(普段の買い物や、趣味娯楽への出費はできます!ですので、日常生活には何の変化もありません。)

 

 

また、成年後見の開始により、あなたの身や財産を守ってくれる「成年後見人」が付きます。成年後見人は、あなたの身の回りのお世話(主に契約関係)をしてくれます。また、あなたの財産がどんどん減っていくのを防止し、財産が減少していく原因を突き止め、失った財産の一部を回復してくれます。これらのお世話は大きく分けると、身の回りのお世話である「身上管理」と「財産管理」に分けることができます。

 

 

身上管理

身上管理とは、身の回りの生活のお世話のことです。ですが、一般的に「お世話」と呼ばれるような日々の食事や入浴、排泄などのお世話のことではありません。

 

 

たとえば、長期入院や大事な手術が必要になった時に、連絡がつかなかったり忙しい親族の代わりに入院や手術の説明を聞き、入院や手術に関する契約を結ぶなどの行為です。ご高齢になられると、病院から渡される長くて字の細かい文書を読むのは大変ではないでしょうか。ましてや、きちんと理解し、自分にとって必要な入院や手術なのか判断することは困難でしょう。そのほか、老人施設への入居にかかる契約や、要介護認定の申請、介護のプランニングなどにも携わります。

 

 

財産管理

財産管理とは、あなたの資産の適切な管理をすることです。ここでいう「財産管理」とは、あなたが普段使用していない、大きな財産についての管理です。例えば、土地建物といった不動産や、普段は預金の出し入れをしない定期預金などが対象です。これらの財産につき、あなたの資産がより安全な状態になるように整理し、過去に被った損害の回復を回復してくれる場合もあります。誤解をしないでいただきたいのは、この財産管理はあなたの普段の出費に関わるものではありませんし、年金を管理してやろう、などというものでもありません。

 

 

どうすれば後見が始まるの?

後見人がつく状況というのは、あなたの判断能力が随分と衰え、難しい契約などについて理解できなくなっている段階です。そして、あなたがその状況にあることを家庭裁判所に申し出ることで開始されます。

 

 

だれが、いつ、家庭裁判所に申し出るかによって、後見制度は二種類に分かれます。簡単に言うと事前の準備なく始まる法定後見制度と、しっかりと準備ができる任意後見制度です。ただし、後見が実際に開始されるのはあなたの判断能力が衰えた時ということに変わりはありません。どういうことか具体的に見ていきましょう!

 

 

法定後見制度

法定後見制度は、ご本人・配偶者・4親等内の親族(あなたから見て従兄妹までにあたる親族)、市町村長が主として申し立てをすることができます。あなたの友人や日頃お世話になっているお医者さん、弁護士、司法書士などは申し立てをすることはできません。

 

 

後見人につく人は家庭裁判所がご本人や親族等の意見を聞いて適切な人を選任します。多くは親族の中から選ばれます。ご本人の希望に必ずしも沿うとは限らないことに注意が必要です。また、申し立てをするタイミングは「必要に応じて」です。多くは、身寄りがいないけど老人施設や病院の長期入院が必要になった場合、詐欺的な商法に騙されてその後の対応をする場合などに利用されます。

 

 

任意後見制度

任意後見制度は、もう少し複雑です。まず、あなたが判断能力が衰えてきたかなと感じる段階で、将来もっと衰えることを見越して信頼できる人に後見人になってもらうよう頼んでおきます。この相手方を「任意後見受託人(にんいこうけんじゅたくにん)」といいます。そして、この依頼は公正証書でする必要があります。あなたの判断能力が実際に衰えてきたころ、先ほどの任意後見受託人が家庭裁判所に申し出をします。この段階であなたの後見が開始され、任意後見受託人は正式な後見人になります。

 

 

2つの制度の違いは何?

2つの制度の違いは、①あなたの判断能力が衰えてから後見人が付くまでの間に空白期間があるかないか、また、②誰が後見人になるか確実に自分で決められるかどうか、さらに③後見人に取消権があるかないかです。

 

 

あなたの判断能力が衰えてから後見人が付くまでの間に空白期間があるかないか

法定後見制度では、次の3段階のプロセスがあります。

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ですが、「判断能力が衰えた段階」から「後見制度が開始された段階」までには、大抵何年もの期間の空きがあります。この期間にあなたが騙され、財産を奪われたり不利益を被るおそれがあるのです。

 

 

任意後見制度では、次のようなプロセスを経ることになります。

  1. 判断能力が十分ある段階・・・任意後見契約の締結
  2. 判断能力が衰えた段階=後見制度が開始された段階(任意後見受託人が後見人へ)

 

この場合、判断能力があるうちに後見人を任せる人を決めておいて、判断能力がなくなったらすぐに後見を開始してもらえるので、法定後見制度を利用する場合と比べて判断能力が衰えてから誰かに騙されたりするリスクが少ないです。

 

 

②誰が後見人になるか確実に自分で決められるかどうか

任意後見であれば自分が真に信頼している人に後見人を頼むことができます。後見人は後見監督人により監視され信頼が確保されます。法定後見であればご本人の意見が効かないこともありえます。

 

 

③後見人に取消権があるかないか

法定後見人には後見期間中、あなたが間違って締結してしまった契約の取り消しをしてあなたの財産を守ってくれます。一方、任意後見人にはこの取消権はありません。

 

 

 

誰に成年後見を頼むべき?

 

後見制度で悩みを抱える

では、誰に成年後見を頼めばよいでしょうか?

一つの案として考えられるのは、身近なお世話(身上管理)とお金のお世話(財産管理)を別々の後見人に頼むというものです。(ちなみに後見人は複数人選任して、役割分担をさせることが可能です。さらに、法人を選任することもできます。法人は財産の使い込みのリスクが少ないため近年よく使われるようになってきています。)

 

 

どの老人ホームに入ろうかしら…(身上管理)

身近なお世話については、あなたの近くで普段のお世話をされている親族の方が勝手を知っているためよいのではないでしょうか。この点、今までだってずっとお世話をしてきたのだから、これからも後見人なんかにならなくてもいいとのご意見もあります。各家庭ごとに事情は異なりますので、殊更に後見制度の利用を勧めるわけではありません。ただ、お近くに近親者が複数人おられる場合にその方たちの中で責任の所在を明確にしたり、医療機関や介護機関との連絡の円滑化といったメリットがあります。

 

 

いつの間にか証券会社で高額取引契約を?!(財産管理)

 

あなたの身分に不相応なハイリスクな金融商品を勧められていたり、騙されて土地建物の登記を他人に移転されていたり…。こんな事情に対して身近な近親者ではどうにもなりません。また、多額の預金は近親者でも目がくらんで使い込むおそれがあります。こうした財産管理を任せるのは、弁護士や司法書士といったプロが適任です。プロといっても財産の使い込みのリスクがないとは言いませんが、近親者よりは圧倒的にそのようなリスクは低いといえるでしょう。注意すべきは、こうしたプロの後見は費用がかかることです。相談される弁護士や司法書士事務所のホームページ等で費用をご確認ください。

 

 

親族が後見人になれない場合とは?

成年後見制度において親族が後見人になるケースはよく見られます。身近な人だからこそのメリットも大いにありますが、同時にデメリットもあります。それが財産の使い込みです。

 

 

最高裁判所の調べによると、平成23年から平成24年の2年間で900件以上の被害届が寄せられ、その被害総額は80億円に達するとのことです。そこで、安易に近親者の後見人が被後見人の財産を使い込まないよう、各地の裁判所では本人におよそ1,200万円以上の預貯金、有価証券等があれば、近親者ではなく弁護士や司法書士といったプロに後見人を任せるようになっています。(各地の裁判所で運用は異なります。)

 

 

被後見人の財産が1,200万円未満であって、近親者が後見人に選任された場合であっても、弁護士や司法書士などが後見監督人につき、後見人をしっかりチェックする運用がとられるようになってきています。

 

 

任意後見制度はどう使う?

相続の心配

任意後見制度は将来の自分の判断能力の低下に対して、事前に信頼できる相手に後見を依頼しておき、判断能力が低下したら後見を始めてもらう制度です。任意後見人があなたの財産を勝手に費消してしまわないように、後見が開始されると家庭裁判所が選任する任意後見監督人が任意後見人の仕事をチェックします。

 

 

成年後見人の候補を決めよう!

任意後見制度の利用にはまず、将来自分の成年後見人になってくれる人を探しましょう。近親者が多いと思いますが、本当に信頼できる友人や、法人、さらには弁護士や司法書士に依頼することもできます。任意後見受託人になってくれる人が見つかったら、任意後見契約を「公正証書」で作成します。また、その旨を東京法務局に登記します。あなたの判断能力が低下してきたら、任意後見受託人が後見開始の申し立てをして後見を始めてくれます。

 

 

任意後見人のデメリットに注意!

 

最後に、任意後見人の制度における注意点を。

まず、後見制度は生前のあなたが安心して暮らせるための制度ですので、死後の処理を委任することはできません。

 

また、法定後見制度ではあなたが後見中に締結した契約の取り消しをしてあなたの財産を回復する取消権がありますが、任意後見制度にはこの取消権はありません。あくまで、能動的に身上管理・財産管理ができるようになる制度です。(ただし、継続的な出費に関する契約の解除などを行うことはできます。)

 

 

 

この記事のまとめ

 

専門家の見解をくわしく述べます。

「私もそろそろ年かな……」そのように感じ、考えてしまうことは決して悪いことではないのです。そうした現実を受け入れ、残りの人生を安心して豊かなものにするために成年後見制度を利用することは賢明な判断と言えます。制度もどんどん改善され、大抵の心配事は解消できるようになっています。まずは、専門家に相談して制度を利用すべきかどうか判断してみましょう!

執筆者: やさしい相続編集部