相続は、誰もが一度は経験するものです。

 

皆さんの周囲にも、相続関係で悩んだり、問題が起きている家庭を見かけたことはないでしょうか?

 

「自分はこうはなりたくない!」

「自分の家庭ではこんな問題は起きないよ」

 

と思っていても、いざ相続が始まると、

 

「こんなはずではなかったのに・・・」

 

となってしまうことが多いものです。

 

 

ここでは、相続について、手続きの流れに沿って詳しく説明していきます

 

この記事を読んで頂ければ、いざという時に必ず役に立ちます。それでは、相続手続きを一緒に見ていきましょう!

相続の全体像

相続手続きの流れ

相続とは、被相続人(故人)の権利や義務などの遺産を、残された相続人が引き継ぐことをいいます。

 

しかし、相続はただ遺産を引き継ぐだけではありません。事前の対策や引き継いだ後の手続きも全て含めて「相続」なのです。

 

相続は、次のような流れで進んでいきますので、この流れに沿って「相続とは何なのか?」を説明していきます。

 

 

【相続の流れ】

  1. 相続対策
  2. 相続が始まった直後の手続き
  3. 相続人・相続財産の調査
  4. 相続方法の選択
  5. 遺産分割
  6. 相続税の計算・納付

 

 

 

相続対策

相続対策

実は、相続に関係する問題の原因は、相続の発生前から既に存在しています。相続の問題の原因を予期し、予めその芽を摘んでおくことを「相続対策(そうぞくたいさく)」といいます。

 

では、相続では、どのような問題が生じるのでしょうか?

 

相続で生じる問題は、主に次の3つです。

 

 

【相続で生じる問題】

  1. 遺産分割の問題
  2. 相続税の問題
  3. 納税資金の問題

 

 

 

〈問題その1〉遺産分割の問題

遺産分割の問題

相続に関する最も一般的な悩みは、遺産分割の問題です。

 

遺産分割とは、遺産を相続人全員で分け合うことをいいます。この遺産分割で起きる問題とは、たとえば、遺産を分けるときに相続人同士が揉めてしまい、泥沼の争いになってしまうような場合です。

 

遺産分割の問題は、きちんと対策しておけば回避できる問題です。しかし、対策を講じない方が多いために、日本全国で最も多い相続の問題となっています。

 

 

〈問題その2〉相続税の問題

相続税の問題

皆さんは、相続税の税率をご存知でしょうか?

 

消費税が数%上昇するだけでニュースになっていますが、相続税の税率は数%どころではありません。我が国の相続税の最高税率は、なんと55%です!

 

したがって、多くの財産を相続してしまうと、それに応じて多くの相続税を納付しなければなりません。

 

相続税の負担も、きちんと事前に対策することで、納税額を低く抑えられることがあります。

 

 

〈問題その3〉納税資金の問題

納税資金の問題

相続税の負担が重いと、納税資金の確保も簡単ではありません。なぜなら、相続税は、現金での一括納付が原則だからです。

 

「相続した遺産から納めればいいじゃないか」

 

と思われるかもしれません。

 

しかし、我が国で相続される遺産のほとんどは、預貯金や有価証券といった換金しやすい金融資産ではなく、土地や家屋といった換金しづらい不動産なのです。

 

そのため、きちんと納税資金の対策をしておかないと、相続税の納付ができなくなってしまいます。

 

 

 

1.遺産分割の問題への対策

遺産分割の問題への対策

相続した遺産を相続人で分ける遺産分割ですが、その方法はどうやって決めると思いますか?

 

よくある回答として「各相続人の引き継ぐ遺産の割合は、法律で決まっている」があります。

しかし、これは誤りです。

 

実は、遺産分割は、相続人間の話し合いで決定されます。原則として、遺産分割は、相続人同士の話し合いで自由に決定できます。この話し合いを「遺産分割協議」といいます。

 

この点、相続人の一部が多くの割合を相続すると、当然、他の相続人の相続する割合は減ってしまうように、相続人の利害は対立しています。

 

したがって、利害が対立する相続人同士で行われる遺産分割協議をまとめるのは困難であり、醜い争いになってしまうこともあるのです。

 

ここでは、この遺産分割の問題への対策を紹介していきます。

 

 

【遺産分割の問題への対策】

  1. 遺言書を利用する
  2. 家族信託を利用する
  3. 遺言執行者を選任する
  4. 遺留分の放棄を利用する
  5. 相続人を廃除する

 

 

〈対策その1〉遺言書を利用する

遺言書による対策

被相続人が生前に遺言書を作成し、財産の分配方法を定めておけば、遺産分割の問題を回避できます。

 

遺言書を使うと、他にも様々なことができます。たとえば、子どもを認知したり、相続人以外の人に遺産を譲ったりすることもできます。

 

 

〈対策その2〉家族信託を利用する

家族信託による対策

家族信託を利用する対策方法もあります。

 

家族信託を利用すると、被相続人の生前の財産管理~死後の財産管理や遺産分割について、被相続人の意向を反映させることができます。

 

この家族信託を利用する方法が、近年注目を集めています。

 

 

〈対策その3〉遺言執行者を選任する

遺言執行者の選任による対策

遺言執行者を予め選任しておくことも有効な対策です。

 

遺言執行者とは、遺言書の内容の実現を託された人をいいます。遺言執行者を選任することで、相続人が遺産を使い込むことを防止できます。

 

この遺言執行者には、基本的には誰でもなることができますが、弁護士など法律に詳しい第三者がなることもあります。

 

第千六条

遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

 

 

〈対策その4〉遺留分の放棄を利用する

遺留分の放棄による対策

遺言書によって自由に財産処分をするために、相続人に遺留分(いりゅうぶん)の放棄や遺留分合意をしてもらうことも可能です。

 

この「遺留分」とは、遺言書によっても侵すことのできない相続人の権利をいいます。

 

第千四十三条

相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。

 

 

〈対策その5〉相続人を廃除する

相続人の廃除による対策

一部の推定相続人に遺産を相続させないように、相続人の廃除の手続きをとることもできます。

 

相続人を廃除することで、遺産を相続させたくない相続人が相続できないようにすることができます。

 

第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

第八百九十三条  被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

 

 

2.相続税の問題への対策

相続税の問題への対策

近年、相続税の課税範囲および税率が大きく変わり、多くの人が相続税の課税対象になりました。

 

そのため、相続税対策は、相続にあたって重要な問題となっています。ここでは、相続税対策の方法を紹介していきます。

 

 

【相続税の問題への対策】

  1. 生前贈与を活用する
  2. 遺産の評価額を低く抑える
  3. 非課税枠を利用する

 

 

〈対策その1〉生前贈与を活用する

生前贈与を活用した対策

相続税の金額は、基本的に相続する財産の総額によって決まります。そのため、相続税を低く抑えるためには、相続する財産の総額を減らすことが有効です。

 

その1つの方法として「生前贈与」があります。生前贈与とは、被相続人の生前に財産を贈与することです。生前に財産を有効に贈与して、相続する財産を減らしておけば、課税される相続税の金額も抑えられます。

 

生前贈与にも贈与税がかかる場合はありますが、贈与税の基礎控除や特別控除枠を利用することにより、税負担なく資産を移転する方法がいくつかあります。

 

 

〈対策その2〉遺産の評価額を低く抑える

不動産評価による対策

「相続する財産そのものを減らす」のではなく、「相続する財産の評価額を低下させること」も有効な対策となります。

 

なぜなら、相続税の金額は、相続する財産の評価額によって決定されるためです。たとえば、預貯金などの評価額が決まっているものではなく、土地などの不動産は評価の方法次第で複数の評価額が算定されることがあります。

 

こうした不動産は、評価方法や利用方法を変更することにより、大きく評価額を低下させられることがあります。この他にも、非公開の株式は、オーナー株主、非オーナー株主それぞれに株式を低く見積もる方法があります。

 

 

〈対策その3〉非課税枠を利用する

非課税枠を利用した対策

他の税金と同様に、相続税にも様々な非課税枠が用意されています。

 

墓碑(ぼひ)などの祭祀財産(さいしざいさん)や生命保険等を活用することで、相続する財産を減少させることができます。

 

たとえば、相続が始まってから墓石を購入すると、その代金は相続税が課税された後のお金から支払うことになります。一方、相続が始まる前に購入すると、その墓石は非課税の財産ですから、相続税は課税されません。

 

つまり、非課税枠を利用することで、相続税の負担を減少させることができるのです。

 

 

 

3.納税資金の問題への対策

納税資金の問題への対策

相続税は、納付期限までに現金で一括して納付しなければならないのが原則です。

 

不動産など、現金に換えることが難しい財産ばかりを相続すると、相続税を支払うことが難しくなります。

ここでは、納税資金を確保するための方法を説明していきます。

 

 

【納税資金の問題への対策】

  1. 生命保険を活用する
  2. 不動産を活用する
  3. 金庫株を活用する

 

 

〈対策その1〉生命保険を活用する

生命保険を活用する

被相続人の生命保険契約を予め締結しおけば、相続が始まってから生命保険金を受け取ることができ、納税資金を確保できます。

生命保険の非課税枠も併せて利用することで、相続税の節税効果も期待できます。

 

 

〈対策その2〉不動産を活用する

不動産を活用する

現金に換えることが難しいからといって、不動産を軽視してはいけません。

 

不動産を利用することによっても納税資金を確保することができます。不動産も、生前に余裕を持って売ることができれば有効な資金調達手段となります。

 

また、あらかじめ不動産の売却金額を調査しておきさえすれば、納税計画も立てやすくなります。

 

さらに、不動産を賃貸する場合には、安定的な現金収入を得つつ、不動産評価を下げることによる節税効果も見込めます。

 

 

〈対策その3〉金庫株を活用する

金庫株を活用する

被相続人が株式会社のオーナーである場合には、オーナー会社の株式を会社に売却することで納税資金の確保ができます。

また、株式の評価額を下げることで、節税効果も見込めます。

 

 

 

遺言書

遺言書

遺言書は、被相続人がご遺族に対してできる最期の意思表示といっても過言ではありません。

 

遺言書を活用することで、被相続人は非常に多くのことを行うことができます。

 

また、遺言書の書き方や種類もいくつかありますので、ご自身のご都合に合わせた遺言書を作成することができます。

ここでは、この遺言書について解説していきます。

 

 

遺言書を使ってできること

遺言書を活用すれば、様々なことができるようになります。

ここではその一部を紹介していきます。

 

 

【遺言書を使ってできること】

  1. 遺贈
  2. 相続割合・遺産分割方法の指定
  3. 認知
  4. 未成年後見人の指定
  5. 相続人の廃除
  6. 遺言執行者の指定

 

 

1.遺贈

遺贈

遺言書を使ってできることの1つとして、「自分の財産の処分」があります。

 

相続人以外の人や法人に対して財産をあげることを遺贈(いぞう)といい、遺言によってこの遺贈を行うことができます。

 

第九百六十四条

遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

 

 

2.相続割合・遺産分割方法の指定

相続割合・遺産分割方法の指定

各相続人には、それぞれの相続割合が法律によって定められています。

 

しかし、「妻に多く遺したい」「長男に多く遺したい」などの被相続人の意向から、遺言書により相続割合を変更することができます。

 

また、相続人に対して誰がどの財産を承継するかを具体的に定めることもできます。たとえば、「自宅は妻に、預金は長男に、有価証券は長女に・・・」といった具合です。

 

第九百二条

被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

第九百八条

被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

 

 

3.認知

遺言書による認知

認知とは、非嫡出子(ひちゃくしゅつし)を「自分の子どもである」と認める行為です。遺言書によっても、認知をすることができます。

 

遺言書で認知をすることにより、被相続人の子となった非嫡出子は法定相続人となり、遺産を相続する権利を得ることになります。

 

第七百八十一条
 認知は、遺言によっても、することができる。

 

 

4.未成年後見人の指定

未成年後見人

被相続人が親権を行使する未成年の子があり、被相続人の死によって親権者がいなくなる場合に、未成年後見人をつけることができます。

 

未成年後見人とは、未成年の面倒を見る義務を負う人のことをいいます。つまり、被相続人の死後、被相続人の子の面倒を見てもらえる人を、遺言書によって決めることができるのです。

 

第八百三十九条

未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。

 

 

5.相続人の廃除

遺言書で廃除する

遺言書によって相続人の廃除(そうぞくにんはいじょ)の申請をすることができます。相続人廃除とは、相続人から相続資格をはく奪することをいいます。

 

この相続人の廃除を利用すれば、生前にひどい目にあった相続人に対して一矢報いることができます。

 

第八百九十二条

遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

第八百九十三条

被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。

 

 

6.遺言執行者の指定

遺言執行者

いくら完璧な遺言書を作成したとしても、その内容を実現できないようでは意味がありません。

 

そこで、遺言書の内容をきちんと実行してもらうために、遺言書によって遺言執行者を選任することができます。

 

遺言執行者とは、遺言書の内容を失効する義務を負う人のことをいいます。遺言執行者が選任されると、遺産管理も任せられるので、不穏な相続人による財産の浪費を防止することもできます。

 

第千六条

遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

 

 

遺言書の種類

遺言書は相続人が財産を処分したり、その他様々な行為を行えるものですから、濫用されないようにきちんと方式が決まっています。

 

ただし、いくつかの方法が用意されていますので、ご自身に合った遺言形式を選択することもできます。ここでは、よく利用される数種類の遺言書をそれぞれ紹介します。

 

 

【遺言書の種類】

  1. 自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)
  2. 公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)
  3. 秘密証書遺言(ひみつしょうしょゆいごん)

 

第九百六十七条

遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。

 

 

1.自筆証書遺言

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、被相続人が自分自身で遺言内容を書き、押印し、保管しておく遺言書です。

 

自分で作成できるため、その手軽さがメリットです。

 

一方で、その形式や内容に不備がある場合、遺言書そのものが無効になったり、想定していない問題が生じる原因にもなりかねません。

 

また、自筆証書遺言は被相続人の死後に、家庭裁判所による検認の手続きが必要となりますので、相続人にとっては面倒な遺言書といってもよいかもしれません。

 

さらに、自筆証書遺言を被相続人自身が保管する場合には、被相続人の死後に遺言書が発見されない恐れや、相続人により毀棄、隠匿、偽造される恐れもあります。

 

第九百六十八条

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 

 

2.公正証書遺言

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場でプロである公証人に遺言内容を作成してもらう遺言書です。

 

遺言書の作成に公証人が介在することで、遺言の形式や内容の適正さが担保されるため、遺言書が無効になってしまう心配がありません

 

また、公正証書遺言は公証役場に保管されるため、自筆証書遺言のような紛失、偽造といった心配もありません

 

ただし、公正証書遺言の場合、公証人に遺言書の内容を見られてしまうこと、及び作成に手数料がかかってしまうことがデメリットといえるでしょう。

 

第九百六十九条

公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

 証人二人以上の立会いがあること。
 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

 

 

3.秘密証書遺言

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、内容は誰にも見せずに、遺言の紛失や偽造に備える遺言書です。

 

秘密証書遺言は、公証人に遺言を封印することを確認してもらう必要がありますが、誰にも内容を知らせる必要がない点がメリットといえます。

 

当然、遺言書の保管は自分で行うことになります。

 

秘密証書遺言を利用すると、第三者がその内容を確認できないため、形式の不備や内容の誤りが生じ、無効になってしまう恐れがある点がデメリットといえるでしょう。

 

第九百七十条

秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

 

 

特別方式の遺言書

特別方式の遺言書

上記3種類の遺言書を選択することができない場合に作成されるのが、特別方式遺言といわれる次の2つの遺言書です。

 

【特別方式の遺言書】

  1. 危急時遺言(ききゅうじゆいごん)
  2. 隔絶地遺言(かくぜつちゆいごん)

 

 

遺言書を探す

遺言書を探す

被相続人の死後、遺言書が見つからない・発見されないといったケースは決して少なくありません。遺産分割を行った後に遺言書が発見されるなんていうケースも存在します。その場合には、遺言書の内容に沿って、再度の遺産分割をしなければならない場合があります。

 

このような事態を避けるためにも、相続が開始されたら、被相続人が遺言書を遺していないかどうか、きちんと確認する必要があります。ここでは、遺言書の一般的な探し方を紹介していきます。

 

【遺言書の探し方】

  1. 公証役場で確認する
  2. 生活環境を確認する

 

 

1.公証役場で確認する

公証役場を探す

公正証書遺言は公証役場で作成され、そこで保管されます。そのため、公正証書遺言を被相続人が作成している可能性がある場合には、公証役場に問い合わせてみましょう。

 

 

2.生活環境を確認する

生活環境を探す

自筆証書遺言などの遺言書は、被相続人が自ら保管しています。そのため、自筆証書遺言が作成されている可能性がある場合には、被相続人の自宅や生活圏内で遺言書を保管している場所の確認を行います。たとえば、自宅の金庫に保管されているケースがあります。

 

 

家庭裁判所での検認手続き

裁判所

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、開封前に家庭裁判所にて検認の手続きを経る必要があります。検認とは、対象となる遺言が被相続人の遺言であるかどうか確認する手続きです。

 

この検認を経ずに開封が行われた場合、その遺言書が無効になる場合がありますので、必ず開封前に検認の手続きを経るようにしましょう。

 

第千四条
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。

 

 

遺言書の限界

遺言書の限界

我が国では、自分の財産は自分の思い通りに処分できるのが原則です。そのため、遺言書に記載されている内容、特に財産の処分は、可能な限り実現するように法律で規定されています。

 

しかし、これらの原則にも関わらず、遺言書によっても自分の財産すべてを自由に処分できない場合があります。それが「遺留分制度(いりゅうぶんせいど)」です。

 

相続人の一部は、被相続人から一定割合の相続分を取得する権利を有しています。この権利を「遺留分(いりゅうぶん)」といいます。

 

この遺留分は、遺言書によっても侵害することができません。そのため、遺言書を作成する場合には、遺言書の内容が遺留分を侵害していないか確認する必要がありますので注意しましょう。

 

 

 

葬儀、お墓、相続開始直後の手続き

葬儀・お墓

故人の死後数日間は、非常に慌ただしい日が続くことは皆さんもご存知でしょう。お通夜、お葬式、お寺などへの挨拶だけでなく、病院にお世話になった場合には病院の医療関係者への挨拶も行うのが通常です。通常とはいっても、葬儀やお墓、その他の相続に関する手続きは、実際に経験してみないと分からないことだらけで混乱してしまいます。

 

また、これらの手続きは故人の死後数日以内に行わなければなりませんので、悲しみの癒えないうちからこうした手続きを行うのは相当な負担になるはずです。ただし、事前に知識を蓄えておくだけで、段取りよく執り行うことができます。

 

 

ここでは、葬儀やお墓などの相続開始直後の手続きについて解説していきます。中には非常に重要な手続きも含まれていますので、しっかりと準備しておきましょう。必ず役に立ちます。それでは、見ていきましょう!

 

【相続開始直後の手続き】

  1. 死亡届を提出する
  2. 葬儀を執り行う
  3. お墓・墓地を用意し、納骨する

 

 

1.死亡届を提出する

死亡届を提出する

まずは、医療機関から死亡診断書を受け取りましょう。死亡診断書とは、医師が故人の死亡を証する診断書です。この死亡診断書の受け取りは、ここから先の相続手続きのスタートですので、迅速に受け取りましょう。

 

死亡診断書を受け取ったら、次は故人の本籍地などの市区町村役場へ死亡届(しぼうとどけ)を提出します。死亡届が受理されれば、故人の戸籍が抹消されることになります。この死亡届は、故人の死亡の事実を知った時から7日以内に届け出を行う必要がある点にご注意ください(国外で死亡した場合には、3か月以内)。

 

実務上は、死亡診断書と死亡届を併せて1枚の届出用紙となっていることが多く、この届出書類は医療機関や役所に設置されています。また、死亡届は24時間365日受付可能となっているため、役所の営業時間外でも届出を行うことができます。

 

なお、死亡届と併せて、火葬許可申請書も提出すると、火葬許可証が交付されます。火葬許可証がないと、ご遺体を火葬するために必要となりますので、必ず入手するようにしましょう。

 

 

 

2.葬儀を執り行う

葬儀を執り行う

葬儀会社と話し合いながら、葬儀の日程、葬儀の方法、費用、その後やるべきことを決め、葬儀を行います。葬儀については、葬儀会社が滞りなく手続きを進めてくれますので、葬儀会社にお任せしましょう。

 

 

3.お墓・墓地を用意し、納骨する

お墓・墓地を準備する

お墓、墓地の準備が済んでいない場合には、それらの用意もする必要があります。なお、これらの用意が済んでいなくとも葬儀は執り行えますので、ご安心ください。葬儀、法要を終えたら、納骨まで行います。

 

 

相続が始まってからの手続き

相続が始まってからの手続き

被相続人が亡くなってから、様々な手続きを行う必要があります。申請をきちんとしないと過料(かりょう:一般的には罰金のようなもの)に問われるものや、申請をしないと給付を受けられないものもありますので、よく確認することが大切です。

 

【相続が始まってからの手続き】

  1. 名義変更・解約の手続き
  2. 年金・保険等の受給手続き

 

 

1.名義変更・解約等の手続き

名義変更・解約手続き

住民票の世帯主の変更、健康保険の加入・被扶養者移動手続き、電気・ガス・水道・電話加入権等の名義変更はできるだけ早く行う必要があります。また、年金受給停止手続、健康保険証の返還、介護保険証の返還、クレジットカードの解約、運転免許証・パスポートの返還等の各種解約手続き等も早めに行う必要があります。ここで行うべき手続きをまとめると次の通りです。

 

【名義変更変更手続き(一部)】

  • 住民票の世帯主の変更手続き
  • 健康保険の加入・被扶養者移動手続き
  • 電気・ガス・水道・電話加入権等の名義変更手続き

 

【解約手続き(一部)】

  • 年金受給停止手続き
  • 健康保険証の返還手続き
  • 介護保険証の返還手続き
  • クレジットカードの解約手続き
  • 運転免許証・パスポートの返還手続き

 

 

2.年金・保険等の受給手続き

年金・保険等の受給手続き

遺族年金給付、寡婦年金給付、死亡一時金給付、埋葬料・葬祭費支給申請を各種機関に対して行うことで各種給付を受けることができます。また、かんぽであれば郵便局、民間生命保険であれば各生命保険会社への申請により保険金を請求できます。

 

【年金・保険等の受給手続き(一部)】

  • 遺族年金給付申請
  • 寡婦年金給付申請
  • 死亡一時金給付申請
  • 埋葬料・葬祭費支給申請

 

 

 

祭祀財産の取り扱い

祭祀財産

お墓や墓地、仏壇といった祭祀財産(さいしざいさん)は、被相続人の財産の中でも特別な取扱いがなされる財産です。この祭祀財産は、土地などの通常の財産とは取扱いが異なるため注意が必要です。

 

ここでは、通常の財産と祭祀財産の取り扱いが異なる点に焦点を当てて解説していきます。

 

【祭祀財産の取り扱い】

  1. 祭祀財産は分割の対象外
  2. 祭祀財産は非課税
  3. 給付金を受けられる

 

 

1.祭祀財産は分割の対象外

祭祀財産の分割

相続人が複数いる場合、通常の財産は遺産分割の対象となります。

 

しかし、祭祀財産は遺産分割の対象とはなりません。祭祀財産は遺言書で承継する者の定めがあればそれに従い、定めがなければ祭祀を執り行う者が承継します。

 

第八百九十七条

系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。

 

 

2.祭祀財産は非課税

祭祀財産と相続税

通常の財産の場合、その評価額に応じて相続税が発生します。

 

しかし、祭祀財産に相続税は課税されません。生前に祭祀財産を購入しておくことで、相続税の節税対策をすることができます。

 

相続税法 第十二条

次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。

 墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの

 

 

3.給付金を受けられる

祭祀財産と給付金

葬祭・埋葬にかかる費用については、各種給付金を取得することができます。

 

加入保険および死亡原因によって、国民健康保険、健康保険、労災保険から受け取れることになります。

 

 

 

相続人の範囲、割合

遺産の相続割合

故人の葬儀・火葬・埋葬が終わったら、次は本格的な相続に関する手続きが始まります。ここでまず最初にやらなければならないのは「相続人を確定させること」です。

 

相続人とは、故人の遺産を相続する権利をもつ人をいいます。誰が相続人なのかを確定させないと、遺産分けの話し合いはできません。そのため、まずは誰が相続人なのかを調査することから始める必要があります。

 

 

ここでは、誰が相続人なのか、各相続人の相続する遺産の割合について解説していきます。

 

 

法定相続人と相続割合

法定相続人とは、相続が開始された場合に相続人となる候補の親族等をいいます。法定相続人は次の者をいいます。

 

  • 第1順位の相続人:被相続人の子
  • 第2順位の相続人:被相続人の直系尊属(両親や祖父母)
  • 第3順位の相続人:被相続人の兄弟姉妹
  • 配偶者

 

 

1.子・直系尊属・兄弟姉妹

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順位が上の法定相続人がいる場合には、順位が下の法定相続人は相続人となることができません。たとえば、被相続人に子(第1順位)がいる場合、被相続人の両親(第2順位)や兄弟姉妹(第3順位)は相続人とはなれません。

 

同一順位の相続人が複数人いる場合、同一順位内の相続人の数で相続分は按分されます。

 

第八百八十七条

被相続人の子は、相続人となる。

第八百八十九条 

次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。

 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
 被相続人の兄弟姉妹

 

 

2.配偶者

配偶者

配偶者は常に相続人となり、第1~第3順位の相続人とともに相続人となります。

 

第八百九十条 

被相続人の配偶者は、常に相続人となる。

 

配偶者と第1~第3順位の相続人がいる場合の遺産の相続割合は次のとおりです。

 

【配偶者の他に相続人がいる場合の相続割合】

  1. 配偶者と第1順位の相続人がいる場合
  2. 配偶者と第2順位の相続人がいる場合
  3. 配偶者と第3順位の相続人がいる場合

 

 

1.配偶者と第1順位の相続人がいる場合

配偶者:第1順位の相続人=1/2:1/2

 

2.配偶者と第2順位の相続人がいる場合

配偶者:第2順位の相続人=2/3:1/3

 

3.配偶者と第3順位の相続人がいる場合

配偶者:第3順位の相続人=3/4:1/4

 

第九百条

同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

 

 

孫が相続することもある

代襲相続

被相続人が死亡する前に、第1順位の相続人である子や第3順位の兄弟姉妹が既に亡くなっている場合、誰が相続人となるのでしょうか?

 

第1順位または第3順位の法定相続人の子が、親に代わって同一順位の相続人になります。これを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」といいます。

 

第八百八十七条
 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

 

 

同様に、被相続人から見て子も孫も既に亡くなっている場合、孫の子である曾孫が第1順位の相続人の地位を受け継ぎます。これを「再代襲相続(さいだいしゅうそうぞく)」といいます。

 

ここでご注意頂きたいのは、再代襲相続は第1順位の相続人のみで生じ、第3順位の相続人では生じないということです。

 

 

 

相続人の範囲が修正されるケース

相続人の変更

相続人の範囲は法律で決まっている範囲に限られません。被相続人の意思や相続人の行動などにより相続人の範囲を修正することができます。

 

ここでは、どういった場合に相続人の範囲が修正されるのかを見ていきましょう。

 

【相続人が変更されるケース】

  1. 包括遺贈がある場合
  2. 養子縁組がある場合
  3. 内縁・離婚がある場合
  4. 相続人欠格がある場合
  5. 相続人廃除がある場合

 

 

1.包括遺贈がある場合

包括遺贈がある場合

包括遺贈(ほうかついぞう)とは、被相続人が遺言書により、相続財産の全部または一部の割合を相続人以外の者に譲り渡す行為をいいます。

 

このようにして被相続人の財産を譲り受けた者を受遺者(じゅいしゃ)といい、受遺者は相続人と同様の扱いがされるようになります。つまり、遺言書によって相続人の範囲は修正されるのです。

 

 

2.養子縁組がある場合

養子縁組

養子縁組がある場合にも、相続人の範囲は修正されます。

 

被相続人が養子縁組を組んだ場合、被相続人と養子が親子関係になります。そうすると、被相続人の第1順位の相続人(子)が増えることになり、相続人の範囲が修正されるのです。

 

養子の他に第1順位の相続人がいる場合には、その第1順位相続人の相続分が減ることになります。また、第2、3順位の相続人がいる場合には、養子が第1順位の相続人となるため、これらの法定相続人は相続人になれません。

 

 

3.内縁、離婚がある場合

内縁・離婚

被相続人の配偶者として振る舞ってはいたけれど、被相続人と正式に婚姻していない内縁関係の場合、内縁の夫または妻は相続人にはなれません。

 

また、正式に離婚をした場合、元配偶者は相続人にはなれません。一方、離婚したように見えても正式に離婚届けをしていなければ相続人となります。

 

 

4.相続人欠格がある場合

相続人欠格

被相続人や自分よりも上の相続順位の者を殺したり、殺そうとした者、詐欺強迫によって遺言をさせたり遺言の撤回をさせたりした者は、相続人になるべきでない者として当然に相続人でなくなります。これを「相続人欠格」といいます。相続人の一部が欠格により相続人でなくなると、相続人の範囲が変更されます。

 

第八百九十一条 

次に掲げる者は、相続人となることができない。

 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

 

 

5.相続人廃除がある場合

相続人廃除

相続人欠格事由(被相続人を殺すなど)にあたらなくとも、被相続人に対して虐待や侮辱をしたり、著しい非行があった場合には、被相続人の請求により、家庭裁判所が推定相続人を廃除することがあります。これを「相続人廃除」といいます。被相続人は自ら家庭裁判所に請求することもできますし、遺言書によって請求することもできます。

 

第八百九十二条
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
第八百九十三条
相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。

 

 

相続割合が変更されるケース

相続割合の変更

次の場合には、法定の割合から相続割合が変更されることがあります。

 

【相続割合が変更されるケース】

  1. 寄与分がある場合
  2. 特別受益がある場合
  3. 遺言書で相続割合が変更された場合

 

 

1.寄与分がある場合

被相続人に給付を行い、または被相続人を献身的に支える等して相続財産を増加させる特別の寄与があった者については、寄与分(きよぶん)を加味して相続分が計算されます。

 

第九百四条の二

共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

 

 

2.特別受益がある場合

被相続人から給付を受け、または特別に援助してもらった相続人については、被相続人から受けた利益を減額して相続分が計算されます。ここで相続人が得た利益を特別受益(とくべつじゅえき)といいます。

 

第九百三条

共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

 

 

3.遺言書で相続割合が変更された場合

遺言書によって相続人の相続割合を指定することができます。ただし、相続人が遺留分権利者である場合には、遺留分を侵害することはできません。

 

第九百二条

被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

 

相続財産

相続財産

相続人が確定したら、次は相続の対象となる財産を確定させる必要があります。この相続する財産のことを「相続財産(そうぞくざいさん)」といいます。

 

相続財産は、被相続人の一身専属(いっしんせんぞく)の権利義務を除いた、すべての財産が対象となります。

 

すべての財産ということは、預貯金や不動産などのプラスの財産も、借金などのマイナスの財産も相続の対象となるということです。

 

第八百九十六条

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

 

 

 

プラスの財産とは

プラスの財産

プラスの財産として相続財産となるのは、被相続人が所有していた財産や各種権利、特定の人に請求できる債権などです。

通常、遺産といえば、このプラスの財産を思い浮かべるでしょう。

 

【プラスの財産】

  1. 所有財産
  2. 各種権利
  3. 債権

 

 

1.所有財産とは

被相続人が所有していた不動産、自動車、家財、宝飾品、現金などは相続財産となります。

 

 

2.各種権利とは

被相続人が有していた借地権、借家権、株式、公社債、投資信託といった権利も相続財産となります。

 

 

3.債権とは

被相続人が有していた預貯金、自営業に係る売上債権なども相続財産となります。なお、生命保険受取金や遺族年金などは、契約や法律上受取人に直接帰属する権利ですので相続財産とはなりません。

 

 

マイナスの財産とは

マイナスの財産

被相続人のマイナスの財産も相続の対象となります。マイナスの財産には次のものが含まれます。

 

【マイナスの財産】

  1. 借金などの債務
  2. 保証人の地位・保証債務
  3. 担保

 

 

1.借金などの債務とは

被相続人が抱えていた借金、住宅ローン等も相続の対象となります。

 

 

2.保証人の地位・保証債務とは

保証人の地位や既に発生している保証債務についても相続の対象となります。ただし、身元保証といった被相続人個人を対象として信頼をした保証人の地位は受け継ぎません。

 

 

3.担保とは

被相続人が所有不動産に設定していた抵当権などの担保も相続の対象となります。

 

 

 

相続人・相続財産の調査

相続人・相続財産の調査

相続人を確定させる、相続財産を確定させると一言にいっても、どのように調査してよいかわからない方は多いでしょう。そこで、ここでは相続人や相続財産の調査方法を解説していきます。

 

 

相続人の調査方法

相続人の調査方法には次の3つの方法があります。

 

  1. 戸籍を集める
  2. 遺言書を確認する
  3. 胎児の有無を確認する

 

 

1.戸籍を集める

戸籍の収集

戸籍は、本籍地と筆頭者の索引によって示されます。婚姻や養子縁組などにより身分が変遷することで、筆頭者の戸籍に入ったり、出たり、自分が筆頭者になったりと変化していきます。

 

その変遷はたどることができるので、それらを辿ることで相続人を確定していきます。戸籍の収集と言っても、相続人ご自身が調査されるのは負担が大きいので、弁護士・行政書士などの専門家に依頼するのが一般的です。

 

 

2.遺言書を確認する

遺言書を確認する

遺言書によって認知をされた者も相続人となります。このように、戸籍を確認するだけでは十分でなく、戸籍に反映されていない相続人を確定するために遺言書の確認が必要となります。

 

 

3.胎児の有無を確認する

胎児の有無を確認する

胎児は「まだ」戸籍には記載されていません。相続の開始時に懐胎していれば、その胎児は相続人になります。これは戸籍を調査してもわからないことです。

 

被相続人の妻が相続時に懐胎している場合、その胎児は相続人となるので、妊娠の有無は必ず確認する必要があります。被相続人の子が既に亡くなっており、その子に妻がいる場合、その胎児は代襲相続人となります。この場合に備えて、亡き子の妻についても胎児の有無を必ず確認する必要があります。

 

第八百八十六条

胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。

 

 

相続人関係図を作成する

相続人関係図

相続人が把握できたら、「相続人関係図」を作成します。相続人関係図は、法律上必ずしも作成しなければならないものではありませんが、親族間での相続への理解が進むため有用です。

 

また、その後の相続手続きでも必要となる書類ですので、作成されることをおすすめします。なお、相続人関係図の作成は、専門家に依頼することが一般的です。

 

 

相続財産の調査方法

相続財産の調査

相続財産として、どのような財産がどこにどれだけあるかを把握することは、遺産分割や相続税申告に際して極めて重要です。

 

【相続財産の調査方法】

  1. 不動産の調査方法
  2. 預貯金の調査方法
  3. 株式・公社債・投資信託の調査方法

 

 

1.不動産の調査方法

不動産の調査方法

不動産所有に関する情報を入手できるのは、被相続人のご自宅や法務局、各地の市区町村役場です。

 

被相続人のご自宅には、「不動産の登記権利書」や「不動産の課税に係る通知書」が保管されている可能性が高いので、これらを探す場合はご自宅を重点的に探しましょう。

 

また、「登記識別情報通知書」も土地の権利証ですので、必ず確認しましょう。法務局では権利書や名寄帳記載の土地の登記簿謄本を取り寄せましょう。

 

所有不動産が位置する市区町村には、名寄帳(資産明細)、および固定資産評価証明書が保管されています。

 

このように、不動産に関してはたくさんの書類が必要になりますので、注意が必要です。

 

 

2.預貯金の調査方法

預貯金の調査方法

被相続人のご自宅で、預貯金の通帳やキャッシュカードを探しましょう。金融機関からの郵便物や記念品の有無からも預金の痕跡を探すことができます。

 

また、金融機関から残高証明書を取り寄せることも非常に有用です。預貯金の他に、その金融機関で扱っている投資信託などの金融商品がある場合もあるからです。

 

 

3.株式、公社債、投資信託の調査方法

株式など

上場会社株式、公社債、投資信託については、預貯金と同じようにご自宅や金融機関を調査します。自宅で保有形跡を探し出し、金融機関へ照会します。

 

株式については、株券が残っている場合もあります。上場会社などでは株券はペーパーレス化していますが、口座手続きを経ることによって株券を株式として使えるようになります。

 

非公開のオーナー企業の社長や大口株主である場合には、株主名簿を確認しましょう。会社の名前や住所を法務局で照会することで、会社の存在も確認することができます。

 

 

 

相続方法の選択

相続方法の選択

相続財産の範囲が確定したら、次は「相続方法の選択」です。

 

相続が開始すると、相続人は相続財産を承継します。ただし、債務超過で相続財産を承継したくない場合等もあります。たとえば、他のすべての遺産を借金の返済に回したとしても、借金が残ってしまう場合です。この場合、相続すると損することが明らかです。

 

そのような場合に必ず検討しなければならないのが、「相続方法の選択」です。

 

 

3つの選択肢

単純承認・限定承認・相続放棄

相続方法には、次の3つの方法があります。

 

【相続の方法】

  1. 単純承認(たんじゅんしょうにん)
  2. 限定承認(げんていしょうにん)
  3. 相続放棄(そうぞくほうき)

 

 

1.単純承認とは

単純承認

単純承認とは、被相続人の相続財産をそっくりそのまま相続人が受け継ぐという行為です。

 

たとえば、単純承認をすると、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金といったマイナスの財産も引き継ぐことになります。この単純承認は、相続においては原則的な方法で、相続といえば皆さんもこの単純承認をイメージされるでしょう。

 

第九百二十条

相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

 

 

2.限定承認とは

限定承認

限定承認とは、被相続人の相続財産のうち、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた残りの部分について、相続人に承継させる方法です。

 

マイナスの財産の方がプラスの財産よりも多い場合、相続人に承継される財産はありません。

 

ただし、相続財産が債務超過でも債務を引き継がずに特定の財産を承継することは可能です。

 

第九百二十二条

相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。

 

 

3.相続放棄とは

相続放棄

相続放棄とは、被相続人の相続財産の一切を承継しないという方法です。

 

「そんなもったいないことをするわけない!」

 

と思われるかもしれませんが、相続放棄は主に次の2つの場合に選択されます。

 

  • 被相続人の相続財産が債務超過で、単純承認すると借金が残ってしまう
  • 相続人が複数いて、一部の相続人に相続財産を集中させたい

 

第九百三十九条

相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

 

 

3つの方法に必要な手続き

単純承認を選択するために、特に必要な手続きはありません。放っていれば単純承認したことになります。

 

一方、原則的な単純承認とは異なり、限定承認と相続放棄は例外的な方法ですから、家庭裁判所へ申述する必要があります。

 

 

家庭裁判所への申述

家庭裁判所への申述

限定承認と相続放棄は、申述を家庭裁判所に対して行う必要があります。

 

これらの申述は、相続の開始を知って3か月以内に必要書類を添付して行う必要があります。

 

なお、限定承認の申述は、相続人全員で行う必要がありますので、ご注意ください。相続放棄の申述は各相続人単独で行うことができますが、通常は相続人全員および下位順位相続人もまとめて申述を行います。

 

第九百二十四条

相続人は、限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。

第九百三十八条

相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

 

 

限定承認・相続放棄の注意点

限定承認・相続放棄の注意点

限定承認・相続放棄を選択するにあたって、次の2点には注意する必要があります。

 

【限定承認・相続放棄時の注意点】

  1. 熟慮期間に要注意
  2. 処分行為に要注意

 

 

1.熟慮期間に要注意

熟慮期間に要注意

限定承認、及び相続放棄の申述は、相続人が相続の開始を知ってから3か月以内に行わなければなりません。

 

この3か月の期間を熟慮期間(じゅくりょきかん)といいます。熟慮期間を経過すると申述を受け付けてくれなります。そのため、遺産の中に負債が多い場合には、限定承認または相続放棄の選択を迅速に行うことが重要です。

 

第九百十五条 

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。

 

 

2.処分行為に要注意

処分行為に要注意

熟慮期間内であっても相続人が相続財産を使い込んだり、財産の性質を変化させた場合には、限定承認および相続放棄ができなくなります。

 

このように限定承認や相続放棄ができなくなる一定の行為を「処分行為」といいます。

 

この処分行為を行ったために相続放棄ができなくなることが非常に多いのでご注意ください。なお、処分行為にあたるかどうかは専門的な判断を要しますので、弁護士などの専門家にご相談ください。

 

第九百二十一条

次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

 

 

遺産分割

遺産分割

複数の相続人で相続を行う場合、相続財産の一部は共有状態となっています。相続人のうち、誰がどの財産をどのくらい承継するかを相続人同士で話し合う必要があります。

この遺産分けのことを「遺産分割」といい、この話し合いのことを「遺産分割協議」といいます。

 

ここでは、この遺産分割について解説していきます。遺産分割は「相続のヤマ場」といわれており、相続トラブルが頻発する手続きとなっていますので、注意してお読みください。

 

 

 

遺産分割が行われる場合

遺産分割を行う場合

相続が開始されると、ほとんどの場合で遺産分割が行われます。遺産分割が行われるのは、次のような場合です。

 

【遺産分割が行われる場合】

  1. 遺言書がない場合
  2. 遺言書や生前贈与に争いがある場合
  3. 相続人全員が合意した場合

 

 

1.遺言書がない場合

遺言書がない場合には、相続人たちでの話し合いによる遺産分割をする必要があります。

 

遺言書があっても相続財産の一部しか対象としていない場合には、やはり遺産分割をする必要があります。

 

 

2.遺言書や生前贈与に争いがある場合

遺言書や生前贈与があっても、それらの法律行為が無効であったり、取り消された場合にはその部分については遺産分割をする必要があります。

 

 

3.相続人全員が合意した場合

遺言等があっても遺言内容と異なる遺産分割をするよう被相続人全員で合意した場合には、遺産分割を行います。被相続人の遺志といっても相続人全員の合意によれば覆すことができます。ただし、遺贈などにより利益を受ける第三者の権利を侵害することはできません。

 

 

遺産分割の方法

遺産分割の方法

実は、遺産分割の方法はいくつかあります。以下では代表的な遺産分割方法を解説していきますので、これらの方法から適切な方法を選び、また併用することで柔軟かつ公平な遺産分割の合意を目指しましょう。

 

【遺産分割の方法】

  1. 現物分割
  2. 換価分割
  3. 代償分割

 

 

1.現物分割

現物分割とは、遺産をそのままの形で相続分に応じて分割する方法をいいます。

 

 

2.換価分割

換価分割とは、財産を換価(金銭に換えること)し、それによって得られた金銭を相続人に分配するという方法です。

 

換価分割であれば金銭に引き直して配分することになるので、相続人間の不公平を和らげることができます。ただし、その財産売ってしまうので財産を取得したいと思ってもその願いは叶わないことになります。

 

 

3.代償分割

代償分割とは、特定の財産を特定の相続人が取得する代わりに、他の相続人に対して相続割合に応じた金銭を支払うことに合意する方法です。

 

代償分割であれば、換価分割と異なり相続財産を所持したまま、公平な遺産分割を実現することができます。

 

 

遺産分割の手続き

遺産分割の方法

ここでは遺産分割の手続きについて解説します。

遺産分割を実際に行う手続きには、次の3つがあります。

 

【遺産分割の手続き】

  1. 遺産分割協議
  2. 遺産分割調停
  3. 遺産分割審判

 

 

1.遺産分割協議

遺産分割協議

遺産分割協議は、遺産分割に関する話し合いを相続人同士で行い、全員で納得のいく分割案を決める方法です。

 

相続人同士の合意が基本になりますから、全員で分割案に合意する必要があります。

 

遺産分割協議案に相続人全員で合意したら、次はその内容を記録した「遺産分割協議書」を作成します。

 

第九百七条 

共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。

 

 

2.遺産分割調停

遺産分割調停

遺産分割協議で話し合いがまとまらない場合に行うのが「遺産分割調停」です。

 

遺産分割調停は、家庭裁判所に申し立てを行い、調停委員から適切妥当な調停案を提示してもらう方法です。この遺産分割調停も第三者を介した話し合いですから、相続人全員が調停案に合意をする必要があります。

 

 

3.遺産分割審判

遺産分割審判

遺産分割調停も最終的には相続人全員の合意が必要となります。では、遺産分割調停でも合意に至らない場合はどうしましょう?

 

この場合に行われるのが「遺産分割審判」です。遺産分割審判は、家庭裁判所裁判官に遺産分割内容を決めてもらう手続きです。つまり、裁判で争うということです。

 

この遺産分割審判の結果は、相続人の一部が納得できなくとも強制的に遺産分割内容を確定することができるため、いわゆる最後の手段として使われます。

 

第九百七条
遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。

 

 

遺産分割のやり直し

遺産分割のやり直し

遺産分割は、相続人全員の合意を得る必要がある大変な手続きです。しかし、一度行った遺産分割をやり直さなければならない場合があります。

 

ここでは、遺産分割をやり直しが必要な場合について解説していきます。

 

【遺産分割のやり直しが必要な場合】

  1. 遺産分割に相続人の一部が参加していない場合
  2. 相続財産お一部を遺産分割から除外していた場合
  3. 遺言書が遺産分割後に見つかった場合
  4. 相続人全員が合意した場合

 

 

1.遺産分割に相続人の一部が参加していない場合

遺産分割は相続人全員で行わなければ無効となるのが原則です。

相続人であることが判明している者を除外して遺産分割を行った場合、遺産分割は無効となります。

 

 

2.相続財産の一部を遺産分割から除外していた場合

相続財産の一部を遺産分割から除外していた場合、相続人にそのような財産を除いた遺産分割であるとの合意がなされていない限り、遺産分割は無効となります。

ただし、無効にするまででもない少額財産の場合には無効になりません。

 

 

3.遺言書が遺産分割後に見つかった場合

遺言書が遺産分割後に発見された場合には、遺言内容を実現するため遺産分割は無効となります。

 

 

4.相続人全員が合意した場合

相続人全員で再度の遺産分割を行う合意をした場合も遺産分割をすることになります。

 

 

 

相続税

贈与税・相続税

相続する財産が一定以上になると、相続税が発生することがあります。

ここでは、相続税について解説していきます。

 

 

相続税の制度

相続税の制度

相続税の金額は、相続した財産の金額に応じて決まります。

また、相続税は相続する財産が多いほど税率が上がり、納付額が上昇する累進課税制度です。

 

 

相続税の計算方法

相続税の計算方法

相続税は、以下のように計算します。

 

【相続税の計算手順】

  1. 相続財産額の計算を行う
  2. 課税財産額を計算する
  3. 各法定相続人の相続分を計算する
  4. 3で算出した額に税率をかけ、控除額を引く
  5. 4で各相続人の相続分について計算した額を合計する

 

 

①:相続財産額を計算する

相続人が保有していた財産と、生命保険金や死亡退職金等のみなし相続財産を合計します。相続人が抱えていた借金などの負債は減額します。

 

みなし相続財産とは

みなし相続財産とは被相続人の財産ではないけれど、相続財産として計算すべき財産をいいます。

生命保険金や死亡退職金などがこれにあたります。

 

 

②:課税財産額を計算する

①で求めた相続財産から、基礎控除額税額控除額を引き、課税財産額を計算します。

 

基礎控除額とは

基礎控除とは相続財産のうち、一定額以上の相続でしか課税されないように設定されている控除額です。

基礎控除は次の計算式により求めます。

 

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

 

相続人は最低でも1人以上いますので、相続財産が3,600万円以下であれば相続税はかかりません。

相続人が2人であれば、4,200万円以下、3人であれば4,800円以下であれば相続税はかからないということになります。

 

 

各種の控除額とは

基礎控除以外に相続税の課税財産を計算するうえで控除する制度です。

生命保険金や死亡退職金の控除額は次の計算式で求めます。

 

控除額=500万円×法定相続人の数

 

ここで計算された金額を税額から控除することができます。

 

 

③:各法定相続人の相続分を計算する

課税財産を各法定相続人の相続分で按分した額を割り出します。

この按分額は、相続人が実際に承継する財産額とは異なります。

 

 

④:③で算出した額に税率をかけ、控除額を引く

相続税の速算表を参照して、税率をかけます。そこから税率に対応する控除額を引きます。

各相続人の相続分についてこの計算を行います。

 

 

⑤:④で各相続人の相続分について計算した額を合計する

各相続人の相続分について計算した額をすべて合計します。

これで、相続税額を計算することができます。

 

 

⑥:各相続人の納税額を計算する

各相続人が具体的に相続する相続分に応じて相続税の全額を割り振ります。

未成年者や障害者には減税措置が設けられています。

 

 

生前贈与と贈与税

生前贈与と相続税

生前贈与によって相続時にかかる相続税を軽減することができます。

 

ただし、生前贈与でなんでも資産を移してしまうと相続税の意味がなくなってしまいますので、一定額以上の贈与には贈与税がかかります。

 

 

贈与税の暦年課税

生前贈与

贈与税は、毎年贈与した額に応じて課税されます。これを暦年課税といいます。

 

暦年課税では、毎年110万円まで非課税で贈与をすることができます。

 

 

贈与税の精算課税

精算課税

2,500万円までの贈与であれば、相続開始時に相続税に組み込んで課税するという制度もあります。これを「精算課税」といいます。

 

精算課税を利用できるのは、60歳以上の贈与者が20歳以上の子に贈与する場合に限られます。

 

 

贈与税と特別控除

贈与税の控除

相続税と同様、贈与税にも特別控除があります。

20年以上連れ添った配偶者に居住用不動産を贈与する場合や居住用不動産の購入目的で金銭を贈与する場合、2,000万円まで非課税になります。

 

その他、多くの控除制度がありますので、それらをうまく使うことで生前に上手く資産を移転することができます。

 

 

相続税の申告・納税

贈与税の申告

相続税の申告・納税も相続税においては重要な問題です。

 

 

1.相続税の申告

相続税は自己申告制です。相続開始を知ってから10か月までに相続税の申告をする必要があります。

 

課税価格が相続税の基礎控除内に収まり、相続税がかからない場合には相続税の申告は不要です。

ただし、配偶者の税額控除など税額の軽減措置によって相続税の納付が不要な場合に、申告自体は必要になります。

 

相続税の申告はご自身で行うこともできますが、専門的な知識が必要になりますので税理士に依頼するのが一般的です。

 

 

2.相続税の納付

相続税の納付は現金で一括して納付するのが原則です。相続税をきちんと払えるように準備をしておく必要があります。

 

しかし、現金で一括納付することができない場合も当然あるでしょう。そのような場合には、納付期限までに納付できそうになければ、分割納付にする「延納」や相続財産で納税する「物納」を選択することもできます。

 

 

3.被相続人の準確定申告も必要

被相続人の所得があった場合、被相続人に代わって所得税の確定申告をしなければなりません。これを「準確定申告(じゅんかくていしんこく)」といいます。準確定申告は相続の開始から4か月以内に行う必要がありますのでご注意ください。

 

 

 

相続税の修正

相続税の修正

相続税の申告が終わったからといって油断してはいけません。

相続税の申告をした時に計算に入れていなかった財産を発見した場合や、相続税を多く払いすぎていた場合には、適正な相続税を払うために手続きを経る必要があります。

 

このような事態を避けるためにも、相続税は税理士に依頼するのが無難でしょう。

 

 

1.修正申告

修正申告

相続財産を新たに発見したり、相続税計算に入れていなかった財産があるなど、相続税を払う額が少なかった場合には、修正申告をする必要があります。

 

修正申告は原則としていつでもすることができ、修正申告書を提出して行います。

修正申告書を提出すると、加算税や延滞税が課されますのでご注意ください。

 

 

2.更正請求

相続税の更正

相続財産を高く見積もってしまい、相続税を払いすぎてしまった場合には更正請求をすることができます。

 

更正請求は相続税の更正請求書を提出することによって行います。

修正申告と異なり、更正請求は原則として申告期限から5年以内にしなければなりません。

 

 

 

遺留分を取り戻す

遺留分減殺請求

遺言によっても侵すことのできない相続人の財産承継の権利を「遺留分」といいます。

 

遺留分を侵害する形の遺言や生前贈与がなされた場合、遺留分を侵害された相続人は利益を得た人(受益者)に対して遺留分にかかる財産の返還を請求できます。これを「遺留分減殺請求」といいます。

 

 

遺留分権利者とは

遺留分権利者

遺留分を有する者を「遺留分権利者」といいます。

 

遺留分権利者は、相続人のうち、第1順位の相続人である子と、第2順位の相続人である直系尊属(両親や祖父母)、さらに配偶者に限られます。

第3順位の相続人である兄弟姉妹は遺留分を有しません。

 

 

遺留分割合とは

遺留分割合

遺留分権利者の有する遺留分を「遺留分割合」といいます。

遺留分は、遺留分権利者によって変わります。

 

 

1.直系尊属のみが相続人である場合

直系尊属のみが相続人である場合には、遺留分割合は相続分の3分の1となります。

 

 

2.第1順位相続人または配偶者が相続人である場合

第1順位相続人または配偶者が相続人である場合、遺留分割合は相続分の半分となります。

 

 

遺留分減殺請求の順番

遺留分減殺請求

遺留分減殺請求には、請求できる順番があります。

 

遺留分減殺請求をすべき順番は、遺言⇒死因贈与⇒生前贈与の順番です。

生前贈与については、直前の贈与からさかのぼって減殺請求することになります。

 

 

遺留分減殺請求の効果

遺留分減殺請求により、受益者は遺留分権利者に対して受益財産の返還義務を負います。

ただし、受益財産に代わり価額の賠償を選ぶこともできます。

 

 

遺留分減殺請求の方法

遺留分減殺請求の効果

遺留分減殺請求には特別な方法はありません。そのため、口頭で行うこともできますが、一般的には次の3つの手続きがあります。

 

 

  1. 話し合い
  2. 調停
  3. 裁判

 

 

1.話し合い

遺留分減殺請求は口頭での請求でも足り、話し合いからスタートします。

しかし、口頭では「請求をしたことを示す証拠」が残りません。そのため、証拠を残す意味でも内容証明郵便で通知をすることをおすすめします。

 

 

2.調停の申し立て

話し合いで解決しない場合には、家庭裁判所へ調停を申し立てることになります。

受益者が調停内容に合意してくれるなら解決できます。

 

 

3.裁判の提起

調停でも遺産分割の問題が解決しない場合には、裁判を提起することになります。

遺留分侵害の事実を争うことになり、強制的な解決を図ることができます。

 

 

この記事のまとめ

専門家の見解をくわしく述べます。

いかがでしたか?

 

相続に関わる問題について、一連の相続手続きの流れに沿って解説しました。

 

相続に関わる問題はこのように非常に多岐にわたり、時に非常に複雑になります。ご自身が体験されるであろう相続について、どのような問題があるかあらかじめしっかりと把握しておくことが大切です。

執筆者: やさしい相続編集部