相続放棄の無料相談窓口、弁護士が対応、2往復無料

親や夫・妻が亡くなったときに発生するイベント、それは相続です。一般的には、亡くなった人の財産(遺産)を、遺族が受け取ることになります。

 

しかし、世の中には「親が借金を残したまま亡くなってしまった」などの事情で、相続をしたくないという人もたくさんいます。そのような相続をしたくない人のために用意されている制度として「相続放棄」があります。この「相続放棄」という言葉は、多くの人が耳にしたことがあるのではないでしょうか。

 

しかし、相続放棄について詳しいことは知らない、という方も多いと思います。相続放棄とは何か、相続放棄のメリットとデメリットは何か、そして、どのようなときに相続放棄をするとよいのか、基本的なポイントから説明していきます。

 

相続放棄とは

相続放棄とは、借金などのマイナスの財産をプラスの財産と一緒に放棄できる。

相続放棄とは、法律で認められた「借金を相続しなくてもよくなる」手続きです。相続放棄は、その名のとおり、亡くなった家族・親戚から受け取る(=相続する)ことができた遺産を受け取らない方法です。

 

せっかく遺産を受け取ることができるのに、その権利を放棄するとは、どういうことでしょうか。実は、相続によって受け取る「遺産」には、プラスの遺産もあれば、マイナスの遺産もあります。相続の手続きは、法律の一つである民法に定められていますが、その中に、次のような条文があります。

 

第八百九十六条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。

 

ここで、「一切の権利」ではなく、「一切の権利義務」と規定されていることに注意が必要です。「義務」の中には、次のようなものが含まれます。

 

  • 住宅ローン
  • 銀行や消費者金融からの借金
  • 未払いの税金
  • 故人が事業を行っていた場合には、買掛金や社債

 

返済義務のあるお金のことを債務といいます(借金だけでなく税金やローンも含む)。故人の債務が返済されないまま残っていれば、その借金を「遺産」として受け取り、返済しなければならないのです。

 

さらに、故人が生前にだれかの借金の連帯保証人になっていると、連帯保証人の地位も相続の対象となります。もしも借り主が借金を返済できない状況になると、連帯保証人は、その借金の返済を引き受けなければなりません。故人が連帯保証人になっていた場合、その地位を相続すると、将来、他人の借金を肩代わりさせられるかもしれないというリスクを負うことになります。相続によって現金預金や不動産などのプラスの遺産を受け取れたとしても、それよりも大きな借金などのマイナスの遺産を受け取ることになれば、損をしてしまいます。

 

このようなとき、プラスの遺産もマイナスの遺産もまとめて、相続そのものを「なかったこと」にするのが相続放棄です。

 

相続放棄すると、相続人ではなかったことになる

相続放棄をすると、はじめから相続関係には入っていないことになる。

相続放棄をした人は、はじめから相続人ではなかったことになります。配偶者であれ、子供であれ、相続放棄すれば、相続手続き関係上は赤の他人と同じです。もちろん、戸籍上の家族関係が失われるわけではないので安心してください。

 

故人がどれだけ大きな借金を残していようと、相続放棄すれば、返済しなくてよくなります。プラスの遺産もすべて受け取れなくなりますが、それよりも多くのマイナスの遺産を帳消しにできるのです。ただし、マイナスの遺産は相続放棄して、プラスの遺産だけ受け取る・・・ということはできないので注意してください。

 

 

相続放棄のメリット

相続放棄のメリットは、何と言っても借金を放棄できることです。

相続放棄は、よく相談をいただく内容の一つです。借金がなくなると聞けば、メリットはありそうですよね。相続放棄の良い点を見てみましょう。

 

故人の借金を引き受ける必要がなくなる

相続放棄をすると故人の借金を返済する義務はなし

相続放棄すると、相続そのものが「なかったこと」になります。借金を残したまま亡くなったのだから、家族がかわりに返済する必要があるのでしょうか・・・と心配する必要はありません。配偶者であれ、子供であれ、相続さえしなければ、自分が返済する義務はないのです。

 

それでも、自分の家族の借金を返さないのは無責任なのではないか、と抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そのような心配は一切不要、それどころか、的外れな心配と言ってもよいほどです。そもそも、故人とあなたはDNAに繋がりがあるとはいえ独立した人格を持つ他人なので、借金を支払うべき道義的責任は全くありません。

 

法律上、家族のつながりと、借金を返済する義務はまったく別の問題です。

 

もしも相続放棄の手続きがなければ、故人の残した借金が、誰にも知られず、こっそりと借りていたお金であっても強制的に相続されることになります。借金の金額によっては、自分の知らないところで借りられたお金のために、突然生活をめちゃくちゃにされてしまうかもしれません。このような理不尽な事態を起こさないために作られた制度が、相続放棄なのです。

 

相続放棄は法律で認められた正式な手続きであり、故人の(プラス、マイナスの)財産を相続するかどうかは、自由に選択する権利があります。

 

 

相続放棄の手続きはポイントを押さえることが大事

相続放棄の手続きは簡単で、4ステップです。

相続放棄の手続きは、次の4ステップで完了します。手続きにかかる期間はおおよそ1か月程度です。

 

ステップ1:相続放棄申述書の作成

相続放棄申述書は、相続放棄するという意思表明のための書類です。様式は裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。

 

ステップ2:必要書類の準備

戸籍謄本などの書類を準備します。必要書類がそろったら、ステップ1の相続放棄申述書と合わせて、家庭裁判所に提出します。

 

ステップ3:裁判所からの照会への回答

家庭裁判所から、申請の内容について質問されます。相続放棄申述書に記載したのと同じように、質問に沿って必要事項を記入し、返送します。必要書類の提出などの手続きは、郵送でもできるため、裁判所に出向く必要はありません。

 

ステップ4:相続放棄申述受理証明書の取得

相続放棄が認められると、「相続放棄申述受理通知書」が送られてきます。この通知書を家庭裁判所に提示し、「相続放棄申述受理証明書」を発行してもらいます。通知書があれば、証明書は何通でも取得できるので、債権者から相続放棄の証明を求められたときなど、必要に応じて取得することができます。

 

相続放棄の手続きは、自分で行うこともできますし、不安があれば専門家(弁護士、司法書士)に依頼することも可能です。

 

なお、相続放棄は、相続人の個人的な意思のみによって行うことができます。他の相続人の同意を得なくても相続放棄できますし、ましてや、債権者の意思など気にする必要はありません。借金を支払うべき本人は亡くなってしまったのですから、債権者が損するだけで話はおしまいです。

 

【関連記事】相続放棄の手続きで受け取るべき書類「申述受理通知書」とは?

 

個別の借金の内容を気にしなくてよい

相続放棄をすれば、相続放棄した旨をいえば主張できる。

相続放棄すると、はじめから相続人ではなかったことになるため、相続関係とは無縁となり、相続するはずだった財産の中身は気にする必要がなくなります。故人が複数の借金を抱えていても、相続放棄の手続きを一回行えば、すべての相続を放棄できます。

 

相続放棄の手続きが終わった後で、それまで知らなかった借金が新たに見つかり、債権者が返済を求めてきたとしても、「相続放棄しました」とだけ回答すれば、返済する必要はありません。

 

相続放棄しても、生命保険などは受け取れる

相続放棄をしても生命保険金は受け取ることが可能です。

相続人が、故人にかけられていた生命保険の受取人になっていた場合、保険金は相続財産には含まれません。つまり、生命保険金を相続財産とは別に受け取ることができるのです。

 

どういうことかといいますと、生命保険金を受け取る権利は、生命保険契約に基づく受取人の固有の権利です。受取人の固有の権利とは、相続というお話とは全く関係ない権利ということです。したがって、相続放棄をしても、受取人として保険金を受け取ることができます。

 

相続放棄しても「死亡退職金」は受け取れる?

企業 退職金 相続

故人が企業などに勤務しており、退職前に亡くなった場合には、勤務先から「死亡退職金」が支払われることがあります。これは、死亡時の役職や勤続年数にもとづき、死亡時点で退職したものとみなして退職金を支払うものです。死亡退職金の支給方法は企業ごとに異なりますが、企業によっては、相続放棄をしても死亡退職金を受け取れる場合があります。

 

たとえば、社内規程に「従業員の遺族に死亡退職金を支給する」と定められていれば、退職金は企業から遺族に直接支払われるため、故人からの相続とはみなされません。このような場合は、相続放棄をしていても、死亡退職金を受け取ることができます。

 

相続放棄しても「遺族年金」は受け取れる?

遺族年金を受給する場合も、相続放棄をしても、問題なく年金を受け取れます。年金は、ご遺族に直接支払われるもので、故人の財産ではありません。したがって、相続放棄をしても、年金を受け取ることができます。

 

相続放棄しても「香典」は受け取れる?

通夜や葬儀での香典は、相続財産に含まれないため、受け取って構いません。逆に、出ていく費用(過大な葬儀費用など)は遺産から支払うと相続放棄ができなくなってしまう場合がありますので、下記の関連記事を参考にして下さい。

 

【関連記事】
・相続放棄しても生命保険の保険金は受け取れる

・遺産から葬儀費用を支払うと、相続放棄できない?

 

 

他人に知られることはない

相続放棄をしても戸籍や住民票にはのってこない。

自分自身が借金を返せなくなり、自己破産すると、官報に名前が掲載され、一定期間はローンを組むこともできなくなります。相続放棄によって、借金の相続を避けた場合も、自己破産と同じように不利益があるのではないかと心配している方もいるかもしれません。

 

しかし、相続放棄をしても、その事実が公開されることはありません。相続放棄は、「はじめから相続人ではなかったことになる」という手続きであって、そもそも借金を返済する義務がないわけですから、自己破産とはまったく事情が違うのです。また、相続放棄をしたという事実が、戸籍や住民票に記載されることもありません

 

自分から「相続放棄した」と話さない限り、周囲の人に相続放棄したことを知られることはないので、安心してください。

 

相続放棄のデメリット

相続放棄は撤回できない、マイナスの財産だけ放棄できない、家に住めなくなる可能性がある。

相続放棄は借金もなくすこともできて、いいことばかり…なのも事実です。しかし、デメリットももちろんあります。そのため、留意点として覚えておくべきこともあるので、覚えておきましょう。

 

すべての遺産に関する権利を失い、撤回できない

相続放棄をすると撤回ができないため、留意が必要である。

相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったことになります。したがって、プラスの遺産に関する権利も、すべて失われます。

 

「遺産のうち、この部分だけ放棄したい」ということは認められません。

 

さらに、相続放棄を撤回することはできません。相続放棄の手続きをした後で、不動産や株式、預金などの借金を上回る大きな資産が見つかったとしても、それを受け取ることはできなくなります。相続放棄を決める前に故人の財産をしっかり調査しましょう。

 

【関連記事】相続放棄を期限までに行うために知っておきたい5つのポイント

 

相続放棄によって、故人と同居していた家に住めなくなることがある

相続財産に家がある場合には、相続放棄をすることにより、相続できなくなることがある。

実家で親と同居していた場合、親が亡くなった後も、その家で暮らしつづけるつもりでいる人は多いでしょう。しかし、相続放棄によって、実家に住めなくなるケースがあるのです。

 

それは、実家が故人名義の持ち家だった場合です。持ち家を含む不動産は、当然、相続財産になるため、相続放棄をすると、家の所有権を引き継ぐことはできなくなります。

 

相続放棄した方がよいのはどのような場合か―①マイナスの遺産を相続したくない―

まずは借金がいくらあるか確認しましょう。

家族や親戚が亡くなり、相続することになると、この記事で紹介したメリット・デメリットを考えて、相続放棄するかどうかを決めることになります。それでは、どのような場合に、相続放棄するとよいのでしょうか。

 

借金などのマイナスの遺産が、明らかにプラスの遺産よりも大きい場合

借金の金額が明らかにプラスの財産より多い場合には、相続放棄すべきです。

故人が多額の借金を抱えたまま亡くなり、資産をすべて返済にあてても返しきれそうもない、というケースです。このケースでは、相続しても損をするだけなので、相続放棄を選択するべきです。

 

借金の金額を知るためには、遺品の中に、借用書や契約書がないか確認しましょう。借用書や契約書が見当たらない場合でも、信用情報機関(国の指定を受け、融資額や残高などの情報を管理する機関)の情報開示制度を利用し、借金の残高を調べることができます。

 

現在、個人の信用情報を管理する機関として、次の3つが存在します。

 

  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
  • シー・アイ・シー(CIC)
  • 日本信用情報機構(JICC

 

情報開示の手続きは、機関によって異なるので、それぞれの機関に確認しましょう。

 

マイナスの遺産がどれだけあるのか、わからない場合

借金の金額不明・相続放棄

故人が複数の金融機関から借金をしていたり、滞納を繰り返したりして、どれだけの借金があるのか把握しきれない、というケースです。このような場合は、借金を返済できると思って相続したものの、把握していなかった借金があとから見つかり、債権者に返済を求められるという可能性があります。

 

相続放棄の手続きには、相続が開始されたことを知ってから3ヶ月という期限がありますから、まだ把握していない借金があるかもしれない、という不安がある場合には、相続放棄をしてしまうのも一つの手です。ただし、相続放棄をすると、プラスの遺産もすべて受け取れなくなります。相続放棄は撤回できないため、あとになって、やはりプラスの遺産の方が多かったということがわかっても、相続できなくなってしまいます。

 

「借金があるかもしれないから」という理由で相続放棄をする場合は、「リスクを限定して不安をなくす」ということが最大の目的ですから、それによって結果的に損をすることになってもしかたがない、と納得したうえで相続放棄をする必要があります。

 

また、プラスの遺産とマイナスの遺産のどちらが大きいのかわからない場合には、「限定承認」を行うこともできます。限定承認とは、プラスの遺産を借金の返済にあて、残った遺産を相続する、というものです。マイナスの遺産の方が大きい、つまりプラスの遺産をすべて使っても借金を返済しきれなかった場合には、残ったマイナスの遺産を相続する必要はありません。(プラスの遺産が残れば相続でき、マイナスの遺産は相続しなくてよい、という一見お得な制度ですが、手続きが複雑で、実際にはあまり利用されていないようです。)

 

故人が、他人の借金の保証人になっていた場合

故人が連帯保証人になっていた場合には、相続放棄するのもひとつの手です。

お金を借りるとき、保証人や連帯保証人になってくれる人がいなければならないことがあります。これは、借り主が借金を返済できなくなったとき、本人にかわって借金を返済する人を決めておくというものです。お金を貸す金融機関などの立場から見ると、もしも借り主が借金を返済できなくなっても、かわりに返済できる人がいるということで、安心してお金を貸すことができるのです。

 

保証人となっている人が亡くなると、その保証人の地位は相続の対象になります。

 

借り主がきちんと借金を返済してくれれば、保証人がお金を出すことはありませんから、必ずしもマイナスの遺産というわけではありません。しかし、もしも借り主が借金を返済できなくなれば、相続によって新たに保証人となった人が、その借金を返済する義務を負うのです。

 

保証人の地位を相続するということは、相続の時点ではマイナスではなくても、将来マイナスになるかもしれないというリスクを受け取ることになります。保証する借金の金額にもよりますが、故人が保証人になっている場合には、相続放棄という手段も考慮した方がよいでしょう。

 

 

相続放棄した方がよいのはどのような場合か―②マイナスの遺産以外の理由―

相続放棄は借金以外の理由もある。

相続放棄は、借金を相続しないための制度である、というイメージを持っている方もいるかもしれません。たしかに、相続放棄をする理由として最も多いのは、借金が多いからというもののようです。

 

しかし、実は相続放棄は借金以外の理由でも行うことができ、実際にさまざまな理由で相続放棄をしている人がいます。ここでは、借金以外に相続放棄をする理由をいくつか紹介します。

 

遺産を特定の相続人にまとめて相続してもらいたい

相続放棄はたとえば長男だけに相続させたいときにも使われる。

故人が遺言書を書いていなければ、遺産は法律にしたがって相続されることになります。しかし、ご遺族の事情によっては、必ずしも均等に相続することを望んでいない場合もあります。たとえば、次のようなケースです。

  • 故人の妻が一人で暮らしていくことになり、生活のためにまとまった資金が必要である。
  • 故人と同居していた兄が一人で故人の介護をがんばってくれたので、兄に遺産を受け取ってもらいたい。
  • 自分は大企業に勤務し、子供もいないので生活に余裕がある。他の兄弟は子育てで大変そうなので、自分よりも甥や姪のために遺産を使ってほしい。

このようなケースでは、相続放棄ではなく、遺産分割協議を行って遺産の受け取り方を決めることもできます。しかし、遺産分割には相続人全員の同意が必要です。相続人全員で遺産分割の協議という話し合いを行うことは手間も時間もかかります。

 

自分は一切相続しなくてもよい、遺産を受け取ってもらいたい人が決まっている、という場合には、相続放棄によって、はじめから相続人ではなかったことにしてしまうのが、手っ取り早い方法です。

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遺産相続の争い(争続)に関わりたくない

遺産争いに関わりたくない。

相続放棄は、他の相続人の同意がなくてもできるという利点があるため、次のような理由で相続放棄をするケースもあります。

  • 相続人の数が多く、遺産分割の協議に時間がかかる。ややこしい話には関わりたくない。
  • 少しばかりの遺産のために、精神的・時間的なコストをかけて親族と争いたくない。

「争族」という言葉も生まれるほど、相続はトラブルのもとになるものです。

 

親戚づきあいをあまりしていない人にとっては、たいして親しくもない親族と何度も会い、遺産分割の協議をすること自体が、大きな負担に感じられることもあるでしょう。親族との関係が良好であっても、人間はお金を目の前にすると変わります。お金の話はいったんこじれると、後々まで感情的なしこりが残ってしまうものです。

 

そのため、遺産分割にあれこれと気を使うくらいならば、相続放棄をして面倒事を減らしたいという方もいるようです。

 

不動産などを相続しても管理できない

不動産の管理が面倒な場合には、相続放棄するのもひとつのてです。

相続財産には、現金預金以外にも、様々なものが含まれます。場合によっては、相続しても管理しきれず、かえって負担になってしまうものもあります。たとえば、次のようなケースが考えられます。

  • 実家を離れて何年も経ったころに親が亡くなり、自宅を相続することになったが、今後も実家に住む見込みはない。
  • 古い家で、交通の便もよくないため、買い手が見つかるかわからない。
  • 空き地になっている物件を相続したが、使い道がない。

 

条件次第では、相続してすぐに売却してしまうということも可能かもしれません。しかし、地域によっては買い手がなかなかつかず、いつまでも処分できないということもありますし、たいした金額にもならない土地の売却のために、相当の手間をかけることにもなりかねません。

 

さらに、家に住んでいなくても、固定資産税はかかります。買い手が見つからなければ、利用価値のない不動産のために、税金を払い続けることになります。

 

故人が複数の物件を所有していたり、空き地や、場合によっては山なども含まれている場合もあります。遠方に住んでいると、空き地や山の管理が行き届かないため、荒れ地になってしまい、近隣住民とのトラブルに発展する可能性があります。

 

相続したことで負担になってしまうような財産は、名目上はプラスの遺産であっても、ご本人にとっては実質的にマイナス同然です。このような場合、相続放棄をすることで、負担を減らすことができます。

 

相続放棄をする際の注意点

相続放棄の注意点

相続放棄は、プラスの遺産もマイナスの遺産もまとめて放棄する手続きです。相続放棄をするさいには押さえておくべき注意点がありますので、ぜひ気を付けれるように身に着けておきましょう。

 

【関連記事】相続放棄の際に注意すべき6つのポイント

 

相続放棄の手続きには期限がある

相続放棄の注意点

相続放棄の手続きを行う期限は、民法に、以下のように定められています。

 

第九百十五条
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。

 

この民法の書き方は少しわかりにくいですが、簡単に言うと、「自分が相続人であることを知ってから3ヶ月以内」に、相続放棄をしなければならない、ということです。「自分が相続人であることを知ってから3ヶ月」というのは、通常であれば、もちろん故人が亡くなったことを知ってから3ヶ月ということです。

 

場合によっては、故人が亡くなってから3ヶ月以上が過ぎていても、相続放棄できることがあります。

 

  • 相続順位が上の相続人(故人の配偶者や子供)が全員、相続放棄をしたため、自分が新たに相続人になった。
  • 何年も音信不通だった親族が、半年前に亡くなっていたことがわかった。

 

このようなケースでは、自分が新たに相続人になった時から3ヶ月、あるいは、故人が亡くなっていたことがわかってから3ヶ月以内に、相続放棄の手続きを行えばよいことになります。期限内に相続放棄の手続きを行わなければ、自動的に相続したことになるため、注意してください。

 

期限が過ぎたら認められないケース

相続放棄 認められない

いくら「自分が相続人であることを知ってから」といっても、次のような主張は認められません。

 

  • 相続放棄という制度があることを知らなかった。制度の存在を知ってから3ヶ月以内に手続きすれば、相続放棄できるだろう。
  • 相続放棄に期限があるなんて知らなかった。期限が決まっていると知ってから3ヶ月以内なら大丈夫だろう。
  • 亡くなったのは知っていたが、自分が相続人になるとは思っていなかった。自分が相続人だと気づいてから3ヶ月以内に手続きすればよいだろう。

 

このように、「法律で決まっている内容を知らなかった」というだけでは、期限を過ぎて相続放棄をする理由にはなりません。相続に限らず、法律の運用は、その社会で暮らす人であれば法律の内容を知っているということが前提とされているからです。

 

【関連記事】要注意!相続放棄の手続きには期限がある

 

故人の財産に手をつけると、相続放棄できなくなる

相続放棄するなら、勝手に財産に手を付けてはだめ

故人の財産を使った時点で、相続を承認したと見なされ、相続放棄ができなくなります。故人の財産を使うということは、「その財産は自分のものである」と認めているのと同じだからです。

 

相続放棄は、「はじめから相続人ではなかったことになる」という制度です。つまり、相続放棄をすると、故人の財産は、赤の他人の財産と同じになるのです。したがって、「赤の他人に対してやってはいけないこと」は、故人に対してもやってはいけない、というのが基本的な考え方になります。

 

相続放棄ができなくなる行為には、次のようなものがあります。

 

  • 故人の預金を引き出し、生活費にあてた。
  • 故人名義の預金口座を、自分の名義に書き換えた。
  • 電話の契約を、故人名義から自分の名義に書き換えた。
  • 故人が所有していた自動車や株券の名義を、自分の名義に書き換えた。
  • 故人が知人にお金を貸していたので、借り主に連絡して、お金を返済してもらった。
  • 故人が借りていた借金の一部を返済した。

 

とくに、例の最後に挙げた「借金の返済」には注意が必要です。借金の取り立てに応じた時点で、故人の財産を、借金も含めて自分が相続すると認めたと見なされるのです。自分は何の得もしていないのに、相続放棄ができなくなってしまいます。金融業者などから「故人の代わりに少しだけでも」などと返済を求められても安易に切応じずに、相続放棄するかどうか判断してから対応しましょう。

 

ただし、財産にほんの少しでも手をつけたら、絶対に相続放棄できなくなる、というわけではありません。次のようなケースでは、相続放棄が認められた事例があります。

 

  • 故人の葬儀を行う際、参列者から頂いた香典では賄いきれず、不足分を故人の預金から支払った。
  • 形見分けによって、故人の着ていた古着を受け取った。

 

このように、葬儀など社会儀礼上の必要な出費や、経済的価値がほとんどない遺品を受け取る程度ならば、「相続を承認した」とは見なされないようです。ただし、どのような行為ならば問題ないかは、ケースバイケースです。上に挙げた例でも、常識的な範囲を超えて盛大な葬儀を行ったり、形見分けと称して美術品や骨董品を受け取ったりすれば、相続放棄ができなくなる可能性があります。

 

相続放棄をすると、他の人が新たに相続人になる場合がある

ほかの人が相続人になる。

相続の優先順位は、法律で次のように定められています。

 

  • 故人の配偶者、故人の子(子がいない場合は孫)
  • 故人の父母(父母がいない場合は祖父母)
  • 故人の兄弟姉妹(兄弟姉妹がいない場合はその子供=故人の甥、姪)

 

順位が上の相続人が1人でもいると、それよりも下の順位の人は相続人になれません。つまり、故人の配偶者か子供が1人でもいれば、故人の両親や兄弟姉妹は相続人にならないのです。

 

ところが、相続人全員が相続放棄をすると、下の順位の人が繰り上がって相続人になります。故人の配偶者と子供が全員、相続放棄をすると、故人の両親が新たに相続人になるということです。

 

ここで、借金の相続を避けるために相続放棄をしたとき、新たに相続人になる人に対して「自分たちは相続放棄します」ということを伝えていないと、どうなるでしょうか。故人の両親や兄弟姉妹にとっては、自分たちが相続人になるとは思ってもいなかったのに、ある日突然、借金の督促状が送られてくるということになります。

 

このような状態になると、親族との関係は非常に悪くなり、今後の付き合いが難しくなるかもしれません。法律上は、相続放棄は個人の判断のみによって行うことができ、親族の意思を考慮する必要はありません。しかし、無用なトラブルを避けるためにも、相続放棄をするときは、新たに相続人になる親族に、きちんと連絡しておくとよいでしょう。

 

なお、上に順位を示した人(故人の兄弟姉妹まで)が全員、相続放棄をすれば、それ以上は新たに相続人になる人はいません。

 

 

相続放棄の事例集

相続放棄の事例集:相続放棄は借金の存在を知ってから3か月

相続放棄の具体例には、どういったものがあるのでしょうか。いくつかのケースを用意いたしましたので、見ていきましょう。

 

ケース1:家族も知らなかった、父の借金

岩田正太郎さん(仮名)は2年前に父親を亡くしている。父親には、少しばかりの預金のほかには、たいした遺産も借金もなかったため、正太郎さんは預金を受け取り、ごく普通の相続をしたと思っていた。

 

ところが先月、消費者金融業者から父親宛てに返済の督促状が届いた。父親は家族に黙って、消費者金融から金を借りていたのだ。父親の死後は当然、返済が滞っていたため、利息が膨らみ、相続で受け取った預金ではとても返済しきれない金額になっている。

 

こんな借金があると知っていれば、絶対に相続放棄をしていたのに、自分が借金を背負わなければならないのかと、正太郎さんは納得できない思いでいる。

 

相続放棄の手続きは、自分が相続人であると知ったときから3ヶ月以内に行わなければいけません。しかし、正太郎さんのケースのように、相続人が知り得ないマイナスの遺産がある場合には、「3ヶ月以内」という原則にこだわると、相続人に不当な不利益をもたらす可能性があります。
そこで、「相続の時点で、マイナスの遺産があるとは知っておらず、それを知らなかったことに相当の理由がある場合」には、3ヶ月を過ぎていても相続放棄が認められることがあります。この場合、借金の存在を知ってから3ヶ月以内に手続きをすれば、相続放棄をすることが可能です。

 

どのようなときに「相当の理由がある場合」と認められるかはケースバイケースですが、たとえば次のような場合が考えられます。

 

  • 故人の生前の暮らしぶりは、とくに貧しいとも、羽振りがよいとも言えないもので、その様子から借金があると推測することは難しかった。
  • 故人と疎遠になっていて、普段の生活を詳しく知れる状況ではなかった。

 

このような事情があれば、それを裁判所に説明し、正当性を判断してもらうことになります。

 

いずれにせよ、借金の存在を知ってから3ヶ月以内に手続きをしなければいけませんから、まずは手続きを開始することが重要です。

 

 

ケース2:相続財産から葬儀費用を支払った場合

川田祥子さん(仮名)の父親は多額の借金を残して亡くなった。とても返済できる金額ではないので、相続放棄をするつもりでいたが、せめて人並みに葬儀を営んであげたいと考えている。

葬儀会社への支払いのためには、父親の預金を引き出さなければ足りないのだが、預金に手をつけてしまうと、相続放棄ができなくなるのではないかと心配している。

 

相続放棄の手続き前に、遺産の一部を使ってしまうと、相続を承認したと見なされ、原則として相続放棄が認められなくなります。

 

しかし、ほんの少しでも財産に手をつけてはいけない、というわけではありません。財産の使い道によっては、相続を承認したとは見なされない場合もあります。

 

故人の葬儀費用も、そのような例外の一つとして認められている

相続 葬儀費用

身分相応の、一般的に考えて当然営まれる程度の葬儀であれば、そのための費用を故人の財産から支払っても、相続の承認にはあたりません。この判断には、次のような理由があるとされています。

 

人が亡くなったときには葬儀を行うのが通常であり、社会的に重要な儀式である。

人が亡くなる時期を予測することは難しく、手元に葬儀費用がないのは仕方がない。

一般的に、葬儀を行うには、相当の費用がかかるものである。

 

したがって、身分相応の葬儀である限り、故人の財産から葬儀費用を支払っても、相続放棄は認められるでしょう。ただし、故人の財産から葬儀費用を支払えるのは、「身分相応」といえる最小限の範囲までです。常識的な範囲を超えるような、盛大な葬儀を営んだと見なされれば、相続放棄は認められなくなります。

 

また、故人の財産を墓石や仏壇の購入にあてた場合はどうでしょうか。このようなケースについては、裁判でもはっきりとした結論は示されておらず、ケースバイケースになってしまいます。身分相応の、さほど高価でない仏壇や墓石であれば、相続放棄が認められる可能性があります。

 

とはいえ、葬儀費用ほどはっきりとした判断は示されていないため、故人の財産で仏壇や墓石の購入することは、控えた方が無難でしょう。

 

ケース3:相続放棄すれば、アパートの修繕費も支払う必要なし?

上島康太さん(仮名)は現在、高校1年生。小学生のころに両親が離婚し、母親と祖母と3人でアパート暮らしだった。母親は病気がちで、長時間働くことは難しく、最近は生活保護も受給しながらの生活だった。

その母親が先月、病気のため亡くなり、康太さんが遺産を相続することになった。康太さんと祖母は、母親の名義で借りていたアパートから、もっと家賃の安いアパートに引っ越し、祖母と2人で暮らそうと考えていた。

ところが、今まで長く暮らしていたアパートは部屋の傷みも激しく、退居時に修繕費を支払わなければならないと言われてしまった。生活保護を受けるような状況では、たいした遺産があるわけもなく、母親名義の預金をすべて引き出しても足りない金額だ。康太さんは、祖母といっしょに相続放棄の手続きをして、修繕費を支払わなくてもよいようにできないかと考えている。

 

このケースでは、康太さんは、相続放棄をすれば修繕費を支払う必要はなくなります。アパートの修繕費は、部屋の借り主である母親の債務(=マイナスの遺産)ですから、相続放棄をすれば、康太さんに支払いの義務はないのです。

 

ただし、母親が亡くなってから引っ越すまでの間、アパートに住んでいた場合には、家賃の日割り分を請求される可能性があります。母親が亡くなった後に発生した家賃は、相続とは無関係ですから、支払わなければいけません。

 

ケース4:交通事故の加害者が亡くなったときの損害賠償

石川香さんの夫、篤志さん(ともに仮名)は、交通事故で亡くなった。

悲しみに暮れる香さんだったが、警察による捜査の結果、篤志さんに事故の責任があるとの結論に至り、被害者側から損害賠償を求められることになった。しかし、篤志さんは任意保険にも、生命保険にも加入していなかったため、このままでは、香さんは多額の借金を背負うことになる。

 

交通事故によって加害者が亡くなった場合、保険金によって損害賠償を支払いきれなければ、相続人が賠償責任を負うことになります。損害賠償は借金と同じ「債務」ですから、マイナスの遺産として相続されるのです。

 

このようなケースでは、相続放棄をすれば、損害賠償を支払う必要はなくなります。

 

身内が起こした事故で、損害賠償を支払わずに済ませるのは後ろめたく感じられるかもしれません。しかし、借金の場合と同じように、故人の作った負債のせいで、相続人に過剰な負担を押し付けないために相続放棄という手続きがあるのです。相続放棄は、相続人の人生を守るための正当な権利であると考えて、冷静に対応しましょう。

 

受け取る遺産と、支払う賠償金を比較して、相続放棄するかどうかを決めることになりますが、賠償金額がすぐに確定するとは限りません。賠償金額が確定していなくても、相続放棄の期限は3ヶ月以内です。相続放棄するかどうか迷っているうちに、手続きの期限が過ぎてしまわないように注意してください。この場合、交通事故の相手との過失割合や被害の程度などを元に、弁護士など専門家とともに賠償金額の相場を調べて相続放棄の判断をするのがよいでしょう。

 

自動車を運転する人は、任意保険に加入していないと、篤志さんのケースのように家族に大きな迷惑をかけてしまう場合があります。自分ひとりの責任では済まない事故もあるということを考えて、保険に加入するかどうかを決める必要があります。

 

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相続放棄のメリット・デメリット

いかがだったでしょうか。相続放棄とは何か、相続放棄のメリットとデメリット、どのような場合に相続放棄をすればよいか、そして相続放棄をする際の注意点について説明してきました。

 

相続放棄なんて、借金を抱えた一部の人の話だと思われるかもしれません。

 

しかし、「実家を離れて都会で暮らしているのに、買い手もつかないような田舎の土地を相続してしまった」、「ほとんど付き合いもなかった親族が亡くなり、借金の存在を初めて知った」、「親が知人の連帯保証人になっていた」といった出来事は、誰にとっても他人事とはいえないものです。

 

こういったマイナスの遺産は、親や兄弟姉妹が生きているうちはあまり意識することがなく、亡くなって初めて問題に気づくことも珍しくありません。問題に気づくのが早かろうと遅かろうと、手続きの期限は法律で決まっています。相続することになってから慌てて調べていると、判断を誤って損をしてしまうかもしれません。ご両親やご兄弟が健在なうちに、相続についてきちんと話し合っておくことをおすすめします。

 

そして、万一相続放棄を検討しなければならない状況になったら、早めに弁護士などの専門家に相談し、必要な手続きを進めていきましょう。

 

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執筆者: やさしい相続編集部