相続財産を知っておかないと相続トラブルの危険が・・・

相続財産の範囲

 

人が亡くなると、つまり相続が開始されると、被相続人(故人)の財産をその相続人に引き継ぐことになります。この財産を「相続財産(そうぞくざいさん)」といいます。ここで問題となるのは、相続できる財産と相続できない財産があることです。また、相続税が課税される財産と課税されない財産があるということです。では、どのような財産を相続できるのでしょうか?また、どのような財産に相続税が課税されるのでしょうか?

 

 

相続財産の範囲を知っておくべき理由

そもそも相続財産とは何でしょうか?「預金や土地でしょ?」と思われた方が多いでしょうが、相続の対象となる財産はそれだけではありません。実は、相続財産として相続人が引き継ぐ財産はするのは、預金や土地などといったプラスの財産だけではありません。また、被相続人の財産のすべてを相続人が引き継げるわけでもありません。このような相続財産の範囲、つまり「どの財産が相続財産なのか?」について知らないと、いざ相続がはじまったときに思わぬ相続トラブルが起きてしまうかもしれません。そのため、相続財産の範囲はしっかりと知っておく必要があります。

 

 

相続税が課税される財産を知っておくべき理由

相続するときに忘れてはならないのが相続税の問題です。実は、相続財産のすべてに相続税が課税されるわけではありません。反対に、相続財産でないにもかかわらず相続税が課税されてしまう財産もあるのです。この範囲を知らないと、相続税の納税額を間違えてしまい、修正申告や延滞税などのさらなる手続きが必要となってしまうおそれがあります。そのため、どの財産が課税されるか、あるいはどの財産が課税されないかという知識は蓄えておいて損はないといえます。

 

 

相続の重要ポイント、相続財産の調査方法を把握しましょう

相続財産の範囲や相続税が課税される財産を理解していても、実際に「相続財産はどこにどれだけあるのか」を調べる方法を知らなければ、相続に関する手続を進めることができません。そのため、相続財産の調査方法も知っておく必要があります。

 

相続財産の理解=相続対策の出発点

 

相続対策を行うにあたって相続財産について知っておくことは必要不可欠です。ここでは、そんな相続財産について、くわしく解説していきます。

 

 

相続財産にはどんなものがある?

相続財産にはどのようなものがあるか

 

まずはじめに、相続財産とは何か、相続財産の範囲について解説していきます。

 

そもそも相続財産とは?

「相続財産」とは、相続の対象となる財産をいいます。相続がはじまると、亡くなった方(被相続人)の財産を相続人が引き継ぐことになります。しかし、相続人は被相続人の財産のすべてを引き継ぐわけではありません。したがって、相続財産とは、被相続人の財産のうち相続人に引き継がれるものを指すことになります。

 

注:「相続財産」という言葉は、相続人が被相続人から承継する財産のうち遺産分割の対象となるもののみを指して用いられることもありますが、ここでは、遺産分割の対象とならないものも含めて、広く「相続財産」と呼ぶことにします。

 

 

相続財産に含まれるもの

ここまでは相続財産のあらましについて解説してきました。では、相続の対象となり相続人に引き継がれる相続財産とは具体的にはどのようなものなのでしょうか?

 

相続人はすべての財産を相続するのが原則

相続は、被相続人のあらゆる財産を相続人に引き継がせるものです(これを包括承継といいます)。したがって、原則として、被相続人が亡くなった時点で持っていたあらゆる財産が相続財産にあたり、相続人に引き継がれます。

 

 

相続財産は形のある物だけではない

「財産」というと、土地や建物、自動車や金銭といった、形のある物をイメージされるかもしれません。しかし、相続により相続人が引き継ぐ財産は形のある物に限られません。つまり、債権や契約者としての地位などのような形のない財産も、相続の対象として相続人が引き継ぐことになるのです。たとえば、AさんがBさんにお金を貸したまま、Aさんはその返済を受ける前に亡くなったケースを考えてみましょう。この場合、Aさんは生前、Bさんに対し、「お金を返せ!」と主張できる債権(これを貸金返還請求権といいます)を持っていたことになります。そして、このような債権もAさんの財産として相続の対象となるのです。したがって、Aさんの子のCさんは相続人として、の債権を相続し、Bさんに対して貸したお金の返還を求めることができるのです。

 

 

相続財産はプラスの財産だけではない

また、「財産」というとプラスの価値のあるものをイメージされるかもしれません。しかし、相続の対象となる財産には、たとえば被相続人の借金などのようなマイナスの財産も含まれるのです。たとえば、AさんがBさんからお金を借りて、その返済をする前に亡くなったケースを考えてみましょう。この場合、Aさんは生前にBさんに対して「借りたお金を返さなければならない」という債務(これを貸金返還義務といいます)を負っていたことになります。そして、このような債務もAさんの財産として相続の対象となるのです。したがって、Aさんの子Cさんは相続人としてAさんの債務を相続し、Bさんに対しお金を返済しなければならないことになります。

 

 

マイナスの相続財産がある場合、どうすればいい?

たとえば相続財産が次のようなケースを考えてみましょう。

 

  • 預貯金(プラスの財産) 1,000万円
  • 借金(マイナスの財産) 3,000万円

 

この場合、借金3,000万円(マイナスの財産)が預貯金1,000万円(プラスの財産)を上回っていますね。この相続財産を相続人がそのまま引き継ぐと、1,000万円の預貯金を取得できると同時に3,000万円の借金を返済する義務を負うこととなり、預貯金1,000万円をすべて借金の返済に充てたとしても借金が2,000万円も手元に残ってしまいます。相続人は残った借金2,000万円の返済は自分の財産で行わなければなりません。つまり、相続人が損をしてしまうわけです。身に覚えのない借金を相続人が返済しなければならないなんて、どう考えてもおかしいですよね?そこで、この問題を解決するための2つの制度が用意されています。それが相続放棄限定承認です。

 

 

〈借金を相続しない手段その1〉相続放棄とは?

まず考えられる手段は相続放棄(そうぞくほうき)です。相続放棄とは、相続人が家庭裁判所に申述することにより、はじめから相続人でなかったことになるという制度です。相続放棄を行うと、その相続人は相続人でなかったことになるので、マイナスの財産を引き継ぐことは当然ありませんね。ただし、相続の放棄を行うとプラスの財産を引き継ぐこともできなくなってしまうためご注意ください。

 

 

〈借金を相続しない手段その2〉限定承認とは?

相続放棄の次に考えられるのが、限定承認(げんていしょうにん)です。限定承認とは、被相続人の財産を引き継ぐものの被相続人から引き継いだ財産の限度でのみ責任を負うという制度です。たとえば、Aさんが多額の債務と土地建物を残して亡くなった場合、Aさんの相続人Bは限定承認をすればAさんの多額の債務を承継することになります。しかし、この債務を返済できなかったとしても強制執行の対象となるのはBさんがAさんから受け継いだ土地建物のみで、それ以外のBさんの財産は強制執行の対象になりません。

 

 

相続の放棄・限定承認の注意点

このように、相続放棄をすれば相続人がマイナスの財産を肩代わりして返済する必要がなくなります。また、限定承認をすれば相続財産以外の財産を犠牲にしてまで返済義務を負う必要がなくなります。ここでご注意いただきたいのは、相続放棄や限定承認には期間制限があるという点です。すなわち、相続人は相続の開始があったことを知った時から3か月以内に相続放棄または限定承認をしなければなりません。「相続の開始」とは被相続人が死亡することを指します。したがって、被相続人が死亡したことを知ってから3か月以内に相続の放棄・限定承認をしなかった場合、相続人は相続を限定なく承認したものとみなされ(これを法定単純承認といいます)、全体としてマイナスの財産を引き継いでしまい、かつ、相続財産以外の財産も強制執行の対象となってしまいますのでご注意ください。

 

 

例外的に相続されない財産

このように、被相続人の財産は形のあるもの、形のないもの、プラスの財産、マイナスの財産、これらすべてが相続財産として相続人に引き継がれるのが原則です。一方で、被相続人の財産でありながら、例外的に相続の対象とならないものがあります。具体的には、①一身専属的権利義務(いっしんせんぞくてきけんりぎむ)②祭祀に関する権利③生命保険金④死亡退職金の4つが挙げられます。ここでは、これら相続の対象にならない財産について解説していきます。

 

 

〈相続の対象にならない財産その1〉一身専属的権利義務とは?

被相続人の有していた債権・債務は、相続財産として相続人に承継されるのが原則です。しかし、債権・債務のなかには、例外的に被相続人のみに帰属し、相続によっても相続人に引き継がれることのないものがあります。このような債権・債務を「一身専属的権利」といいます。

 

 

一身専属的債権・債務として挙げられるのは次のようなものです。

  • 使用貸借契約における貸主の権利義務
  • 雇用契約における被用者の権利義務
  • 委任契約における委任者・受任者の権利義務
  • 組合契約における権利義務等の一部の契約上の地位に基づく権利義務

 

これらの契約は、契約当事者である被相続人の独自の能力などに着目したものであり、相続人に引き継ぐことが不適切であることから、一身専属的権利義務として相続の対象ではないのです。同じ理由から、たとえば芸術作品を作る義務のように、その人が履行しなければ意味をなさない義務も一身専属的義務と考えられています。

 

 

〈一身専属的債権・債務の例その1〉ゴルフ会員権

預託金会員制のゴルフ会員権については、複雑な考え方が必要となります。まず、預託金会員制のゴルフ会員権は「ゴルフクラブの会員資格」と「ゴルフクラブ会員契約上の地位」という2つの要素から成り立つと考えられています。

 

預託金会員制のゴルフ会員権=〈要素1〉ゴルフクラブの会員資格 + 〈要素2〉ゴルフクラブ会員契約上の地位

 

 

〈要素1〉ゴルフクラブの会員資格

ゴルフクラブの会員資格は一身専属的権利として、相続財産に含まれないと考えられています。つまり、ゴルフクラブの会員資格は相続されません。

 

 

〈要素2〉ゴルフクラブ会員契約上の地位

これに対して、ゴルフクラブ会員契約上の地位については、それぞれの契約の内容により異なると考えられています。すなわち、契約に特に規定が設けられていない場合、契約上の地位は一身専属的権利にあたらず、相続財産として相続されることになります。他方、契約上の地位が相続されない旨の規定がある場合には、一身専属的権利にあたり、相続財産にあたらないと考えられています。つまり、ゴルフクラブ会員契約上の地位が相続の対象となるかは契約の内容次第です。

 

 

〈一身専属的債権・債務の例その2〉身元保証契約・継続的信用保証契約

身元保証契約に基づく権利義務や、限度額及び期間の定めのない継続的信用保証契約に基づく権利義務は、一身専属的権利義務であると考えられています。これらの契約は個人的な信頼関係に基づくものであることや、内容が不確定で相続人に予想外の負担を負わせることになりかねないことから、相続の対象とならないと考えられています。

 

 

〈一身専属的債権・債務の例その3〉扶養請求権・生活保護受給権・親権

扶養請求権・生活保護受給請求権・親権といった被相続人に特有の事情に基づく権利は一身専属的権利にあたると考えられています。したがって、これらの権利は相続することができません。

 

 

〈相続の対象にならない財産その2〉祭祀に関する権利

祭祀に関する権利とは、系譜・祭具・墳墓の所有権などをいいます。このような「祭祀財産(さいしざいさん)」は祖先崇拝のために必要であるという特殊な財産です。そこで、法律ではこのような祭祀財産は相続財産に含めず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が引き継ぐものとしています。たとえば、先祖代々の土地を相続した相続人が、その土地にあるお墓の世話も引き受けるといった場合などですね。ただし、被相続人が祭祀主催者を指定した場合には例外的に、指定された者が祭祀財産を引き継ぐことになります。このような指定がなく、また慣習が明らかでない場合には、祭祀財産を引き継ぐ者は家庭裁判所が定めることになります。

 

 

〈祭祀に関する権利の例〉遺骸・遺骨

被相続人の遺骸・遺骨に関する権利は相続財産なのでしょうか?この点については、そもそも被相続人の遺骸・遺骨は被相続人の所有物ではなく、相続財産に含まれず、死者の祭祀供養をつかさどる者に帰属すると考えられています。

 

 

〈相続の対象にならない財産その3〉生命保険金

相続は被相続人の死亡により開始されます。そして、被相続人の死亡をきっかけとして問題となるのが生命保険金ですが、これらは必ずしも相続財産として相続の対象となるとは限りません。生命保険金が相続財産に含まれるか否かは、契約上の保険金の受取人が誰であるかによって異なります。

 

 

保険金の受取人が相続人の場合

保険金の受取人が相続人である場合、保険金は相続財産にあたらず、遺産分割の対象になりません。なぜなら、この場合、保険金は被相続人の死亡の時点で相続人に帰属していた財産ではなく、契約上の受取人である相続人の固有の財産であるからです。

 

 

保険金の受取人が被相続人の場合

生命保険金の受取人が被相続人である場合、保険金は相続財産に含まれ、遺産分割の対象になると考えられています。

 

 

〈相続の対象にならない財産その4〉死亡退職金

死亡退職金は「賃金の後払い」と「遺族の生活保障」という異なる性質を併せもっています。死亡退職金が相続財産に含まれるか否かはこのような死亡退職金の性質を考慮して判断されるため、それぞれの事案によって異なります。判例では、死亡退職金の支給規定が定められている場合に、死亡退職金を受給する権利は受給者の固有の権利であり相続財産に含まれないとしています。

 

 

相続財産に含まれるとどうなるの?

ここまでは相続財産の範囲について解説してきました。では次に、相続財産にあたる財産はどのように相続人に引き継がれるのかについて、以下で詳しく説明します。

 

 

相続人が1人である場合は問題ない

相続は、被相続人の死亡した時点で被相続人に帰属していたすべての財産を相続人に引き継がせるものです。したがって、相続人が1人である場合、すべての相続財産はそのまま被相続人に引き継がれます。すなわち、特に手続を必要とせず、法律上、相続財産が承継されることになります。

 

 

相続人が複数人いる場合に問題となる

これに対して、相続人が複数人いる場合(これを共同相続といいます)には、相続財産は次のようにして相続人に引き継がれることになります。

 

 

まずは相続人の共有となるのが原則

相続人が複数人いる場合、相続財産は相続人全員が共有している状態になるのが原則です。これを「遺産共有(いさんきょうゆう)」といいます。この共有状態を解消し、個々の財産をそれぞれの相続人に分けるためには「遺産分割(いさんぶんかつ)」という手続きが必要です。

 

 

遺言書で指定がある場合は、遺言書にしたがう

被相続人は、遺言書で遺産分割の方法を指定することができます。このような遺産分割方法を指定する遺言書がある場合、それにしたがって遺産分割が行われることになります。たとえば、「土地をAさんに相続させる」という内容の遺言書があった場合、被相続人の死亡により、この土地の所有権はAさんに承継されることになります。

 

 

遺言書で指定がない場合は、相続人同士で話し合う

遺言書による遺産分割方法の指定がない場合、または遺言書による遺産分割方法の指定がさらに協議を要する内容である場合、相続人全員の協議により遺産分割をすることができます。このような協議を「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」といいます。遺産分割協議には相続人全員が参加することが必要です。もっとも、必ずしも相続人全員が一堂に会することが必要なわけではなく、電話などの手段を用いて全員の承諾を得る形で行うことも可能です。もしも相続人の一部が参加しないまま遺産分割協議が行われた場合、その遺産分割協議は法律上無効になってしまうのでご注意ください。

 

 

話し合いがまとまらなければ裁判所の力を借りる

相続人全員の納得が得られず遺産分割協議が成立しない場合、家庭裁判所に申し立てて家庭裁判所に遺産分割をやってもらうことができます。家庭裁判所に申し立てることができる手続きには、調停と審判とがあります。調停による遺産分割を「遺産分割調停(いさんぶんかつちょうてい)」、審判による分割を「遺産分割審判(いさんぶんかつしんぱん)」といいます。通常、まずは遺産分割調停を裁判所に申し立てます。この遺産分割調停はあくまで家庭裁判所が妥当と考えられる遺産分割案を提示するだけで、最終的には相続人全員の合意が必要となるので、遺産分割調停が不成立となることも考えられます。調停が不成立となった場合、家事審判官(裁判官)が遺産分割の審判を下し、遺産分割がなされることになります。調停と異なり、審判には法的な強制力がありますので、相続人はこの審判の結果を受け入れることになります。

 

 

遺産分割が不要な相続財産もある

相続人が複数いる共同相続の場合でも、例外的に遺産分割をわざわざ行わなくても当然に相続財産が分割されてそれぞれの相続人に帰属するケースがあります。それは、相続財産が分割債権・分割債務である場合です。

 

 

遺産分割が不要な分割債権・分割債務とは?

分割債権とは、たとえば「金銭の支払を要求することができるという権利」を内容とする金銭債権のように、債権の目的の性質上不可分でない債権をいいます。反対に分割債務とは、「金銭を支払わなければならないという義務」を内容とする金銭債務のように、債務の目的の性質上不可分でない債務をいいます。これらの債権や債務は、遺産分割の手続きを行わなくとも、各相続人の相続分に応じて自動的に分割されます。たとえば、AさんがBさんに対する1,000万円の金銭債権をのこして亡くなった場合、Aさんの配偶者CさんとAさんの子どもDさんは、遺産分割協議などのを行わずとも、それぞれBさんに対する500万円の金銭債権を相続によりそれぞれ承継することができます。

 

 

現金は遺産分割が必要?

ご注意いただきたいのは、金銭債権とは異なり金銭自体(現金)は相続人全員による遺産共有状態となり、遺産分割の対象になるという点です。したがって、被相続人の所有していた現金を相続人の1人が管理している場合であっても、他の相続人は遺産分割の前に相続分に応じた額の支払いを求めることはできないことになります。

 

 

取り扱いが変更された預金債権には注意が必要

さらに、銀行口座に預け入れてある預貯金などの預金債権の取り扱いにも注意が必要です。この取り扱いは2016年(平成28年)の判例により変更されました。預金債権は金銭債権ですが、相続の開始により当然に分割されるのではなく、遺産分割協議の対象となるというのが最新の判例の立場です。銀行の実務としても、遺産分割前の各相続人からの預金の払戻請求には応じないこととされています。

 

 

相続財産と相続税

相続財産と相続税

 

ここまでは相続の対象となる相続財産について説明してきました。

ここからは、相続税の課税対象となる財産の範囲について解説していきます。相続の対象となり被相続人から相続人に承継される相続財産と、相続税の課税対象になる財産とでは異なる点がありますので、その点を中心に解説していきます。それでは見ていきましょう!

 

 

遺贈・死因贈与された財産は課税対象

相続財産には含まれないものの相続税の課税対象となる財産としてまず、遺贈や死因贈与の対象となった財産が挙げられます。遺贈や死因贈与の対象となった財産は相続財産には含まれません。しかし、税務上は相続税の課税対象になります。なぜなら、遺贈・死因贈与は、被相続人の死亡を原因として財産が引き継がれる点で相続と同じだからです。

 

 

課税対象と「みなされる」みなし相続財産とは?

遺贈や死因贈与の対象となった財産以外にも、相続財産には含まれないにもかかわらず相続税の課税対象とされる財産があります。これを「みなし相続財産」といいます。

 

 

〈みなし相続財産その1〉生命保険金

すでに解説したとおり、生命保険金は相続財産に含まれません。しかし、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。生命保険金は、被相続人の死亡の時点で被相続人に帰属していた財産ではありませんが、被相続人の死亡を原因として財産を手にすることは相続財産と同じです。したがって、税法上はこれを相続財産とみなして相続税の課税対象としているのです。

 

 

生命保険金は一定額まで非課税

ただし、生命保険金の全額が課税対象となるわけではなく一定額までは非課税として扱われます。これを「非課税限度額(ひかぜいげんどがく)」といいます。非課税限度額は次の算式により求められます。

 

非課税限度額=500万円×法定相続人の数

たとえば法定相続人が3人である場合、1,500万円(=500万円×3人)が非課税限度額となり、受け取った保険金のうち1,500万円までは非課税となります。

 

 

〈みなし相続財産その2〉死亡退職金

死亡退職金は上述のとおり、死亡退職金の性質に応じて相続財産に含まれない場合があります。しかしこのような場合であっても、税務上はみなし相続財産として常に相続税の課税対象となります。

 

 

死亡退職金は一定額まで非課税

生命保険金と同様に、死亡退職金の全額が課税対象となるわけではなく、一定額までは非課税として扱われます。死亡退職金の非課税限度額は生命保険金と同様に次の算式により求められます。

 

非課税限度額=500万円×法定相続人の数

たとえば法定相続人が2人である場合、1,000万円(=500万円×2人)が非課税限度額となり、受け取った死亡退職金のうち1,000万円までは非課税となります。

 

 

〈みなし相続財産その3〉相続開始前3年以内の生前贈与

相続開始前に被相続人から相続人に対し贈与が行われていた場合、贈与の対象となった財産は被相続人の死亡の時点より前に相続人に承継されているため相続財産には含まれません。しかし税務上は、相続開始前3年以内に贈与された財産も相続税の課税対象として扱われます。なぜなら、これを課税対象としないと被相続人が自らの死期を悟って相続人などに多くの財産を贈与することで、相続税の課税を回避することが可能になってしまうからです。なお、財産を贈与する場合には相続税とは別に贈与税が課税されることになります。すでに贈与税を納めている部分についてまで相続税を課税してしまうと、二重に課税されてしまうことになります。そこで、相続税と贈与税が重なる部分については相続税から差し引かれることになっています。

 

 

〈みなし相続財産その4〉低額譲渡された財産

被相続人から相続人や第三者に対し財産が移転するにあたり、形式的には売買などの契約の形をとっていても、その価格が著しく低く、実質的には無償で譲り受けているのと変わらないという場合があります。このような場合、実質においては遺贈や死因贈与と変わりません。そこで、税法上、遺言書によって著しく低い価格で財産を譲り受けた場合、その差額部分についてはみなし相続財産として相続税の課税対象としています。これを「低額譲渡(ていがくじょうと)」といいます。

 

 

非課税となる相続財産

遺贈・死因贈与やみなし相続財産とは反対に、相続財産でありながら相続税の課税対象とならない財産があります。

 

 

〈非課税となる相続財産その1〉祭祀財産

すでに説明したとおり、祭祀財産は、相続の対象となり、慣習に従って祭祀をつかさどる者に承継されます。もっとも、税法上は、祭祀財産は相続税の課税対象になりません。祖先崇拝を尊重するという観点から特別に非課税として扱われているのです。

 

 

〈非課税となる相続財産その2〉公共事業用財産・寄附財産

相続財産であっても「公共事業用財産(こうきょうじぎょうようざいさん)」や「寄附財産(きふざいさん)」に当たれば相続税を課されません。「公共事業用財産」とは宗教・学術・慈善事業などに使用する財産をいいます。「寄附財産」とは国や地方公共団体、日本育英会・日本赤十字社などの特定の公益法人に寄付した財産をいいます。これらの行為は社会的に有益であるため、これらを奨励・促進するために非課税としているのです。

 

 

〈非課税となる相続財産その3〉債務控除

すでに説明したとおり、相続財産には不動産や動産、債権のようなプラスの財産のみならず、債務というマイナスの財産も含まれます。さらに、相続が開始するということは被相続人が亡くなっているのですから、被相続人の葬式費用が必要となるのが通常です。したがって、実際に相続人が手にする利益は、相続財産から債務や葬式費用を差し引いた部分に限られます。

そこで、相続税は相続財産から債務や葬式費用を差し引いた金額にのみ課税されることになっています。これを「債務控除(さいむこうじょ)」といいます。

 

 

債務控除の対象となる債務

債務控除の対象となる債務は「被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるもの」に限られます。確実と認められない債務の例として、保証債務が挙げられます。保証債務は保証の対象となっている債務(主債務)の債務者が弁済すれば、保証人が弁済する必要がなくなるので、確実と認められる債務にあたらないのです。したがって、債務控除の対象になりません。

 

 

債務控除の対象となる葬式費用

債務控除の対象となる葬式費用には通常葬式にかかる費用がすべて含まれます。なお、香典返し、墓地の購入、法事の費用は、葬式費用に含まれません。

 

 

相続財産の調査方法

相続財産の調査方法

 

ここまで説明したとおり、相続の放棄・限定承認の判断や、相続税の課税額の算定をするうえで、相続財産としてどのような財産がどの程度あるのかを知ることは必要不可欠です。では、実際に相続財産を調べるには、どのような方法によればよいのでしょうか?

 

 

遺言書がある場合の相続財産の探し方

被相続人が遺言書を作成している場合、遺言書の財産目録などの記載から相続財産を調査することができます。

 

 

遺言書がない場合の相続財産の探し方

問題となるのは被相続人が遺言書を作成していない場合です。この場合、被相続人の居宅などで、予想される相続財産の種類に応じた書類などを地道に探すことになります。

 

 

遺言書がない場合の不動産の探し方

被相続人が土地や建物のような不動産を所有していた場合、その所在地や価値を調査する必要があります。具体的には、まず、不動産に関する権利書、固定資産税の納付書などの書類を探すことになります。これらの書類が見つかり、不動産の所在地などが特定できた場合、法務局にて登記事項証明書の発行を受けることでその不動産の存在や所在地を明らかにすることができます。さらに、市町村役場にて固定資産評価証明書の発行を受けることで、その不動産の価値を明らかにすることができます。

 

 

遺言書がない場合の預金の探し方

被相続人の預金・貯金といった財産の調査方法としては、まず被相続人の預金通帳を探すことになります。そのうえで、その預金通帳を作成した銀行等の金融機関の支店にて、預金残高証明書の発行を受けることになります。これにより、預金債権の存在、及び、その金額を明らかにすることができます。

 

 

遺言書がない場合の借金・負債の探し方

すでに説明したとおり、被相続人の借金・負債などのマイナスの財産も、相続財産として相続人に引き継がれます。したがって、これらについても調査する必要があります。相続人の借金などは、契約書、キャッシュカードの利用明細書等の書類を探すことにより調査することになります。さらに、クレジット情報等を管理する個人情報信用機関に対し情報提供を求めることも考えられます。

 

 

この記事のまとめ

専門家の見解をくわしく述べます。

いかがでしたか?一言に相続財産といっても、プラスの財産だけでなくマイナスの財産もあり、さらに、相続税の課税対象となるもの、ならないものがあり、その内容は複雑です。しかし、相続財産の内容は、相続により得をするのか、損をするのかに直結する極めて重要なものです。来たるべき相続のときに備え、ご自身あるいはご親族の相続財産についてきちんと理解しておきましょう。

執筆者: やさしい相続編集部