相続放棄の無料相談窓口、弁護士が対応、2往復無料

遺産相続で借金を背負ってしまうかもしれないという可能性について、考えたことはありますか?意外かもしれませんが、相続の対象となる財産は預金や不動産といったプラスの財産だけではありません。実は借金などのマイナスの財産も相続の対象です。

 

よく調べずに相続をしてしまうと、借金を背負って債務者になってしまう可能性があるのです。この記事では、借金を相続してしまいそうな場合の解決方法「相続放棄」について、くわしく説明します。このページを読み終わるころには、相続をすべきか放棄を選ぶべきか、判断のための知識が身についているはずです。

相続とは?基本的なルールを知っておこう

すべての権利や義務であるプラスの財産およびマイナスの財産を相続することである。

相続という言葉をよく耳にしたことはある人が多いのではないでしょうか。それでは、そもそも「相続する」とは、どういうことなのでしょうか。

 

相続とは、死亡した人(被相続人)のすべての権利や義務を相続人に引き継ぐことです。

 

すべての権利や義務を引き継ぐということは、プラスの財産だけでなく、「マイナスの財産」も承継するということです。この「マイナスの財産」には、被相続人の借金も含まれますので、相続人は借金も含めて相続することになります。都合よく、プラスの部分だけ受け継ぎたいということはできません。

 

なお、すべての財産を引き継ぐといっても、被相続人の「一身専属の権利(特定の人だけに帰属する権利)」については相続されません。たとえば、被相続人を被保険者とする年金や障碍者給付金などは、相続が開始されると支給は終了し、相続されません。

第八百九十六条
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

 

 

プラスの財産とマイナスの財産

土地・家・有価証券・現金預金・買掛金・社債・住宅ローン・借金

プラスの財産はイメージがしやすいでしょう。土地や家屋、有価証券や現金預金などがプラスの財産に含まれます。

 

一方、マイナスの財産というのは、いわゆる負債のことです。事業を例にすると、事業にかかる買掛金、借入金、社債などです。個人では、住宅ローンや消費者金融での借が例にあげられ、さらには後述するような「保証債務」も、負債として相続の対象となります。

 

 

借金などマイナスの財産も含めて相続する

相続はプラスの財産とマイナスの財産を相続する

相続の仕方には様々な方法がありますが、基本的にはプラスの財産もマイナスの財産も一緒にまとめて相続します。

 

たとえば、被相続人の財産が次のとおりである場合を考えてみましょう。

  • 土地建物:5,000万円(資産)
  • 現金預金:2,000万円(資産)
  • 住宅ローン:3,000万円(負債)

 

この場合、資産である土地建物と現金預金の合計7,000万円(5,000万円+2,000万円)に対して、負債は住宅ローンの3,000万円です。

 

資産と負債を清算した金額はプラス4,000万円(7,000万円-3,000万円)ですが、相続の対象となるのは資産合計7,000万円と負債合計3,000万円のそれぞれとなります。

 

 

連帯保証人の地位も相続の対象になってしまう?

連帯保証人も相続されてしまう

ふだんの生活の中で、あまり聞き慣れない言葉かもしれません。まずは、「連帯保証」がどういったものかを確認していきましょう。

 

被相続人が借金の連帯保証をしていた場合、連帯保証人の地位は相続でどのように取り扱われるのでしょうか?

 

連帯保証人とは

「連帯保証人」という言葉は、テレビドラマなどでみなさんも耳にされたことがあるでしょう。連帯保証人とは、債務者(お金を借りた人)が債務を返済しない時に、代わりに債務を返済する義務を負う人です。

 

連帯保証人と保証人の違い

債務者(お金を借りた人)が債務を返済しない時に、代わりに債務を返済する義務を負う人のことをいう。

「保証人」と「連帯保証人」とでは、次の点で異なります。

 

保証人の場合、債権者は債務者に対してあらかじめ債務の返済の請求をしなければなりません。お金を貸している側は、まず借金している本人に請求し、ダメなら次に保証人のところへ行く、というイメージです。

 

一方、連帯保証人の場合には、債権者は連帯保証人に直接債務の返済を請求できるのです。借金している本人ではなく、いきなり連帯保証人に「金を返せ」と言えるということです。

 

この点で、連帯保証人というのは債権者にとって通常の保証人よりも有利な制度となっているのです。逆に、保証人の側からすると連帯保証の方が通常の保証よりも不利になるといえるでしょう。

連帯保証人の地位も相続の対象

連帯保証人も負債として相続財産となる

連帯保証人は、債務者とともに債権者に債務を返済しなければなりません。つまり「債務者と連帯保証人は一蓮托生の関係にある」のです。

 

ということは、(自分は借入をしていないのに)例えば親の返済し終わっていない住宅ローンや消費者金融からの借金を返済しないといけない関係ということになります。先ほど述べたマイナスの財産には、亡くなった人の連帯保証人の地位も含まれることになり、相続の対象となるのです。

 

 

借金も相続の対象

相続について、基本的なルールについてお分かりいただけたと思います。借金まで引き継いでしまうのが相続なのです。よくある相続のご相談として、亡くなった方(被相続人)の作った借金も相続するのか?というものがあります。

 

「知らないところで故人がこしらえた借金なんて、自分には関係ない!」

 

と思われるかもしれません。しかし、相続が開始されると相続人は被相続人に属していたすべての権利や義務を引き継ぐことになります。

 

 

借金を相続しないためにできること

借金を相続しないためには、いくつか方法がある。

被相続人の遺された財産につき、不動産などのプラスの財産より借金などのマイナスの財産が多い場合、相続される方はご自身の財産で故人の借金を返さなければなりません。

 

また、負債より資産の金額が多いとしても、すぐに現金に変えることが困難な不動産が資産の多くを占めているケースでは、不動産を換金して、借金を払うことが困難であることが多く、返済が重荷になってしまいます。

 

しかし、このような事情によって相続人に過度な負担がかかってはひどいではないか、ということで日本の法律は相続の方法をいくつか用意してくれています。

 

 

借金を回避する相続放棄とは

借金を相続しない方法として相続放棄がある。

相続財産についてマイナスの財産の方が多い場合はどうすればよいのでしょうか。そのまま相続して借金を背負う他ないのでしょうか?

 

その解決策として、相続をしたくない人のために「相続放棄(そうぞくほうき)という手続きが用意されています。相続放棄とは読んで字のごとく「遺産を相続しないようにする手続き」をいいます。

相続放棄で悩んではいけない

相続放棄に関するよくあるご相談に、次のようなものがあります。

 

「故人が借金を遺したまま亡くなりました。相続人(相談者)はその責任を取らなければならないから、相続放棄してはいけないのではないですか?」

 

こうしたご相談は心情的には理解できる部分もあります。

 

しかし、相続放棄はそのような借金の相続による負担から相続人を解放するための手続きです。借りを作っている人に対して負い目があったとしても、その責任は亡くなった方(被相続人)のものであり、相続人とは切り離して考えるべきものです。本質的にはあなたとは関係なく、責任を感じる必要はありません。

 

ですから、安心して相続放棄の手続きをしてください。ここからは相続放棄について、くわしく解説していきます。

 

 

借金などを回避する「相続放棄」とは

相続放棄は、被相続人の遺した財産の一切を相続しないための手続きです

 

 

相続放棄が利用されるケース

相続放棄は限定承認ができない場合や面倒な場合に利用される

相続財産のうちマイナスの財産が明らかに多い場合によく使われます。また、限定承認ができなかったり、限定承認手続きが煩雑で利用したくないという場合に使われます。

 

その他にも、会社経営の都合で相続財産を長男などの一部の相続人に集中させたい場合や、相続人が親族などとの関係を断ちたい場合などにも利用されることがあります。

 

 

相続放棄の効果

相続放棄の効果は、被相続人はいっさい相続できなくなることである。

 

相続を放棄した場合、被相続人の財産をすべて相続できなくなります。そして、そもそも相続放棄をした人は最初から相続権がなかったものとみなされ、相続人でなくなります。

 

 

プラスの財産だけを相続できないか?

相続放棄は一切の相続財産を放棄して相続しないようにする手続ですから、プラスの財産だけを相続することはできません。

 

 

「最初から相続権がないものとみなす」ってどういうこと?

相続放棄は限定承認ができない場合や面倒な場合に利用される

相続放棄をした人は、はじめから相続人でなかったものとして扱われます。相続放棄をした人を含めて相続人が複数いる場合、他の相続人が相続する財産の割合が増えることになります。

 

 

相続放棄した相続権はどこへいく?

相続放棄をした場合、その相続権はどこへ行くのでしょうか?また、他の相続人の相続権に影響はあるのでしょうか?この点、法律は「相続権がなかったものとみなす」としか規定していません。

 

つまり、次の順位の相続人が相続権を有することになります。これは簡単に言ってしまえば、相続放棄をした人は、その相続手続きに関してはじめからいなかったものとして扱われるということです。

 

ここでご注意いただきたいのは、相続放棄をした人の子供は代襲相続(だいしゅうそうぞく)できないということです。

【関連記事】相続放棄をすると代襲相続できない?~やさしい相続マニュアル~

 

 

相続放棄をすると、他のだれが相続することになるのか?

相続人の相続順位は法律で決められている。

相続人となるかどうかは被相続人との続柄がどうなっているか、そして自分よりも近しい続柄の親類がいるかどうかによります。相続人の相続順位(そうぞくじゅんい)は、次のように法律で定められています。

 

  • (常に相続): 配偶者(妻や夫)
  • 1: 
  • 2: 直系尊属(両親や祖父母)
  • 3: 兄弟姉妹

 

順位が上の者がいる場合には、順位の下の者は相続人となることはできません。たとえば、相続人として第1位の子がいる場合には、第2位の両親や祖父母、第3位の兄弟姉妹は相続人になれないということです。

 

また、同順位の者が複数人いる場合には同順位の相続人で相続分を按分(分け合い)しますたとえば、第1位の子がおらず、第2位の両親や祖父母もおらず、第3位の弟と妹だけがいる場合、その弟と妹で遺産を分け合います。

 

被相続人に配偶者がいる場合には、配偶者は常に相続人となります。配偶者とそれ以外の相続人の相続分の配分は次のようになります。

 

  1. 配偶者と子は1:1
  2. 配偶者と直系尊属(両親や祖父母)は2:1
  3. 配偶者と兄弟姉妹は3:1

 

この場合も、同じ順位の相続人が複数いる場合には各相続人の相続割合は配偶者との間で按分された相続分について、さらに同じ順位の相続人の数で按分した割合となります。

 

たとえば、以下のような家族構成で父の相続について長男たる本人が相続放棄をする場合を見てみましょう。

 

  • 被相続人:父
  • 相続人:本人(兄)、弟、妹、母

 

相続放棄をした相続人(本人)に子どもがいない場合、本人は死んでしまったものとして扱われます。つまり、父の相続人は弟、妹、母の3人になります。また、法律で決まっている相続人が相続できる割合(法定相続分)は次のようになります。

 

直系卑属:配偶者=1

 

同順位の相続人が複数人いる場合には、相続分は人数で按分されるため、具体的な相続割合は次のようになります。

 

弟:妹:母=1/4 1/4 1/2

 

では、本人に子どもが2人いた場合に相続放棄をすると、どうなるでしょうか?

 

  • 被相続人:父
  • 相続人:本人(兄)、弟、妹、母
  • 本人の子が2人(子A、子B

 

相続人が被相続人の死亡前に死んでいた場合、その相続人の子どもが代襲相続をします。つまり、代襲相続人が本人の代わりに兄弟1人分の相続権を承継します。

 

この場合の相続割合は次のようになります。

 

(本人):弟:妹:母=1/6 1/6 1/6 1/2

 

ここで、(本人)の場所に代襲相続人たる子A、子Bが入るので、具体的な相続割合は次のようになります。

 

A:子B:弟:妹:母=1/12 1/12 1/6 1/6 1/2

 

ところが、相続人が相続放棄をし、はじめから相続人でなかったとなると、相続人の子どもも相続人でなかったことになり、代襲相続は起こりません。

 

上記の例においても、本人に子どもがいなかったケースと同じく、相続人は、弟、妹、母の3人となり、相続割合は次のようになります。

 

弟:妹:母=1/4 1/4 1/2

 

 

相続人が相続放棄した場合の遺産の行方

相続放棄をすると相続人となる人が財産管理をするようになるまで相続財産を管理しなければならない

相続人が相続放棄をした場合、相続財産についてほったらかしにしてもよいのでしょうか?

 

相続財産について相続人が相続放棄をしたとしても後々どんな問題が生じるかわかりません。そこで法律上は、放棄をしたことによって次に相続人となる人が財産管理をするようになるまで相続財産を管理しなければならないと定めています。

第940条1項
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

 

相続人全員が相続放棄をした場合はどうなる?

全員が相続放棄をすると相続財産は法人のものとなる。

相続人全員が相続放棄をして、相続人として誰も相続財産を管理する人がいなくなった場合、相続財産は法人となります。

 

そして利害関係人が請求することにより、相続財産管理人が付き、相続財産を管理します。

 

利害関係人というと、なんだか分かりにくいですが、最後に相続財産を放棄した人が請求をする場合が多いようです。

第九百五十一条
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。 

第九百五十二条
前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。

遺産の処分は誰が取り仕切るの?

遺産の処分については、自分の財産に対するものと同程度の注意を払いながら管理する。

相続財産管理人がつくと、相続人(だった人)は相続財産の管理をする必要はなくなります。

 

しかし、相続放棄をするまでの期間は、たとえ面倒でも相続人は自分の財産に対するのと同程度の注意を払いながら相続財産を管理する必要があります。

 

また、後述するように、相続財産を勝手に自分で使ったりしてしまうと、相続放棄をしていても相続の効果が発生してしまい、相続放棄はできなくなるので注意が必要です。

 

 

葬儀費用と相続放棄

相続財産から葬儀費用を払った場合にも相続放棄は可能である。

よくある相談として、「相続放棄を予定しています。ただ葬儀費用を支払ってしまい、これは相続財産を処分したことになってしまい、相続放棄ができなくなるのでしょうか。」といった内容があります。

 

つまり、相続財産の中から葬儀費用を支払うことは、「財産の処分」となるのかが問題となるのです。

 

これについては、過去の判例により、

 

「葬儀費用を支払うことは道義上必然であるため、葬儀費用の支払いが一概に相続財産の処分に該当するとはいえない」 

とされており、今も解釈されている内容となりますので、葬儀費用を相続財産から支払ったとしても、相続放棄は可能ですので、安心してください。

東京控昭11・9・21判決
「葬式費用ニ相続財産ヲ支出スルカ如キハ道義 上必然ノ所為」

大阪高等裁判所平成14年7月3日決定
ア 葬儀は、人生最後の儀式として執り行われるものであり、社会的儀式として必要性が高いものである。そして、その時期を予想することは困難であり、葬儀を執り行うためには、必ず相当額の支出を伴うものである。これらの点からすれば、被相続人に相続財産があるときは、それをもって被相続人の葬儀費用に充当しても社会的見地から不当なものとはいえない。また、相続財産があるにもかかわらず、これを使用することが許されず、相続人らに資力がないため被相続人の葬儀を執り行うことができないとすれば、むしろ非常識な結果といわざるを得ないものである。したがって、相続財産から葬儀費用を支出する行為は、法定単純承認たる「相続財産の処分」には当たらないというべきである。

 

【関連記事】遺産から葬儀費用を支払うと、相続放棄できない?~やさしい相続の基礎知識~

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相続放棄したら相続税の基礎控除額はどうなる?

相続放棄した際の基礎控除額について

相続放棄すると、はじめから相続人でないものとみなされます。一方で、相続税の基礎控除額は法定相続人の人数によって決まります。

 

それでは、相続放棄をすることによって相続人であった人が相続人でなくなった場合、相続税にかかる基礎控除の計算はどうなるのでしょう?

 

 

 そもそも相続税の基礎控除額とは?

相続税は9割以上の相続について課税されることのない税金ですから、相続税の基礎控除額についてよくご存知の方は少ないでしょう。ここでは相続税の基礎控除額について簡単に解説していきます。

 

 

相続税の基礎控除額のあらまし

相続税はプラスの相続財産からマイナスの相続財産を引いた額から「基礎控除額」を引いたものにかかってくる。

まず、相続税はプラスの相続財産からマイナスの相続財産を引いた額から「基礎控除額」を引いたものにかかってきます。

 

そのため、相続財産が基礎控除額よりも少額の場合には、相続税は発生しないことになります。基礎控除とは「少額の相続財産にまで税金をかけるのは酷だ」ということで設けられた調整機能だといえるでしょう。

 

 

相続税の基礎控除額の計算

現在の相続税の基礎控除額は、次の算式によって計算されます。

 

3,000万円+(法定相続人の人数 × 600万円)

 

たとえば、相続人が配偶者と子ども二人の場合の基礎控除額は次のように計算されます。

 

3,000万円+(3 × 600万円)=4,800万円

 

ここで、相続財産が6,000万円の場合を考えてみましょう。この場合、相続財産6,000万円から基礎控除額4,800万円を除いた1,200万円が相続税の課税対象となります(実際にはもっと多くの控除項目があります)。

 

 

相続放棄したら基礎控除額に影響はあるか?

相続放棄により基礎控除額が変動することはなく、基礎控除額は相続放棄前の金額と同じになる。

相続放棄をするということは、もはや相続人でなくなるということです。ということは、相続税にかかる基礎控除額の法定相続人の人数にも影響が出そうですね。

 

しかし、相続税法の考え方では、相続放棄をしてもしなくても当初予定されていた相続人の人数を基準に基礎控除額は計算されます。つまり、相続放棄により基礎控除額が変動することはなく、基礎控除額は相続放棄前の金額と同じになります。

 

 

相続放棄に必要な手続き

相続放棄をすると、どのような効果が生じるかを、ここまで解説してきました。次は、どうすれば相続放棄をすることができるのかを解説していきます。

 

 

相続放棄に必要な手続きの流れ

相続放棄は相続開始から3か月が期限である。

何ら手続きをすることなく、相続が開始して(故人が死亡して)それを知ったときから3か月が経過してしまうと、単純承認したことになってしまいます。これを「法定単純承認(ほうていたんじゅんしょうにん)」といいます。

 

どういうことかといいますと、何もせず、相続放棄の期限である「相続開始を知ってから3か月以内」を過ぎてしまうと、相続することになってしまい、相続放棄ができなくなるということです。

 

また、単に相続放棄をしたいとの意思表示をするだけでは相続放棄はできません。相続放棄を行うためには所定の手続きを経なければなりません。

 

【関連記事】要注意!相続放棄の手続きには期限がある~やさしい相続マニュアル~

 

相続放棄の申述期間

相続放棄の申述期間は、相続の開始を知ってから3か月以内である。

まず、相続放棄を行うためには、熟慮期間内に、管轄の家庭裁判所へ相続放棄の申述をする必要があります。熟慮期間とは、「相続開始を知ってから3か月以内」です。通常、被相続人の死亡の日の翌日から起算されます。

 

ここでご注意いただきたいのは、熟慮期間は「相続の開始から3ヶ月以内」ではないということです。

 

3ヶ月以内の期間を厳格に解釈すると「自分が相続人になったことは知っていたが、そんなに多く借金があるとは知らなかった」といったケースでも、3ヶ月が経過すると相続放棄できなくなってしまうわけです。

 

これはあまりにも酷ですが、借金の存在は死後ある程度の期間が経ってから判明することが多いため、他人事ではないかもしれません。そこで過去には、ある程度の裁量をもって3ヶ月ルールを適用することを促すような判例もあります。

昭和59年4月27日 最高裁判例
相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である。

最高裁は、要件として以下の点を述べています。

 

  1. 相続開始の原因となる事実(被相続人の死亡)
  2. 自らが相続人となることを知ったこと
  3. 相続財産についての認識

 

相続の開始から3ヶ月以上が経過していても、相続人が相続の開始、つまり被相続人の死亡の事実を知らなければ、あるいは相続する財産がないと信じるのに相当の理由がある場合には、相続放棄を行うことができる余地があるということです。

 

熟慮期間の伸長

相続放棄の熟慮期間の伸長は家庭裁判所に申立てをする

相続放棄の熟慮期間は、相続人を含む利害関係人または検察官の請求によって、家庭裁判所に申立てをすることによって、伸長することができるのです。ただし、この申立ては熟慮期間内にする必要があるので注意しましょう。

 

また、この熟慮期間の延長は、各相続人ごとに認められるものであり、相続人の中の誰か1人が認められたからといって、他の相続人の熟慮期間まで延長されるわけではないのも注意が必要です。

 

熟慮期間がいつ始まるのかという問題は、非常に難しい問題です。ご自身がまだ熟慮期間内であるかどうかは、弁護士などの専門家にご相談されるのがよいでしょう。

 

【関連記事】相続放棄の期限が過ぎてしまったらどうすればいい?その対処法を徹底解説!

 

 

相続放棄に必要な書類を集めよう

相続放棄の申述書、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本

相続放棄を行うかどうか判断したら、次は相続放棄の申述に必要な書類を集めるステップに移ります。

 

相続放棄の申述に必要な書類は、相続人がどの地位にある相続人かによって異なりますので、以下ではパターン別に必要な書類を解説していきます。

 

【共通して必要とされる書類】

  • 相続放棄の申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 申述人の戸籍謄本

 

〈パターン1〉申述人が配偶者の場合

  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本

 

〈パターン2〉申述人が子または孫の場合

  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
  • 被代襲者(配偶者または子)の死亡記載のある戸籍謄本

 

〈パターン3〉申述人が被相続人の親または祖父母の場合

  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • 配偶者(または子)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • 被相続人の親(父・母)の死亡記載のある戸籍謄本

 

〈パターン4〉相続放棄の申述人が兄弟姉妹または甥・姪の場合

  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • 配偶者(または子)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • 被相続人の親(父・母)の死亡記載のある戸籍謄本
  • 兄弟姉妹の死亡の記載のある戸籍謄本(死亡している場合)

 

相続放棄に必要な書類を取得するには、ある程度の時間が必要になります。熟慮期間は3ヶ月しかありませんので、相続放棄をされる場合は早めに必要書類を用意することをおすすめします。

 

【関連記事】相続放棄の手続きの流れと必要書類・費用まとめ

 

管轄の家庭裁判所への申立て

相続放棄の家庭裁判所出の申述の方法は、管轄の家庭裁判所へ直接出向いて書類を提出する方法 と管轄の家庭裁判所へ郵便で送付する方法がある。

必要な書類がそろったら、次は管轄の家庭家庭裁判所で相続放棄の申述を行いましょう。申述の方法には次の2パターンがあります。

 

  • 管轄の家庭裁判所へ直接出向いて書類を提出する方法
  • 管轄の家庭裁判所へ郵便で送付する方法

 

郵送する場合には紛失のリスクがありますので、一般書留郵便等を利用することをおすすめします。なお、相続放棄の申述ができるのは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

 

 

相続放棄の申述をした後の手続き

相続放棄の申述した後は、相続放棄申述受理通知書が送付される。

相続放棄の申述を行い、家庭裁判所が申述を受理してから2週間ほどで家庭裁判所から「照会書」が送付されます。

 

相続放棄をする方は、この照会書に書かれている事項に回答し、署名押印をしたうえで家庭裁判所へ返送してください。

 

照会書を家庭裁判所へ返送すると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書(そうぞくほうきしんじゅつじゅりつうちしょ)が郵送されてきます。これでひとまず相続放棄の手続きは終了します。

 

 

必要があれば相続放棄受理証明書を入手する

相続放棄の申述の完了を証明するために相続放棄申述受理証明書がある。

相続放棄を完了したことを証明するには、上述の「相続放棄申述受理通知書」を提示すればほとんどの場合で十分ですが、不動産登記などの手続きにはそれだけでは不十分です。

 

こうした場合、「相続放棄申述受理証明書(そうぞくほうきじゅりしょうめいしょ)を入手し、それを提示することになります。

 

 

相続放棄は迅速な行動が必要!

実際のところ、相続財産の調査から必要書類の収集、そして家庭裁判所への申述までを考えると、相続放棄の手続きは相当な負担になります。

 

また、相続放棄をするべきかどうかの判断は様々な事情を総合して行わなければならず、専門的な知識が必要となるケースも多く存在します。そのため、相続放棄については弁護士・税理士などの専門家を利用されることをおすすめします。

 

 

相続放棄時に注意すべき4つのポイント

相続放棄での4つのポイント

最後に、相続放棄をされる際に注意しなければならないポイントを解説していきます。相続放棄で問題になるのは、主に以下の4つの問題です。

 

相続放棄を考えておられる方や、相続が開始される前から相続放棄の必要性を感じておられる方は、よくご確認ください。

 

 

相続開始前に相続放棄はできない!

相続開始前に相続放棄はできない。

相続放棄ができるのは、被相続人が死亡してから、すなわち相続が開始されてからです。

 

相続放棄が、主としてマイナスの財産を相続しなければならない相続人の負担を解放する制度であるというのがその理由です。

 

相続開始前の相続放棄を禁止することで、相続放棄の制度を被相続人が悪用して被相続人の生前に相続人になる予定の人(推定相続人)に圧力をかけて、プラスの財産も相続放棄させてしまうということを防止する意味があります。

 

 

タイムリミットは3か月!

相続放棄では、「3か月」という期間が非常に重要な意味をもちます。

 

 

じっくり考えるための「熟慮期間」

相続放棄の熟慮期間はしっかり考えるための期間

相続に関わるのは、被相続人と相続人だけではありません。

 

被相続人の財産のうち、第三者に対する債権債務がある場合には、その第三者も相続に関係がある利害関係者といえます。相続は、被相続人の財産の一切を相続人が承継するものです。

 

つまり、相続は被相続人の財産と相続人の財産が溶け合うものであるといえるでしょう。そのため、相続人が相続をするかしないか、相続するとして単純承認するか限定承認するかは上記第三者にとっても非常に重要な問題です。

 

このように、法律関係を早期に確定させる必要性から「相続開始を知ってから3か月」との熟慮期間が設けられているのです。

 

そして、この熟慮期間を経過してしまうと、例外的な場合を除き、相続放棄はできなくなってしまいます。相続が開始されたら、速やかに相続財産を調査・把握し、相続放棄をするかどうかの方針をたてましょう。相続放棄をすると決まれば、早めに必要書類を用意しましょう。

 

 

熟慮期間は延長できる場合がある

相続放棄の申述期間は延長が可能である。

3ヶ月以内に手続きをしなければならないといっても、被相続人が亡くなってから葬儀など様々なことをやらなければならない中で、上記の書類収集などを行わなければならないというのは相当な負担があります。

 

 

そこで、被相続人の財産の把握が困難で、調査に時間がかかるという場合などには、家庭裁判所に対して熟慮期間の延長を申述することができます。

 

残念ながら、熟慮期間の延長の申述が受け入れられない場合もあります。

 

しかし、延長しないまま熟慮期間を経過してしまうとマイナスの財産の相続によって相続人の方は不利益を被ってしまいます。

 

そのため、相続放棄の申述が間に合わないと判断したら、早めに家庭裁判所に熟慮期間の延長の申述をされるのがよいでしょう。

 

 

遺産を処分したら相続放棄できない!

相続放棄の申述期間は延長が可能である。

熟慮期間内であっても相続放棄をすることができなくなる場合があります。「法定単純承認(ほうていたんじゅんしょうにん)と呼ばれる制度です。

 

たとえば、相続人が被相続人の現金預金を使い果たしたあと、相続放棄をしてしまったら被相続人の遺産で債権を回収しようと考えていた債権者は困ってしまいますよね?

 

そこで、相続にかかわる利害関係人のため法的安定性を確保する必要から、「一定の財産処分行為」をすると強制的にプラスの財産もマイナスの財産も一括して相続人に相続させる必要があるのです。これが法定単純承認です。

 

そして、ここでいう「一定の財産処分行為」とは、相続財産を相続人が自分のものとして使ったり、相続財産を売買したりすることをいいます。

 

しかし、「相続財産に少しでも手をつけたら相続をしなくてはならない」というわけでもありません。相続財産の清算したり、相続財産にかかる固定資産税などの税金を払うといった管理に必要な範囲の行為はすることができ、その後に相続放棄をすることもできます。

 

この「一定の財産処分行為」かどうかを判断するためには、専門的な知識を必要とするケースが殆どですので、弁護士などの専門家にご相談されることをおすすめします。

 

 

いったん相続放棄を選択すると後戻りはできない!

相続放棄の撤回は新たな相続人の承認が必要。

相続放棄の手続きを終えた後、「やっぱり相続したい!」と思っても、相続放棄の手続きにより新たに相続人となる人がいる場合には相続し直すことができません。

 

これは、もし相続放棄を取り消すことができたとすると、新たに相続人となった人が相続ができなくなり、これは新たに相続人となった人の予測を害するためです。

 

ただし、新たに相続人となった人が相続放棄の撤回について承認した場合には、相続放棄の撤回はできます。

 

しかし、これはあくまで例外的な場合であり、必ずしも新たに相続人となった人が相続放棄の撤回の承認をするとは限りません。そのため、相続放棄をするかどうかの判断は慎重に行いましょう。

 

 

この記事のまとめ

相続放棄は悩んだら専門家へ相談しましょう。

相続放棄とは先立たれた方の財産を受け継いだり、訣別する手続きです。

 

被相続人のマイナスの財産から相続人の皆さまが解放されるためには、能動的に行動を起こさなくてはなりません。離別の苦しみも癒えない短期間のうちに決断を下さなければならないのは酷ですが、相続放棄をすると決まればきちんと手続きを踏みましょう。

 

そして、限られた時間の中で相続放棄をするかしないか、あるいはできるかできないかのご判断は非常に繊細な問題であり、またその手続きも相当な負担になることが通常です。

 

実際に、熟慮期間経過後に相続放棄のご相談をされる方が多くいらっしゃいますが、どうすることもできない場合が殆どです。ですので、相続放棄については早い段階で専門家へご相談されることをおすすめします。

 

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執筆者: やさしい相続編集部