故人が最期の思いを込めた遺言書ですが、どうすれば遺言書に書かれていることを実現できるのでしょうか?

 

その1つの解決策として遺言執行者の選任があります。

ここでは、そんな遺言執行者について、その選任や解任・辞任の方法から職務の内容、報酬の決め方までをわかりやすく説明していきます。

遺言執行者とは?

そもそも遺言執行者とは

遺言執行者とは、遺言書の内容の実現を託された人をいいます。

 

遺言書の内容が執行されるのは、遺言者が亡くなった後です。

そのため、遺言者は自らが作成した遺言書の内容がしっかりと実現されたかどうかを確認できません。

 

そこで、遺言書の内容をきちんと実現するために遺言執行者が必要になるのです。

 

 

遺言執行者の地位と権限

遺言執行者の地位と権限とは

遺言書の内容の実現を託されたといっても、遺言執行者に法的な地位と権限がなければ、遺言書の内容を実現することは到底できないでしょう。

 

そこで、法は、遺言執行者を相続人の代理人とみなし、相続財産の管理などの遺言書の内容の実現に必要な一切の行為をする権利・義務を与えています。

 

このように、法は、遺言執行者に法的な地位と権限を与えることで、遺言者の遺志を可能な限り実現させようとしているのです。

第千十五条
遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。
第千十二条
遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

 

遺言執行者の選任・解任及び辞任

遺言執行者の選任の方法・解任の方法・辞任の方法

ここでは、遺言執行者になれる人とその選任・解任及び辞任の方法を解説していきます。

 

 

遺言執行者になれる人

遺言執行者になれる人の条件

未成年者と破産者を除いて、遺言執行者には誰でもなることができます。

 

誰でもなれるとはいえ、法律の知識を欠いていては遺言執行者の責任を果たすことはできません。

そのため実際には、法律や相続の手続きに通じた相続人や、弁護士や行政書士といった専門家が遺言執行者に選任されるのが一般的です。

第千九条
未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。

 

 

遺言執行者を選任する方法

遺言執行者を選任する方法には、次の3つの方法がありあります。

【遺言執行者の選任方法】

  1. 遺言書で指定された人を遺言執行者に選任する方法
  2. 遺言書で指定を委託された第三者が遺言執行者を指定し、選任する方法
  3. 利害関係人の請求で家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらう方法

 

 

1.遺言書で指定された人を遺言執行者に選任する方法

遺言書で指定した人を遺言執行者に選任する方法

遺言書を利用すると様々なことができるようになりますが、その1つに遺言執行者の指定があります。つまり、遺言書にその旨を記載することで、遺言執行者を指定することができるのです。

そして、指定を受けた人が遺言執行者の就任を承諾すれば、遺言執行者が選任されたことになります。

 

ただし、遺言書で遺言執行者を指定したからといって、指定を受けた人が遺言執行者への就任を拒否すると、選任されたことには当然なりません。そのため、遺言者は遺言執行者になってほしい人に対して、あらかじめ就任をお願いしておく必要があるでしょう。

第千六条
遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

 

 

2.遺言書で指定を委託された第三者が遺言執行者を指定し、選任する方法

遺言執行者の指定を第三者に委託する方法

遺言書で遺言執行者を直接指定しなくても、その指定を第三者に委託することもできます。

たとえば、信頼できるご友人に遺言執行者の指定を遺言書で委託しておけば、そのご友人が遺言執行者にふさわしい人を見つけてきてくれるかもしれません。

 

ただし、この場合も、遺言執行者の指定を受けた人がその就任を承諾して初めて遺言執行者に選任されるわけですから、その点には注意が必要です。

第千六条
遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

 

3.利害関係人の請求で家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらう方法

家庭裁判所に遺言執行者の選任を請求する方法

遺言書に遺言執行者の指定または指定の委託を記載していなくても、利害関係人が家庭裁判所に請求することにより、遺言執行者を選任することができます。

第千十条
遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる

 

遺言執行者の選任を請求できる利害関係人とは?

遺言執行者の選任を請求できる利害関係者とは

遺言執行者の選任を家庭裁判所に対して請求できるのは、利害関係人に限られます。

利害関係人には、相続人や遺言者の債権者、遺贈を受けた者などが含まれます。

【利害関係人の代表例】

  • 相続人
  • 遺言者の債権者
  • 遺贈を受けた者

 

 

遺言執行者の選任の請求先

遺言執行者の選任の請求先である家庭裁判所

遺言執行者の選任は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に対して請求します。

下記のリンクから、裁判所のホームページで管轄の家庭裁判所を検索することができますから、ぜひご利用ください。

 

家庭裁判所を探す

 

遺言執行者の選任の請求に必要な書類

遺言執行者の選任の請求をする際の必要書類

遺言執行者の選任の請求に必要な書類は次のとおりですが、審理のために必要な場合は、追加で資料の提出が必要となる場合があります。

 

  • 遺言執行者の選任の申立書(申立書 / 記入例
  • 遺言者の死亡の記載のある戸籍謄本
  • 遺言執行者の候補者の住民票又は戸籍附票
  • 遺言書写し又は遺言書の検認調書謄本の写し
  • 利害関係を証する資料(親族の場合,戸籍謄本(全部事項証明書)等)

 

 

遺言執行者の選任にかかる費用

遺言執行者の選任の請求に必要な費用

遺言執行者の選任には、次の費用がかかります。

  • 執行の対象となる遺言書1通につき収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手(申立先の家庭裁判所にご確認ください)

 

 

遺言執行者を解任する方法

遺言執行者を解任する方法

せっかく選任された遺言執行者がその職務を怠るなどの正当な理由がある場合には、利害関係人はその遺言執行者の解任を家庭裁判所に対して請求することができます。

 

遺言執行者の解任の請求の手続きの流れも、基本的には選任の手続きの流れと同じです。

遺言執行者の解任の申立書

第千十九条
遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。

 

遺言執行者が辞任する方法

遺言執行者が辞任する方法

遺言執行者に選任されたといえども、その職を辞めたくなることもあるでしょう。

その理由が正当なものであれば、遺言執行者は裁判所の許可を得ることで、その職を辞任することができます。

第千十九条
2 遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。

 

 

遺言執行者の職務の内容

遺言執行者の職務・任務・仕事の内容

遺言執行者の職務には、下記のように、さまざまなものがあります。

【遺言執行者の職務の例】

  • 相続不動産の登記
  • 財産目録の作成
  • 相続人全員への財産目録の交付
  • 戸籍等の相続の手続きに必要な書類の収集

 

上記の職務は遺言執行者でなくとも行うことができる職務です。

しかし、遺言執行者にしかできない職務があります。

 

 

遺言執行者だけができる職務とは?

遺言執行者にしかできない職務・任務・仕事とは?

次の2つは、遺言執行者がいないと行うことができない職務です。

  1. 認知
  2. 相続人の廃除とその取消

 

 

認知とは?

遺言執行者を選任しないとできない認知とは

認知とは、法律の婚姻関係によらずに生まれた子を、その父が自分の子であると認める行為をいいます。

この認知は、遺言書を使ってできる行為の1つですが、遺言書で認知をするためには、遺言執行者の選任が不可欠になります。

第七百八十一条
2 認知は、遺言によっても、することができる。
戸籍法 第六十四条

遺言による認知の場合には、遺言執行者は、その就職の日から十日以内に、認知に関する遺言の謄本を添附して、第六十条又は第六十一条の規定に従つて、その届出をしなければならない。

 

相続人の廃除とその取消とは?

遺言執行者を選任しないとできない相続人の廃除とは

相続人の廃除とは、被相続人に対して虐待や重大な侮辱を加えたとき、またはその相続人に著しい非行があったときに、相続人としての資格をはく奪することをいいます。

 

相続人の廃除は遺言書に記載することにより行うことができますが、相続人の廃除とその取消を行うには、遺言執行者を選任する必要があります。

第八百九十三条
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
第八百九十四条
被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。

 

遺言執行者が必ずやらなければならない義務とは?

遺言執行者の義務

遺言執行者に選任されると、必ずやらなければならないのが、財産目録の作成と、相続人に対する財産目録の交付です。

 

 

財産目録とは?

相続財産の一覧表である財産目録とは

財産目録とは、相続財産を一覧にしてまとめた書類をいいます。

この財産目録を遺言執行者が作成し、相続人に交付することで、相続人が相続財産の内容を漏れなく知ることができるのです。

 

 

相続人に財産目録を交付するために、相続人を調査する

財産目録を相続人に交付する前提として、相続人を調査しなければならない

作成した財産目録は、すべての相続人に対して交付する必要があります。

その前提として、遺言執行者は、誰が相続人なのかを漏れなく把握しなければなりません。

 

そのため、財産目録の作成・交付義務を果たすために、遺言執行者は戸籍等の書類を収集して、相続人の調査を行う必要があります。

 

 

遺言執行者は受任者としての義務も負う

遺言執行者は受任者としての義務も負う

遺言執行者は、なにも財産目録の作成だけを行えばよいわけではありません。

遺言執行者は、善管注意義務や報告義務などのような、受任者としての義務も同時に負うことになります。

第千十二条
第六百四十四条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。
第六百四十四条
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

第六百四十五条
受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。

第六百四十六条
受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。

受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。
第六百四十七条
受任者は、委任者に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

第六百五十条
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。

 

遺言執行者の報酬

遺言執行者の報酬

遺言執行者の報酬は、遺言書に報酬に関する記載があるときにはその定めに従いますが、記載がない場合は家庭裁判所が判断することになります。

 

ただし、相続人と遺言執行者との間で報酬を巡ってトラブルになることもありますから、遺言書に報酬額をあらかじめ記載しておくのがよいでしょう。

第千十八条
家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない

 

 

この記事のまとめ

遺言執行者を利用することに関する専門家の見解

いかがでしたか?

 

遺言執行者を選任することは義務ではありません。

しかし、遺言書を実現し、遺言者の遺志を叶えるためには、遺言執行者の選任が不可欠です。

 

遺言書をこれから作成しようと考えている方や、

 

「遺言書が手元にあるけれども、どうすればいいかわからない」

 

とお思いの方は、遺言執行者の利用を検討してみましょう。

 

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執筆者: やさしい相続編集部