相続放棄の無料相談窓口、弁護士が対応、2往復無料

相続はある日突然やってきます。

 

遺言書(ゆいごんしょ・いごんしょ)は、そんな突然訪れる相続に備えるために作成するメッセージです。

 

遺言書を作っていなかったばかりに、親族間で相続トラブルに陥ってしまう・・・そんな事態は何としても回避したいものです。

そこで、ここでは相続対策の王道、遺言書についてくわしく解説していきます。

そもそも遺言書とは?

遺言書

人が死の間際に書く遺言書。人は何のために遺言書を遺すのでしょう?

そして、そもそも遺言書とは、どのようなものなのでしょうか?

 

 

遺言書は故人の最期のメッセージ

遺言書とは、被相続人(亡くなった方)の遺志を実現するために遺す、被相続人の最期のメッセージです。

 

遺言書は、ただのお手紙ではありません。遺言書に法的な効力を認めることにより、被相続人の遺志を尊重し、できるだけ叶えてあげようとしているのです。

 

 

年間10万件!遺言書の利用者は増えている

遺言書の利用は増加中

近年、遺言書の利用者数は増加傾向にあります。日本公証人連合会によれば、公正証書遺言の作成件数は、

 

平成17年:約70,000件

平成26年:約105,000件

 

と、なんと10年で約50%も増加しています。

このように、遺言書は相続で欠かせない存在になりつつあります。

 

 

 

遺言書と使うと何ができる?

pixta_20715653_m

遺言書はただのお手紙ではありません。そのメッセージには法的な効力が認められています。

では、遺言書を使うと、実際にどのようなことができるのでしょうか?

 

 

遺言書を使ってできること

遺言書を作成すると、相続に関するさまざまなことを決めることができます。

遺言書で事前に定めておくことで、次に挙げるさまざまな効果を発生させることができます。

 

  1. 相続人が相続する遺産の割合を指定できる
  2. 遺産分割方法の指定や、指定の委託ができる
  3. 相続人相互の担保責任を指定できる
  4. 相続人を廃除できる
  5. 遺言執行者を指定できる
  6. 子どもを認知できる
  7. 未成年後見人を指定できる
  8. 遺留分減殺請求の方法を指定できる
  9. 遺贈を行うことができる

 

 

1.相続人が相続する遺産の割合を指定できる

相続割合

遺言書を使うことで、相続人の相続割合を指定できます

「相続人Aが遺産の50%を取得する」というように、遺産を相続する割合を決めることができるのです。

 

 

相続割合とは?

相続割合とは、相続により相続人が取得する財産の割合のことをいいます。

 

遺言書がない場合、相続割合は法律で定められたとおりの割合となります。

 

 

相続割合を決められる

遺言書で遺産の相続割合を定めておけば、相続人が取得する遺産の割合を自由に決めることができます。

 

たとえば、長男が実家で被相続人と同居し、被相続人の介護などに貢献してくれたという事情がある場合、その貢献があった分、「長男により多くの遺産を残してあげたい」ということもあるでしょう。

 

この場合、「長男に相続財産の3/5を相続させる」と遺言書に定めておけば、法律の定めよりも遺言書の定めが優先され、長男により多くの遺産を残してあげることができます。

 

第九百二条

被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。

 

【関連記事】相続人の範囲・相続順位・相続割合をくわしく解説!

 

 

2.遺産分割方法の指定や、指定の委託を行うことができる

 

遺産分割方法の指定

遺言書で定めることにより誰が具体的にどの財産を取得するのか」を指定できます

 

 

遺産分割とは?

「遺産分割(いさんぶんかつ)」とは、相続人同士で遺産を分けることをいいます。

 

各相続人が取得する遺産の割合は、法律で決まっているか、もしくは遺言書で決まることになります。

しかし、これは取得する遺産の「割合」が決まっているだけであり、実際にどの遺産を誰が具体的に取得するのかは「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」によって決めることになります。

 

遺産分割協議とは、遺産をどのように分けるかを相続人全員で話し合うことをいいます。

たとえば、「家は相続人Aが、車は相続人Bが…」というように、相続人全員が話し合って、遺産が誰のものになるのかを決めます。

 

第九百七条

共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。

 

 

遺産分割協議は相続トラブルの宝庫

遺産分割協議はトラブル

「相続人全員の話し合いで決める」と簡単にいいますが、これがなかなかうまくいかないものです。相続人はお互いに利害関係人ですから、なかなかうまくいかないことが多いのです。

 

昔は仲のよかった兄弟や姉妹であっても、お互いの生活にかかわってくる遺産相続の話となると目の色が変わってしまうことがあります。

 

それに、相続人の配偶者(妻や夫)も関わってくるとなると、もはや当事者だけで解決できる話ではなくなってしまいます。

 

【関連記事】遺産分割とは?相続のヤマ場である遺産分割・遺産分割協議をくわしく解説!

 

 

遺産分割方法を指定して、相続トラブルを回避する

遺産分割方法を指定してトラブルを回避する

遺産の分割で親族が揉める、いわゆる遺産分割トラブルを回避するために、遺言書で遺産分割方法の指定できるようになっています。

 

たとえば、「家は長男に相続させる」などと遺言書で定めておけば、トラブルが起こりやすい遺産分割協議を経ることなく、家は長男が取得することになります。

 

遺産が誰のものになるかをきっちりと遺言書で指定しておくことで、相続人同士の話し合いに委ねることなく、遺産の行方を決めることができるのです。

 

【関連記事】遺産分割とは?相続のヤマ場である遺産分割・遺産分割協議をくわしく解説!

 

 

遺産分割方法の指定は委託できる

遺産分割方法の委託

遺産分割方法の指定は、必ずしも被相続人が決めなければならないものではありません。

信頼できる第三者に委託することもできます

 

第三者に遺産分割方法の指定を委託したいときには、遺言書に「〇〇に、相続財産のすべてにつき、その分割方法の指定を行うことを委託する」と記載しておきましょう。

 

遺産分割方法の一部を自分で決めて、その他の部分を第三者に委託することもできます。

その際には、誰が遺言書を読んでも分かるように、明確にその旨を記載しておくことが求められます。

 

 

3.相続人相互の担保責任を指定できる

相続時の担保責任

遺産を分割し終えても、相続人の責任はそれで終わりではありません。

遺産分割を終えたあとも、相続人は「担保責任(たんぽせきにん)」という責任を負うことになります。

遺言書を使うことで、この担保責任についても決めることができます。

 

 

相続人が負う担保責任とは?

相続人の担保責任とは?

遺産分割で財産を分けたあと、実は相続した遺産に瑕疵(かし)があることが判明した・・・、というケースがあります。

 

たとえば、1,000万円の価値の自宅家屋を相続したと思っていたのに、実はそれが欠陥住宅で、現実には100万円の価値しかなかった、というケースです。

その他にも、被相続人の遺産だと思っていたが、実は他人のものだった、というようなケースも考えられます。

 

このような場合、「はい、残念でした」で問題を終わらせてしまうと、他の相続人との関係でとても不公平です。

そこで、瑕疵がある遺産を相続してしまった相続人は、他の相続人に対して損害賠償請求をすることができることになっています。

 

不幸にも瑕疵がある遺産を相続してしまった相続人に、こうした損害賠償請求権を与えることで、きちんと相続人が公平になるように調整するのです。

他の相続人が負うこの責任を「担保責任」といいます。

 

 

遺言書で担保責任について指定できる

担保責任

相続人に担保責任があることによって公平になる、というと聞こえがいいのですが、裏を返せば遺産分割が終わった後も損害賠償をめぐる紛争が相続人同士の間で起こるかもしれないという不安を抱えることにもなります。

そこで、遺言書で担保責任について指定できることになっています。

 

たとえば、相続人全員が担保責任を負わないことにしたり、一部の相続人だけが担保責任を負うようにする、といった具合です。遺言書で担保責任を指定をすることで、損害賠償をめぐる相続トラブルを回避できるのです。

 

 

4.相続人を廃除できる

相続人の廃除を利用した遺産分割対策

被相続人と相続人の関係が良好とは限りません。

 

「あいつには相続させたくない・・・」

という相続人がいる場合もあるでしょう。遺言書を使うことで、特定の相続人に一切相続させないようにできることがあります。この制度を「相続人の廃除」といいます。

 

 

遺産は相続人が相続するのが原則

廃除できるのが原則

特定の相続人に対して、遺産をまったく相続させないことは原則としてできません

それは、法律上の原則として、法定相続人が平等に遺産を相続することになっているためです。

 

第八百九十九条

各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。

 

たとえば、被相続人に子どもがいる場合は、原則として子どもが法定相続人になります。

子どもがいない場合は、直系尊属(両親や祖父母など)が法定相続人になります。

子どもも直系尊属もいない場合には、兄弟姉妹が法定相続人になります。

 

そのため、たとえ被相続人が相続させたくない相続人がいる場合であっても、法定相続人という地位にあれば、原則として相続する権利を有しているのです。

 

【関連記事】相続人の範囲・相続順位・相続割合をくわしく解説!

 

しかし、法定相続人に法律の定めどおりの相続をさせたくない場合もあるでしょう。

これを実現するための手段のひとつとして、遺言書を利用することが考えられます。

 

ただし、遺言書を作成しておけば、完全に思いどおりにできるわけではありません。法定相続人には、「遺留分」が認められているためです。

 

 

遺留分とは

遺留分

「遺留分」とは法定相続人が最低限度受け取ることのできる遺産の取り分をいいます。

遺留分は、たとえ遺言書によっても侵害することができません。

遺言書で一部の法定相続人の相続分を“ゼロ”にしたとしても、その法定相続人は遺留分の限度で遺産を渡すよう請求ができるようになっているのです。

 

そのため、遺言書によっても、遺留分が認められる限り、特定の法定相続人の取り分を完全に“完全にゼロ”にすることはできません。

 

【関連記事】〈遺留分とは?〉遺留分の割合・計算方法を徹底解説!

 

 

相続人の廃除制度を利用する

相続させたくない相続人に遺産を相続させると、被相続人があまりにかわいそうだというケースもあります。

法律上の相続人であっても、家族のあり方はご家庭によってそれぞれであり、ケースによっては相続をさせるべきではないという場合も当然あるのです。

 

法律では、そのような場合に備えて、「相続人の廃除」という制度を設けています。

 

 

相続人の廃除制度とは

相続人の廃除とは

相続人の廃除とは、法律上の要件(これを廃除事由といいます)に該当する場合に限り、被相続人の意思(請求)により相続人の資格を剥奪できる制度をいいます。

 

廃除されることにより、その者は「相続人」としての資格を失うため、その者には遺留分も認められません。

したがって、その相続人の取り分を「完全にゼロ」とすることができるのです。

 

 

相続人を廃除するための「廃除事由」

廃除事由

廃除事由は、単に「あいつは気に入らない」という程度の理由では認められません。

法律上、次ののいずれかの要件を満たす場合に限り、廃除事由が認められます。

 

  1. 被相続人に対し虐待・重大な侮辱をした場合
  2. その他著しい非行があったとき

 

第八百九十二条

遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

 

 

遺言書で相続人を廃除できる

遺言書で廃除する

相続人の廃除には、

 

  • 生前廃除:被相続人の生前に廃除する方法
  • 遺言廃除:遺言書によって廃除する方法

 

の2種類があります。

 

遺言書で相続人の廃除が定める場合、被相続人の死後に廃除の手続きを行うことになるため、必ず遺言執行者を選任しなければなりません。そのため、遺言廃除を行うにあたっては、必ず遺言執行者についても遺言書で定めておきましょう

 

遺言書で定められた遺言執行者は、遺言者の死後に、廃除の審判を家庭裁判所に対して請求し、審判を受けたあとに市区町村に届出をすることによって手続を遂行することになります。

 

第八百九十三条

被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

 

 

5.遺言執行者を指定できる

遺言執行者

遺言者は自らが遺した遺言書の内容が実現されることを確認することができません。

そこで、遺言書で定めたことを遂行してくれる人が欲しいということもあるでしょう。

そこで法律では、遺言書で定めたことを遂行する「遺言執行者」というものが認められています。

 

遺言執行者は、遺言者の死後、遺言者のために動く“エージェント”ともいえる存在です。遺言書に定めておけば、この遺言執行者を選任することができます。

 

第千六条

遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

第千十五条

遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。

 

 

遺言書を実現する「遺言執行者」

遺言執行者

遺言執行者とは、遺言書の内容の実現を任された人をいいます。さまざまなことを遺言書で定めたところで、実際に実現されなければ遺言書を遺す意味がありません。

 

そこで、遺言書に定められた事項を遂行し、実現する人が必要となります。

 

 

遺言執行者が行うべきこと

遺言執行者は、相続人の代理人として相続財産の管理や登記手続などを行います。

 

登記手続きなどは本来、相続人全員が関与しなければなりません。

しかし、遺言執行者を選任しておけば、遺言執行者だけで手続きを進めることができ、面倒な手続きを回避してスムースに相続を運ぶことができます。

 

また、そもそも遺言執行者でなければできない行為もあります。

たとえば、遺言書による認知や、相続人の廃除・取消しなどです。そのため、これらの行為を行うためには遺言執行者の選任が必須となります。

 

第千十二条

遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

 

 

遺言執行者を指定する方法

遺言執行者の指定方法

遺言書で遺言執行者を指定することができます

具体的には、遺言書に「〇〇を遺言執行者に指定する」と記載することで足ります。

指定を受けた者は、遺言執行者に就任するか否かを返答することになり、その者が受諾すれば遺言執行者となります。

 

 

6.子どもを認知できる

遺言書による認知

遺言書といえば、「遺産のことを定めたもの」というイメージが強いのですが、実はそれだけではありません。

遺言書では「認知(にんち)」をすることもできるのです。

 

第七百八十一条 2 

認知は、遺言によっても、することができる。

 

 

認知とは?

認知とは、婚姻関係のない男女の間に生まれた子どもと父親との間に親子関係を生じさせる行為をいいます。

 

遺言書によって認知する場合は、必ず遺言執行者を選任しなければなりません。

選任された遺言執行者は就任の日から10日以内に、遺言書の謄本を添付した上で、認知の届出を行う必要があります。

 

 

7.未成年後見人を指定できる

未成年後見人

死後に心配になるのは、何も自分の遺産の行方だけではありません。

未成年の子を遺して亡くなる場合、子の行く末を案じるようなケースもあります。

このような場合、残された未成年のために、「未成年後見人」を選任することもできます。

 

第八百三十九条

未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。

 

 

未成年後見人とは?

未成年後見人とは、特定の未成年者を守る・後見する役割を負う者をいいます。

日本の法律では、20歳未満の者は「未成年」として親権者の親権に服するという制度になっています。

 

しかし、両親が2人とも亡くなってしまったり、血縁上の親はいてもその親が親権を適切に行使することが期待できないケースがあります。

そのような場合に、未成年後見人を選任し、この未成年後見人が未成年の世話をすることになります。

 

【関連記事】後見人とは?相続時に利用すべき後見制度の基礎知識

 

 

遺言書による未成年後見人の指定

遺言書による未成年後見人の指定

この未成年後見人の選任は、遺言書によってすることができます。

たとえば、母親がすでに亡くなっており、父親が1人で子を育てていたが、この父も余命が短いということが発覚した時に、遺言書で「〇〇を未成年後見人に指定する」と記載するという具合です。

 

そのほかにも、離婚した元配偶者に親権を渡したくないという場合にも、この未成年後見人の指定がなされます。

この方法で、自分の信頼できる人に、自分の子どもの将来を安心して任せることができるのです。

 

 

8.遺留分減殺請求の方法を指定できる

遺留分減殺請求

遺言書では、遺留分減殺請求方法の指定もすることができます。

 

 

遺留分減殺請求とは?

遺留分とは相続人が最低限取得できる遺産の割合をいいます。遺

言書によって、前述のとおり遺産の行く先をある程度自由に決めることはできますが、それでも相続人はこの遺留分の限度で遺産を取得することができます。

 

たとえば、相続人が長男と次男と三男の3人というケースで、遺言書で「遺産は全て長男と次男だけに相続させる」と定めた場合、

  • 長男:遺産を相続できる
  • 次男:遺産を相続できる
  • 三男:遺産を相続できない?

 

このままだと、三男の相続分はゼロになってしまいます。

 

当事者が納得の上でこのような定めになったのであれば問題はありません。

しかし、そうではない場合、三男は遺留分の限度で長男と次男から遺産を取り戻すことができます。

この遺産を取り戻す請求のことを「遺留分減殺請求」といいます。

 

第千三十一条

遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。

 

【関連記事】〈遺留分とは?〉遺留分の割合・計算方法を徹底解説!

 

 

遺留分減殺請求の「方法」を指定する

遺留分減殺方法の指定

遺留分減殺請求は、誰に対しても、どの財産に対しても自由にできるというものではない、というのが原則です。

 

「あいつは気に食わないから、あいつだけから全額とってやろう」

ということはできません。「どの財産を」「どのような割合で」減殺することができるかということは、あらかじめ法律で決められているのです。

 

しかし、遺言書で「遺留分減殺請求方法の指定」をすることで、法律に従うことなく、遺言書で指定されたとおりに遺留分減殺請求をすることができます

たとえば、「まずは長男から減殺して、次は次男」というように遺言書で定めたり、「まずは預金から減殺して、次は自宅家屋」と定めたりすることになります。

 

 

9.遺贈を行うことができる

遺贈

「遺産は相続人にしか引き継げない」

相続にはこのようなイメージがあるかと思いますが、実は遺言書によって、相続人でない他人にも財産を譲ることができます。

これを「遺贈(いぞう)」といいます。

 

第九百六十四条

遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。ただし、遺留分に関する規定に違反することができない。

 

 

遺贈とは?

遺贈とは、遺言書により遺言者の財産を他の者に譲り渡す行為をいいます。

 

特定の相続人に遺産を譲り渡したいのであれば、遺言書で相続割合を指定したり、遺産分割方法を指定するという方法があります。

しかし、遺贈であれば、相続人以外の者に対しても遺産を譲り渡すことができるのです。

 

 

特定遺贈と包括遺贈

遺贈には、

 

  • 包括遺贈:財産の割合を指定して遺贈すること
  • 特定遺贈:特定の財産を指定してする遺贈のこと

 

の2種類があります。

 

 

包括遺贈とは?

包括遺贈とは、特定の財産ではなく、財産の割合を指定して遺贈することをいいます。

たとえば、「全財産を〇〇に遺贈する」「財産の半分を〇〇に遺贈する」というように遺言書に定める場合です。

 

包括遺贈の場合、受遺者(じゅいしゃ。遺贈を受ける者)は、実質的に相続人と同一の地位に立つことになるため、割合に応じたプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も受け継ぐことになります。この点にはご注意ください。

 

 

特定遺贈とは?

一方、特定遺贈とは、特定の財産を指定してする遺贈のことをいいます。

たとえば、「家を〇〇に遺贈する」と遺言書に定める場合がこれにあたります。

 

 

「付言事項」を使ってできること

遺言書の付言事項

遺言書に書くべき内容には、これまで挙げたもののほかに、法律上の効果のない「付言事項」というものもあります。

 

 

付言事項とは?

付言事項とは、遺言書の記載ではあるものの法律効果が直接生じないものをいいます。

たとえば、自分が死んだ後の葬儀・法事についてのことや、家族へのメッセージなどがこれにあたります。

 

 

付言事項の大切な役割

付言事項に法律的な効果はありません。

しかし、実際に果たす役割が非常に大きいことがあります。

 

たとえば、相続争いが生じ、親族がピリピリしたムードであったのに、付言事項のメッセージを読んだ途端、心の鎖が解けて和やかに手続が進むというケースはいくつも存在します。

 

付言事項の効果は決して小さくありません。

むしろ、無味乾燥とした記載よりも、付言事項の方がよっぽど相続争い回避に役立つのかもしれません。

 

遺言書にも種類がある

pixta_16938012_m

「遺言書」と言っても、実は様々な種類の遺言書があります。

 

遺言書の種類によって、守らなければいけない形式、メリット・デメリットが異なるので、違いをきちんと把握しておく必要があります。

 

 

普通方式と特別方式

大きく分けて、遺言書には、

 

  • 普通形式
  • 特別形式

 

の2種類があります。

 

普通形式は、一般的にイメージされる“普通”の遺言書です。他方、特別形式の遺言書は、死期が迫っている、隔絶された状態にあるなど、特別の事情がある場合になされるものです。

 

 

普通方式の3つの遺言書

遺言書の種類

普通形式の遺言書には、

 

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

 

の3種類があります。

 

 

自筆証書遺言

自筆証書遺言

ここでは、自筆証書遺言について解説していきます。

 

自筆証書遺言とは?

「自筆証書遺言」とは、遺言者が、遺言書の全文、「日付」、「氏名」を“自書”し、これに「押印」する方式の遺言です。

 

 

自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言のメリット・デメリット

自筆証書遺言のメリットとしては、

 

  1. 自分で作成するため、手軽に作成できること
  2. 作成に費用がかからないこと

 

の2つが挙げられます。

 

 

自筆証書遺言のデメリット

自筆証書遺言のデメリットには、

 

  1. 遺言書に形式や内容の不備が出てしまうおそれがあること
  2. 内容が曖昧であったり、趣旨が不明確なものとなってしまうおそれがあること

 

があります。

 

特に、1のデメリットについては、遺言書そのものが無効になってしまうこともあるため、注意が必要です。

 

 

 

公正証書遺言

公正証書遺言

ここでは、公正証書遺言について解説していきます。

 

公正証書遺言とは?

公正証書遺言とは、公証役場で、公正証書として作成される遺言書のことをいいます。

この「公正証書」とは、法律の専門家である公証人が作成する公文書のことをいいます。

つまり、公正証書遺言は、プロに作成してもらう遺言書といってもよいでしょう。

 

 

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言には、

 

  1. 法律の専門家が作成してくれるため、形式や内容に不備が生じるおそれがないこと
  2. 遺言をするにあたって適切なアドバイスも受けることができるため、遺言者の意思をより正確に叶えることができること
  3. 遺言書は公証役場に保存されることになるため、紛失したり、他の人に捨てられたり、偽造される心配がないこと

 

というメリットがあります。

 

 

公正証書遺言のデメリット

公正証書遺言のデメリットとしては、

 

  1. 手数料というコストがかかること
  2. 証人を立てる必要があるため手間もかかること
  3. 遺言の内容を秘密にできないこと

 

が挙げられます。

 

 

秘密証書遺言

秘密証書遺言

ここでは、秘密証書遺言について解説していきます。

 

 

秘密証書遺言とは?

秘密証書遺言は、その「内容」を誰にも知られたくない場合に作成される遺言書です。

相続放棄の無料相談窓口、弁護士が対応、2往復無料

 

公正証書遺言と同様に、秘密証書遺言の作成にも公証人が関与します。

ただし、公正証書遺言と異なり、公証人が関与するのは「遺言書を封印する」ところだけであり、遺言書の“存在”を公証するだけで“内容”まで保証するものではありません。

秘密であるため、内容は誰にも見られないのです。

 

したがって、公正証書遺言ほど安心できるものではなく、あまり使われることもないタイプの遺言書です。

 

 

秘密証書遺言のメリット

秘密証書遺言のメリット・デメリット

秘密証書遺言のメリットには、

 

  1. 遺言書の“存在”を公証することができるため、遺言書が本物であるかどうかを巡る争いを心配する必要がないこと
  2. 遺言者以外誰も内容に関与しないため、完全に秘密にできること

 

が挙げられます。

 

 

秘密証書遺言のデメリット

秘密証書遺言のデメリットとしては、

 

  1. 公証人に依頼する際の手数料が発生すること(もっとも、公正証書遺言よりは安いです)
  2. 2人の証人を手配しなければならないこと
  3. 公証人が“内容”に関与しないため、形式・内容に不備がある危険を払しょくできないこと

 

が挙げられます。

 

 

特別方式の2つの遺言

以上に紹介したのが一般的に使われる「普通形式」の遺言書ですが、そのほかにも例外的な場面で利用される「特別形式」の遺言書も存在します。

具体的には、

 

  • 危急時遺言
  • 隔絶地遺言

 

の2種類の遺言書です。

ほとんど使われることがない遺言書ですので、簡単に解説していきます。

 

 

危急時遺言

「危急時遺言」とは、病気や事故などで遺言者に死亡の危急が迫っているときの遺言書をいいます。

 

緊急事態ということで、普通形式の遺言のような厳格な様式が要求されず、証人に対して口頭で遺言をすることが許されています。これらは例外的な措置であるため、遺言作成後20日以内に家庭裁判所に遺言を提出し、確認を経なければ遺言は無効となってしまいます。

 

第九百七十六条

疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。

 

 

隔絶地遺言

隔絶地遺言は、他者と隔絶された状態にいる者が作成する遺言書をいいます。

隔絶地遺言には、

 

  • 一般隔絶地遺言:伝染病隔離や刑務所服役のために隔離された者が作成する
  • 船舶隔絶地遺言:船舶に乗船している者が作成する

 

の2種類があります。

 

一般隔絶地遺言には、警察官1人と証人1人の立会いが必要となります。一方、船舶隔絶地遺言には、船長又は事務員1人と証人2人の立会いが必要となります。

 

第九百七十七条

伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。

第九百七十八条

船舶中に在る者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。

 

 

自筆証書遺言の作り方

pixta_10750304_m

では、各遺言の種類を知っていただいたところで、次は作り方について見ていきましょう。遺言書の作成にあたっては厳格な形式を遵守しなければいけません。間違えて遺言書を無に帰してしまうことのないように、しっかり熟知しておきましょう。

 

 

自筆証書遺言の必須記載事項

自筆証書遺言の作成にあたっては、以下の記載・形式が要求されます。

 

 

必ず手書きで書く

遺言書は必ず「自書」つまり、遺言者自身の手書きで作成しなければいけません。

 

なんでもかんでもパソコンで文書を作成する時代ではありますが、遺言書だけは手書きでなければいけません。一部でもパソコンで書いてしまったり、遺言者以外の人が書いてしまった部分があると、即、遺言書が無効となってしまします。代筆も許されません。

 

 

遺言書の作成年月日

年月だけでなく、「日付」まで明確に記載する必要があります。

 

たとえば、「2013年12月吉日」では無効とされます。ただし、「2013年の私の誕生日」のような記載ですと日が確定できますので有効とされます。なお、「年」については、西暦でも和暦でも構いません。

 

 

署名

必ずしも遺言者の戸籍上の氏名でなくとも、通称・ペンネーム・芸名でも有効とされます。

 

遺言者が誰であるのかを明確にできればよいためです。ただ、変に揉めたりしたくないのであれば、やはり戸籍上の氏名が一番安全です。また、当然ですが、署名なので本人が手書きでしなければいけません。

 

 

押印

実印でなくとも認印でよく、指印(親指やその他の指頭に朱肉をつけて押捺すること)でも構いません。ただ、やはりここでもトラブルを避けるべく、実印が一番安心です。

 

第九百六十八条

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 

 

自筆証書遺言には「検認」が必要

相続開始後に、自筆証書遺言は、家庭裁判所で「検認(けんにん)」してもらわなければいけません。

 

検認とは?

検認とは、遺言書が偽造されたものでないか等を家庭裁判所が審査する手続きをいいます。この検認の手続きを経ないまま遺言を執行した場合、5万円以下の過料に処せられるため、注意しましょう。

 

第千四条
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

 

 

公正証書遺言の作り方

公正証書遺言は公証役場で公証人という法律のプロに作成してもらう遺言書をいいます。

 

公証役場ってどんなところ?

公証役場は、公正証書を作ったり、会社設立の際に定款を認証したりするところです。最寄りの公証役場がどこにあるかが分からないときは、「日本公証人連合会」に問い合わせてみましょう。

 

全国公証役場所在地一覧

 

 

公正証書遺言はどうやって作成するのか?

自筆証書遺言と異なり、公正証書遺言は、遺言者一人で作成することはできません。公正証書遺言を作成するには、次の手順を踏む必要があります。

 

 

遺言書の中身を整理する

公正証書遺言の作成にあたって、まずは遺言書の内容を遺言者がご自身で整理しておきましょう。この際、弁護士に内容をご相談の上で公証人に作成を依頼すると、スムースに公正証書遺言を作成することができます。また、相続税が発生することが見込まれる場合には、税理士にもご相談されるのがよいでしょう。

 

 

証人が必要

公正証書遺言を作成するためには、2人以上の証人(遺言の作成に立ち会い、遺言者・公証人と共に遺言に署名・押印する者です)が必要となります。そのため、予め証人となってくれる人を準備する必要があります。

 

 

証人には制限がある

証人は誰でも良いというわけではありません。たとえば、未成年や相続人、相続人の配偶者などは証人となることができません。なぜなら、これらの者は遺言に強い利害関係を有しているためです。そのため、証人の依頼にあたっては注意が必要です。もっとも、証人が見つけられない場合には、公証役場で紹介(有料)してもらうことも可能です。

 

これらの準備をした上で公証人と打ち合わせを行い(打ち合わせ段階では証人の立会いは不要です)、内容がまとまれば証人・公証人・遺言者の立会いの下、公正証書遺言を作成することになります。

 

第九百六十九条

公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

 証人二人以上の立会いがあること。

 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。

 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。

 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。

 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

 

 

公正証書遺言の作成費用はどれくらい?

公正証書遺言の作成にあたっては、公証役場に手数料を支払う必要があります。作成手数料は、遺言の目的財産の価格によって変わります。具体的には、次のように定められています。

 

【財産の価格/手数料】

 

財産価格 手数料
~100万円 5,000円
~200万円 7,000円
~500万円 11,000円
~1,000万円 17,000円
~3,000万円 23,000円
~5,000万円 29,000円
~1億円 43,000円
~3億円 5,000万円ごとに13,000円加算
~10億円 5,000万円ごとに11,000円加算
10億円超~ 5,000万円ごとに8,000円加算

 

※手数料は、相続する人ごとに計算されます

※財産の総額が1億円未満の場合、11,000円が加算されます

 

 

公正証書遺言の作成手数料の計算例

たとえば、遺言書で長女に2,000万円、長男に1,000万円を相続させる場合の手数料は次のように計算されます。

長女分:23,000円

長男分:17,000円(長男分)

財産総額が1億円未満であるため加算:11,000円

総額:51,000円

 

 

秘密証書遺言の作り方

秘密証書遺言の作成上の注意事項

基本的には、自筆証書遺言と同様ですが、いくつか違いがあるため、以下ではその違いの部分にしぼってご説明いたします。

 

 

手書きしなければいけないのは署名だけ

自筆証書遺言と異なり、内容の部分については手書きする必要がありません。つまり、他の人に代筆してもらったり、パソコン等で作成しても大丈夫なのです。ただし、署名についてはきちんと手書きでかかなければいけないので、うっかりワープロ等で済ませてしまわないよう気をつけましょう。

 

 

作成年月日は不要

自筆証書遺言では作成年月日の記載が必須でしたが、秘密証書遺言は記載する必要はありません。これは公証役場で公証人が記載してくれることになっています。

 

 

封印をする

秘密証書遺言の肝は「秘密」であることにあるため、他の種類の遺言書と異なり、封印をする必要があります。遺言書を作成したら、封筒に入れて密封した上、封をしたところに押印しましょう。この押印の際に用いた印鑑は、遺言書の押印で使った印鑑と同じものでなければいけません。

 

 

公証役場で手続きをする

遺言書を作成(封印まで)したら、公証役場にこれを持って行きます。この際、証人を2人連れていく必要があります。

 

公証人と共に秘密証書遺言の作成手続を完了したら、その遺言書は自分で持ち帰って保管することになります。公証役場での手続きをするにあたっては、公正証書遺言と同様手数料がかかりますが、公正証書遺言とは異なり、手数料は一律11,000円とされています。

 

 

検認が必要

自筆証書遺言と同様、秘密証書遺言も家庭裁判所での検認が必要です。発見しても、勝手に開けたりしてはいけません。

 

第九百七十条

秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。

 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。

 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。

 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

 

 

遺言書を書くときの注意点

遺言書では、様々なことができて便利な反面、作成するにあたって様々な形式や、要件など種々のルールの順守を要求されます。

 

手間暇をかけて遺言書を作成したのに、思い通りの効果をあげることができないというのでは最悪です。特に、遺言書は遺言者の死後に効力が生じるものであるところ、死んだ後になって「だめでした」となっては取り返しがつきません。

 

そこで、抜かりなく遺言書を作成できるよう、以下では作成にあたっての注意点について解説していきます。

 

 

「遺留分」は遺言書によっても侵害できない!

相続人には「遺留分」という最低限取得できる遺産の割合が認められています。遺言書で相続割合を指定したり、遺贈をする場合には、相続人の遺留分を侵害することにならないか注意すべきでしょう。もしも遺留分を侵害していれば、遺留分減殺請求に関する新たな紛争が生じかねません。

 

もっとも、遺留分を侵害するような遺言書であっても、無効にはならず、一応有効に効果は発生します。その後に遺留分減殺請求をするかどうかは権利者の選択に委ねられているのです。そのため、相続人が納得しているのであれば、遺留分を侵害するような遺言書であっても問題ないでしょう。

 

 

遺言書の形式に不備があると全部無効

自筆証書遺言や、秘密証書遺言を作成する場合、一番注意しなければいけないのが形式の不備です。遺言書に作成日付が入っていなかったり、ワープロで作成してしまった場合、法律上の効力は一切発生しないただの紙切れになってしまうおそれがあります。この形式の不備が怖いからこそ、遺言書は公正証書遺言の形式で作ることをおすすめします。

 

 

認知症だと遺言書は作れない?

認知症患者が遺言を作成しようとする場合、その遺言が有効であるかどうかが問題となるため注意が必要です。

 

 

遺言能力がないと遺言書が無効になってしまう

認知症に罹患している場合、正常な判断能力が失われていることにより、遺言能力がないと判断され、遺言書を作成しても無効となる可能性があります。したがって、認知症患者に遺言書を書かせても、あとで無効となってしまう可能性があることに注意しましょう。

 

第九百六十三条

遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

 

 

遺言能力の有無の判断は難しい

そもそも遺言能力が失われているかどうか、というのは非常に難しい判断となります。

 

たとえば、父親が認知症の薬を飲んではいるが、判断能力が全く失われたという程ではない状態で遺言書を作成した、というようなケースです。このような場合に100%遺言が無効となるとは限りません。

 

認知症にも程度があり、短期記憶力が欠如していても(すぐに物忘れをしてしまう)、物事は正常に理解できる程度の状態であれば、遺言書は有効となります。要は、遺言能力の有無の判断はケースバイケースということになります。

 

 

遺言能力の有無が紛争のタネになる

遺言能力の有無は、遺言者の死後、相続人の間で争われることがあります(「遺言当時、すでに遺言能力があった!」「なかった!」という争いです)。せっかく遺言書を作成しても、認知症を理由に遺言能力の有無に疑いが生じることになれば、これをめぐって争いが生じることになってしまいます。

 

「遺言能力があった」ということをはっきりさせておくために、遺言書の作成にあたっては医師の診断書を受け、遺言能力があったことを証拠として残しておきましょう。

 

 

遺言書の保管方法

 

遺言書を簡単に発見されたくない場合

遺言書を作ったらそれで終わりというものではありません。遺言書を作り終わったあとのこともしっかりと考えておくべきです。

 

遺言書は、遺言者の死後に効果が発生するものであるため、遺言書を作成してから遺言者が死亡するまでの間に時間差があります。そのため、その間遺言書をどこに保管すべきか悩む場合があるのです。

 

 

遺言書が発見されると困る場合

よくあるのが、同居の親族が遺言書を発見し、それが自分に都合の悪いものであると分かると隠してしまったり、捨ててしまったりする場合です。せっかく遺言書を作っても、いざ遺言者が亡くなったときに遺言書が無くなってしまっていたら台無しです。そのため、このようなことが起こらないよう、遺言書の保管には気をつけなければいけません。

 

 

遺言書を勝手に開けたり、破棄したりするとペナルティがある

もちろん、遺言書を隠したり、捨てたりするような横暴は、法が許しません。

 

 

開封の前に必ず検認を!

先もご説明しましたが、自筆証書遺言と秘密証書遺言については、勝手に開封してはいけません。見つけたらすぐ家庭裁判所に持って行って検認をしてもらわなければいけません。検認を経ずして開封した場合、5万円以下の過料に処せられます。なお、公正証書遺言であれば、検認の手続を経る必要がありません。

 

 

隠したり、捨てたりした相続人は相続資格を失う

相続人が、発見した遺言書を書き換えたり・隠したり・捨てたりすると「欠格」といって、その人は相続人たる資格を失います。この欠格は、前述の「廃除」と異なり、何らの手続も減ることなく、当然に相続人たる資格を失うことになります。つまり、その人はもはや何も相続できなくなってしまいます。

 

第八百九十一条

次に掲げる者は、相続人となることができない。

 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

 

 

隠したり、捨てたりすると刑罰の対象になる

遺言書を隠したり、捨てたりする行為は、刑法上の私文書毀棄罪にあたり、場合によっては5年以下の懲役に処せられることになります。

 

 

事前の予防策が何より大切!

このように、遺言書を隠したり捨てたりする行為に対しては当然ペナルティが科されることになっています。

 

とはいえ、遺言者以外には誰も遺言書の存在を知らなかったのに、たまたま遺言書を発見した相続人が捨ててしまった場合は、もはやどうしようもありません。このように、ひっそりと闇に葬られる遺言書もあるのです。

 

そのため、そもそも遺言書を隠されたりしないようにするためにはどうすべきかをきちんと考えて予防策を立てておくことが何よりも大切なのです。

 

 

ずっと発見されないままというのも困る

遺言書を絶対に見つからない場所に隠してしまった結果、ずっと発見されないのでは意味がありません

 

遺言書がないと思って遺産分割をして、その後数十年後にひょっこり遺言書が出てきても、もはや後の祭りです。今さら遺産分割を無かったことにする方が大変です。そのため、遺言書の保管にあたっては、きちんと自分の死後に発見されるように配慮することも重要なのです。

 

 

遺言書を簡単に発見されないようにする方法

遺言書をどのような形で保管しておくのが良いのでしょうか?

ここではいくつかの方法をご紹介します。

 

 

銀行の貸金庫に保管する

まずは、銀行の貸金庫に保管しておくという方法が挙げられます。

 

銀行の貸金庫に保管することのメリットは、

 

  1. 盗難や紛失のおそれがないこと
  2. 自宅で家族に盗み見られることがないこと

 

の2つです。

 

一方、デメリットは、

 

  1. 貸金庫の使用料がかかること
  2. 金庫を開けるために、相続人全員の同意が必要になること

 

の2つです。

 

 

信頼できる知人に預けておく

遺言書を信頼できる知人に預けておくことも考えられます。

 

この方法のメリットは、

 

  1. 相続に利害関係がない人に預けるのであれば、捨てられるリスクが低いこと
  2. 遺言者が死亡した際、その知人から相続人に遺言書を渡してもらえるようお願いしておけること

 

の2つでしょう。

 

一方、デメリットは、

 

  1. 素人に預けると、紛失されてしまうおそれがあること
  2. 重い責任を嫌って、相手が引き受けたがらない可能性があること

 

の2つでしょう。

 

 

公正証書遺言を利用するのが安心

もっとも安心な方法は、公正証書遺言を利用する方法でしょう。公正証書遺言であれば、遺言書の内容面で心配する必要はありませんし、保管についても公証役場で預かってもらえるため安心です。

 

 

遺言書の撤回・変更

遺言書を作成した後、遺言書の内容を変えたくなったり、なかったことにしたいと思うこともあるでしょう。そのような場合はどうすればよいのでしょう?

 

 

撤回・変更はいつでも可能

遺言書は、いつでも撤回・変更が可能です。

 

第千二十二条

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

 

遺言書は作成したものの、あとで事情が変わって遺言書を撤回したり、内容を書き換えたりしたくなった場合には、いつでもすることができます。ただし、遺言書の 撤回や内容の変更は、

 

「遺言書の破棄」

「新たな遺言書の作成」

 

によることになります。

 

 

遺言書の破棄

遺言書を捨てたり燃やしたりして、遺言書そのものを消滅させてしまうことを遺言書の破棄といいます。

自筆証書遺言や秘密証書遺言が手元にある場合、手元にある遺言書を破棄すれば遺言書が存在しない状態になります。

 

ただし、ここでご注意いただきたいのは、遺言書の作成者は「遺言書はなかったことにしてくれ!」と口頭で発言しても、遺言書の実物が現存する限り、遺言書が撤回されたことにはならないことです。遺言書を撤回したいのであれば、必ず遺言書を破棄するか、後述するように新たな遺言書を作成する必要があります。

 

第千二十四条

遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

 

 

公正証書遺言は破棄できないので、新しい遺言書の作成が必要

公正証書遺言の場合、遺言書の原本は公証役場に保管されています。手元にある正本・謄本を破棄しても遺言書は撤回されません。

そのため、公正証書遺言を撤回するためには、新たな遺言書を作成する必要があります。

 

 

新しく遺言書を作り直す

新しく遺言書を作り直す場合について解説していきます。

 

 

口頭やメモではダメ!

遺言書の内容を変更するためには、新たな遺言書を作成する必要があります。

 

これは法律上、遺言書を変更をするためには、原則として「遺言の形式によらなければならない」ためであり、たとえ口頭やメモなどに変更の意思を表示していたとしても、何らの効果も生じないため注意しましょう。

 

単に遺言書の内容を撤回したいのであれば、「以前の遺言書を撤回する」という旨の遺言書を新たに作成することになります。

内容を修正したり、変更したい場合は、その旨を記載した遺言書を作成することになります。

 

 

 「遺言書」であれば形式は問わない

遺言書の変更は「遺言の形式によらなければならない」と書きましたが、逆に遺言書の形式であれば自筆証書遺言であっても公正証書遺言であっても大丈夫です。

たとえば、以前作った公正証書遺言を変更する場合は、公正証書遺言だけでなく、自筆証書遺言を新たに作成することによってもすることができます。

 

もっとも、自筆証書遺言は紛失・改ざんのおそれがある点で不安もあるため、やはり公正証書遺言による方が安心です。

 

 

複数の遺言書が併存する場合、どの遺言書が優先されるか?

前に作った遺言書を破棄することなく、新しい遺言書を作成したような場合、この世に同じ人の遺言書が2通存在することになった、というケースがあります。

この場合、どちらの遺言書が優先されると思いますか?

 

その答えは、新しい遺言書です。遺言書が複数存在する場合は、後に作られた遺言書(より新しい作成日付の遺言)の内容が優先されることになります。

たとえば、以前の遺言を撤回する旨の遺言書が後に作成された場合は、以前の遺言書は無効になります。

 

また、撤回する旨の記載がない場合でも、内容に矛盾がある場合には、やはり後の遺言が優先されることになります。

たとえば、「家を長男に相続させる」という旨の遺言書が作られたあとに「家を次男に相続させる」という旨の遺言書が作成された場合は、これらの遺言の内容が矛盾するため、後に作られた遺言が優先され次男が家を相続することになります。

 

 

遺言書を撤回したとみなされる場合に要注意!

遺言書を破棄したり、新しい遺言書を作成すると、遺言書が撤回されるという話をしました。

しかし、遺言書が撤回されるのはこのような場合だけではありません。

 

遺言書の内容と矛盾する行動を遺言作成者がとった場合、遺言を撤回したとみなされます。

これは、遺言の形式によることなく遺言が撤回されたとみなされるパターンです。

たとえば、「長男に家を相続させる」という遺言を作成しておきながら、生前に家を次男に贈与したような場合がこれにあたります。

この場合、遺言作成者の行動は遺言の内容と矛盾するため、遺言が撤回されたとみなされます。

 

第千二十三条

前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。

 

 

遺言書の発見とその後の手続き

その後の相続手続き

 

遺言書を発見した人はどうすればいいのでしょうか?

 

ここでは、“遺言書を見つけた側”の目線から、遺言書の発見とその後の手続を見ていきましょう。

 

 

まずは遺言書があるかどうかを確認する

遺言書の「発見」の前に、「そもそも遺言書が残されているのか」ということが前提として問題となります。

遺言書の有無の確認は非常に重要です。

遺言書があれば、遺産分割協議のあり方などその後の手続が変わってきますし、これらが終わった後になって「遺言書が実はあった」ということになると非常に面倒なことになります。

 

そのため、被相続人が死亡したら、相続人はまず遺言書の有無を確認すべきです。

 

 

自筆証書遺言の有無を確認する

遺言書の有無を確認

自筆証書遺言は、遺言者自身が保管するものであるため、これを探すにあたっては相続人が自力で頑張らなければいけません。

まずは遺言者の自宅をくまなく探すことになります。

 

また、自宅以外にも知人・友人が保管している場合もありますので、遺言者が亡くなった旨を方々に連絡するうちに、これらのうちの誰かが遺言書について教えてくれる場合もあります。

 

弁護士や銀行に預かってもらっている場合には、それらとの繋がりを示す郵便などがあるかもしれないので、自宅を探す過程でこれらを見つけたら、そこに連絡を取ってみるという方法もあります。

 

 

公正証書遺言の有無を確認する

公正証書遺言の有無を確認

公正証書遺言は、公証役場で保管されているため、相続人はまず公証役場に問い合わせてみましょう。

問い合わせ先は、最寄りの公証役場でもどこでもかまいません。全国の公証役場はネットワークでつながっているため、どこにでも照会が可能だからです。

 

もっとも、問い合わせができるのは相続人などの利害関係人だけであり、問い合わせにあたって以下の書類が必要となるため注意しましょう。

 

 

【公正証書遺言の問い合わせに必要な書類】

  • 遺言者が死亡したことを証明する書類(除籍謄本、死亡診断書など)
  • 問い合わせをした者が利害関係人であることを証明する書類(戸籍謄本など)
  • 身分証明書(免許所など)

 

 

秘密証書遺言の有無の確認

秘密証書遺言の有無を確認

秘密証書遺言も、自筆証書遺言と同じく遺言者自身が保管するものであるため、自力で探す必要があります。

もっとも、秘密証書遺言が作成された事実については公証役場で確認することができるため、問い合わせをすることによって少なくとも「遺言が存在している」ということは分かります。

 

 

遺言書を見つけたらまず検認を!

検認

前にも述べましたが、遺言書を見つけてもすぐに開封してはいけません!

自筆証書遺言と秘密証書遺言であれば、必ず家庭裁判所で検認を経なければならず、これを経ずして開封してしまうと5万円以下の過料に処せられます。

もっとも、万が一開封してしまったとしても、遺言自体は無効にはなりません。

万が一開封してしまっても、きちんと家庭裁判所で検認の手続を経ましょう。

 

「過料をくらうのが嫌だから」という理由で遺言書をそのまま破棄してしまうと、欠格事由にあたり、相続権を失うことになってしまいますので注意が必要です。

 

 

法定相続人への連絡

遺言書が見つかったら、法定相続人に連絡をとり、遺言書がある旨を伝えましょう。

そこで、法定相続人間で遺産分割協議の進め方(遺言ですべて指定されていれば不要)や、誰が相続人であるのかを話し合う必要があります。

 

 

 相続人・財産調査

相続人・相続財産調査

遺言書の内容にしたがい遺産分割をするにあたって、相続人が全員そろっているのかどうかは必ず確認する必要があります。

特に、遺産分割協議が必要な場合は、相続人全員がそろっていない状態で協議をおこなったところで、その協議は無効になってしまいます。

そのため、遺産分割協議の直前に必ず相続人全員いるかどうかを確かめましょう。

 

また、遺言者がどんな財産を有していたのかを調査しなければ、遺産分割手続を進めることができないため、相続財産の調査も必ず行う必要があります。

預貯金や土地や建物といったプラスの財産についてはそれほど問題にはなりませんが、借金などマイナスの財産については、相続放棄をするかどうかの判断にあたって財産の内容がきわめて重要になるため、ご注意ください。

 

【関連記事】〈相続放棄とは?〉相続放棄の手続き・必要書類を徹底解説!

 

 

遺産分割協議が成立したあとに遺言書が見つかった場合

遺言書がないと思って遺産分割協議を済ませてしまったところ、あとになって「実は遺言書があった!」というケースがあります。この場合、非常にやっかいな事態になることがあります。

 

 

相続人全員の合意があれば、遺言書にしたがう必要はない

従う必要はない

遺言書がある場合、遺産分割手続は遺言書の内容にしたがうのが原則であることは述べました。

もっとも、相続人全員の合意があれば、遺言書の内容と異なる内容の遺産分割をすることも可能です。

 

そのため、万が一、遺産分割協議のあとに遺言書が見つかった場合でも、相続人全員が「別にこのままでいいよ」と納得しているのであれば、わざわざ遺産分割をやり直す必要はありません。

 

 

せっかくの遺産分割協議が無効になってしまう場合がある

納得しない相続人がいる場合は厄介です。

たとえば、遺言書の内容よりも、圧倒的に不利な内容で遺産分割協議が成立してしまった相続人がいた場合が考えられます。

 

この場合、形式的には「遺言書の内容と異なる内容の遺産分割協議に合意した」ことになるのですが、これは遺言書がないと思っていたから合意したのであって、もし協議の前に遺言書が見つかっていればこのような合意はしなかったであろうと考えられます。

 

そのため、このような場合、相続人は遺産分割協議の無効を主張でき、今度こそ遺言書の内容通りの遺産分割をやり直すことになります。

 

 

この記事のまとめ

pixta_16621051_m

遺言書の種類から、機能、書き方その他の注意事項などに渡って幅広くご説明いたしました。「遺言書」という言葉はよく聞くものではありますが、様式が厳格であるということや、さまざまな機能があるということは意外と知られていません。

 

遺言書は、相続手続の入り口をなすものです。遺言書があるかないかで、そのあとの相続の手続きもかわってきます。また、「後の紛争を回避する」という大枠としての機能も非常に重要です。一族の末永い平安を守るためにも、やはり遺言書に関する知識は、遺言書を遺す側も、遺言書を受け取る側も双方がひと通りもっておきたいものです。しっかり、来るべき時に備えましょう。

 

このような難しい複雑な手続きであるからこそ、弁護士などの専門家を利用することも選択肢の1つです。専門家に任せることにより、最善の選択をできる可能性がグッと高まります。ぜひご検討ください。

相続放棄の無料相談窓口、弁護士が対応、2往復無料
執筆者: やさしい相続編集部