故人の最期のメッセージともいえる遺言書ですが、現実には無効になってしまう遺言書が多く存在します。

せっかく遺言書を作成しても、無効になってしまっては意味がありません。

 

そこで、ここでは、遺言書が無効になってしまうケースとその対処法について、くわしく説明していきます。

遺言書の作成には厳格なルールがある

自筆証書遺言の作成には厳しいルールがある

実は、遺言書の作成にあたっては、絶対に守らなければならないルールがあります。

このルールを守らないと、遺言書が無効になってしまう可能性があります。

第九百六十条
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

 

 

自筆証書遺言の作成には要注意!

自筆証書遺言の作成には要注意

一般に利用される遺言書には、次の3種類があります。

 

【一般に利用される3種類の遺言書】

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

第九百六十七条本文
遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。

 

中でも自筆証書遺言は多くの場面で利用されますが、それと同時に自筆証書遺言は、作成にあたって最も注意が必要な遺言書だといわれています。

 

 

自筆証書遺言とは?

無効になる危険がある自筆証書遺言とは?

自筆証書遺言は、遺言者ご本人が最初から最後まで作成する遺言書です。

 

自筆証書遺言は、遺言者1人で作成でき、特別な費用もかからないため、お手軽に作成できます。

 

一方で、自筆証書遺言は、遺言者1人で作成できてしまうため、作成にあたって守るべきルールが守られないまま作成され、無効になってしまう可能性が高い遺言書ともいえます。

 

 

そこで、ここでは、自筆証書遺言が無効になってしまうケースを紹介していきます。

 

 

自筆証書遺言が無効になる9つのケース

  1. 15歳未満の方が作成した自筆証書遺言
  2. 遺言能力がない方が作成した自筆証書遺言
  3. 自筆でなく、パソコンなどで書いた自筆証書遺言
  4. 書面ではなく、音声で記録した自筆証書遺言
  5. 代筆された自筆証書遺言
  6. 作成した日付のない自筆証書遺言
  7. 署名がない自筆証書遺言
  8. 2人以上が共同でした自筆証書遺言
  9. 複数の遺言書がある場合

 

 

〈無効になるケース1〉15歳未満の方が作成した自筆証書遺言

15歳未満の遺言書の作成は法律で禁止されている

15歳未満の方は、遺言書を作成できません。

そのため、15歳未満の方が作成された自筆証書遺言は無効です。

 

これは、自筆証書遺言だけでなく、すべての遺言書で共通したルールです。

第九百六十一条
十五歳に達した者は、遺言をすることができる。

 

一般的に、15歳未満の方が遺言書の作成を希望するケースは少ないですが、大切なルールですから念のため押さえておきましょう。

 

 

〈無効になるケース2〉遺言能力がない方が作成した自筆証書遺言

重度の認知症患者は遺言能力がないと判断され、遺言書を作成できないかもしれない

遺言書を作成するためには、遺言者に遺言能力があることが前提となります。

そのため、遺言能力をもっていない遺言者が作成した遺言書は、無効になってしまいます。

第九百六十三条
遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

 

 

遺言能力とは?

有効な遺言書を作成するために必要な遺言能力とは?

遺言能力とは、遺言を有効に作成できる能力、つまり物事を合理的に判断できる力をいいます。

この遺言能力がないと、自筆証書遺言だけでなく、そのほかの公正証書遺言等も作成できません。

 

 

認知症だと遺言能力がない?

認知症だと遺言書を作成できない?

遺言能力について問題となるのが、遺言者が認知症のケースです。

認知症は近年、増加の一途を辿っており、65歳以上の4人に1人が認知症といわれる時代になっています。

 

社会的課題の1つとなっている認知症ですが、認知症患者が遺言書を作成すると無効になってしまうのでしょうか?

 

その答えは、「ケースバイケース」です。

なぜなら、認知症の症状にも程度がありますし、また、そもそも医学的な診断と法的な判断は別物です。

そのため、認知症だからといって、必ずしも遺言書が無効になるわけではないのです。

 

認知症と遺言書のくわしい解説は「遺言書のすべて~やさしい相続マニュアル~」をご参照ください。

 

 

〈無効になるケース3〉自筆でなく、パソコンなどで書いた自筆証書遺言

自筆証書遺言はパソコンで書いてしまうと無効になる

自筆証書遺言は、遺言者が全文を自書しなければなりません。

そのため、パソコンなどで書いた自筆証書遺言は無効です。

第九百六十八条
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 

 

一部だけパソコンで書いても全体が無効に!?

一部だけパソコン書きしても、遺言書の全体が無効になってしまう

では、一部だけが自書ではくパソコンで書かれた遺言書はどうでしょうか?

 

パソコンで書かれた部分だけが無効になるとも考えられそうですが、実は、一部であっても「全文を自書」していませんから、遺言書全体が無効になってしまいます。

そのため、自筆証書遺言を作成する際は、必ず全文を自書するようにしましょう。

 

 

〈無効になるケース4〉書面ではなく、音声で記録した自筆証書遺言

書面でなく、音声で記録した遺言書は無効

自筆証書遺言は、書面で残すことが求められています。

そのため、音声で記録した遺言書は認められず、無効となってしまいます。

 

 

〈無効になるケース5〉代筆された自筆証書遺言

遺言者以外が代筆した自筆証書遺言は無効

自筆証書遺言は、遺言者がその全文を自書しなければなりません。

そのため、遺言者に代わって第三者が書いた自筆証書遺言は認められず、無効になってしまいます。

 

 

〈無効になるケース6〉作成した日付のない自筆証書遺言

作成した日付のない遺言書は無効

自筆証書遺言には、作成日付を記入する必要があります。

作成日付が記入されていない自筆証書遺言は、無効です。

第九百六十八条
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 

 

作成日付は和暦でも西暦でも構わない

自筆証書遺言に記入する作成日付は、和暦でも西暦でも構いません

たとえば、

 

「平成29年3月1日」

「2017年3月1日」

 

であれば、いずれでも構いません。

作成日付を具体的に特定できることが大切だからです。

 

 

作成日付は特定できなければいけない

自筆証書遺言の作成日付は特定できるように記載する

作成日付は、その日が特定できなければなりません。

 

たとえば、

 

「平成29年3月吉日」

「2017年3月某日」

 

のような書き方では、作成日を特定することができません。

このような場合、遺言書全体が無効になってしまいますから、注意が必要です。

昭和54年5月31日 最高裁判所判例
証書の日附として 単に「昭和四拾壱年七月吉日」と記載されているにとどまる場合は、暦上の特定の 日を表示するものとはいえず、そのような自筆証書遺言は、証書上日附の記載を欠 くものとして無効であると解するのが相当である。

 

 

もちろん作成日付も自書する

自筆証書遺言の作成日付も必ず自書する

自筆証書遺言は、すべて遺言者の自書でなければなりません。

これは作成日付についても例外ではありません。

 

もしも作成日付を自書しなかった場合、その自筆証書遺言は無効になってしまいます。

必ず作成日付は書くようにしましょう。

 

 

〈無効になるケース7〉署名がない自筆証書遺言

自筆証書遺言は自筆の署名がないと無効になってしまう

自筆証書遺言には、遺言者が必ず署名しなければなりません。

署名がない自筆証書遺言は無効になってしまいますから、自筆証書遺言には必ず署名するようにしましょう。

 

 

署名はニックネームでもよい!?

署名は必ずしも戸籍上の氏名でなくとも構いません。

たとえば、ニックネームを署名として利用した場合にも、その自筆証書遺言が無効にならない場合があります。

 

 

とはいえ、戸籍上の氏名を使うのが安全

自筆証書遺言には戸籍上の氏名を使って署名するのが安全

ニックネームを署名として使える場合があるといっても、ニックネームは遺言者その人を特定できるものでなければ当然認められませんし、様々な事情を考慮すれば認められないことがあるかもしれません。

 

また、遺言書の「相続トラブルを回避する」という目的に照らせば、自筆証書遺言の署名にニックネームを使用することはトラブルの種になるかもしれませんから、極力控えた方がよいでしょう。

 

 

〈無効になるケース8〉2人以上が共同でした自筆証書遺言

複数人が共同で1つの遺言書を作成することは禁止されている

2人以上が共同で行う遺言を共同遺言といいます。

たとえば、共同遺言は、夫婦2人が1つの遺言書を作成するケースを考えるとわかりやすいでしょう。

 

しかしながら、共同遺言は法律で禁止されており、共同遺言を作成したところで無効になってしまいますから、注意が必要です。

第九百七十五条
遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

 

 

〈無効になるケース9〉複数の遺言書がある場合

複数の遺言書がある場合、作成日付が新しい遺言書が優先される

複数の遺言書がある場合、どの遺言書が優先されるのでしょうか?

あるいは、すべての遺言書が尊重され、どれも有効な遺言書なのでしょうか?

 

実は、遺言書が複数ある場合、作成日付が新しい遺言書が優先されます。

第千二十三条
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。

 

 

複数の遺言書がある具体例

複数の遺言書がある場合、どの遺言書の記載内容が優先されるかを説明するための具体例

平成29年1月1日が作成日付の公正証書遺言と、平成29年3月1日が作成日付の自筆証書遺言があるケースを考えてみましょう。

どちらの遺言者も同一人物で、有効に作成されています。

 

一見すると、法律のプロが作成に関与した公正証書遺言の方が信頼性があり、有効に見えるかもしれません。

しかし、有効なのは「後に作成された遺言書」です。

 

つまり、後から作成された自筆証書遺言に記載された内容が優先されます。

 

 

古い遺言書は早めに破棄しましょう

日付が新しい遺言書が優先されるといっても、複数の遺言書が同時に存在しているという事態は、相続トラブルを防止する観点からは、できる限り避けるべきです。

そのため、新しい遺言書を作成したら、なるべく早めに古い遺言書は破棄するべきだといえるでしょう。

 

 

その他の遺言書の利用も検討する

選択肢は自筆証書遺言だけではない

自筆証書遺言は、遺言者が比較的自由に作成できる反面、遺言書そのものが無効になってしまうリスクがあります。

自筆証書遺言に余程強いこだわりがなければ、他の選択肢を探した方がよいかもしれません。

 

 

おすすめなのは公正証書遺言

無効になる可能性が低いという点からおすすめなのは、公正証書遺言です。

 

 

公正証書遺言とは?

公正証書遺言とは、法律のプロである公証人が、主に遺言者が口述した内容に基づいて作成する遺言書をいいます。

 

 

公正証書遺言がおすすめされる理由

専門家が自筆証書遺言よりも公正証書遺言をおすすめする理由

自筆証書遺言は遺言者ご本人が作成する遺言書ですが、公正証書遺言の作成には、法律のプロである公証人が携わります。

そのため、遺言書の不備が原因で無効になってしまうことはまず考えられません

そのため、弁護士などの専門家は、安全性の観点から公正証書遺言をおすすめすることが多いのです。

 

 

この記事のまとめ

自筆証書遺言が無効になるケースに対する専門家の見解

いかがでしたか?

 

自筆証書遺言が無効になってしまうケースを紹介しました。

 

自筆証書遺言は、お手軽に作成できる反面、無効になってしまうリスクが高い遺言書です。

そのため、自筆証書遺言を作成される際には、弁護士や行政書士といった専門家と相談しながら作成するのが安全です。

また、公正証書遺言を利用することもご検討されるとよいでしょう。

 

 

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執筆者: やさしい相続編集部