昔は一般的でなかった遺言書ですが、近頃では耳にする機会も多くなり、その利用者もどんどん増加しています。

このように、広く普及した遺言書ですが、遺言書を使えばどのようなことができるかまで熟知されている方はまだまだ多くありません。

 

そこで、ここでは、遺言書を使ってできる9つのことを、くわしく解説していきます。

そもそも遺言書とは?

そもそも遺言書とはどのようなものか

遺言書は、この世に遺されたご遺族などへ向けた、故人の最期のメッセージです。

しかし、遺言書はただのお手紙ではありません。そこに記載されている内容には法的な効力が認められる、特別なメッセージなのです。

 

そのため、遺言書に記載されている法的な効力をもつ内容は、できる限り実現すればよいものではなく、必ず実現すべき特別なものなのです。

 

 

遺言書の効力

遺言書の効力とは

遺言書に記載されている内容には法的な効力が認められているといっても、一体どのような効力が認められているのでしょうか?

 

遺言書の効力、つまり遺言書を使ってできることは、主に次の7つです。

【遺言書を使ってできること】

  1. 遺贈を行うことができる
  2. 相続する遺産の割合を指定できる
  3. 遺産分割の方法を指定または委託できる
  4. 相続人の廃除ができる
  5. 遺言執行者を指定できる
  6. 子どもを認知できる
  7. 未成年後見人を指定できる

 

ここからは、これらの7つについて、くわしく解説していきます。

 

 

 

(1)遺贈を行うことができる

遺言書を利用すると遺贈を行うことができる

遺言書を使うと、遺贈を行うことができます。

第九百六十四条本文
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

 

遺贈とは?

遺言書を利用してできる遺贈とは

相続といえば、被相続人と血の繋がった相続人が、その遺産を引き継ぐといったイメージがあります。

しかし、遺言書を利用すれば、相続人だけでなく相続人以外にも財産を譲ることができます。これを遺贈といいます。

 

 

2種類の遺贈

遺贈には、包括遺贈特定遺贈の2種類があります。

 

包括遺贈とは?

遺言書を使ってできる包括遺贈とは

包括遺贈とは、全部または一定の割合の財産を遺贈することをいいます。

たとえば、

 

「全財産をA氏に遺贈する」

「全財産の30%をB氏に遺贈する」

 

といったように、具体的な財産を特定することなく遺贈を行います。

 

包括遺贈により財産を譲り受けた者を包括受遺者といいますが、包括受遺者は相続人と同等の権利義務を負います。

第九百九十条
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

第八百九十六条本文
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。

そのため、譲り受けた財産に借金が含まれている場合には、包括受遺者は受遺者はその借金も譲り受けることになりますから、場合によっては相続放棄が必要なケースもあります。

【関連記事】要注意!相続放棄の手続きには期限がある

 

 

特定遺贈とは?

遺言書を使ってできる特定遺贈とは

特定遺贈とは、特定の財産を対象とする遺贈をいいます。

たとえば、

 

「A銀行の普通預金をB氏に遺贈する」

「不動産CをD氏に遺贈する」

 

といった具合に、財産を特定して遺贈します。

包括遺贈を受けた場合と異なり、遺言書で特に指定がない限り、特定遺贈を受けた受遺者が借金を引き継ぐことはありません

 

 

遺贈も遺留分は侵せない

遺言書を使って遺贈しても、遺留分を侵すことはできない

遺贈を行う場合であっても、遺留分を侵害することはできません

第九百六十四条
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。ただし、遺留分に関する規定に違反することができない。

 

遺留分とは?

遺言書でも侵害できない遺留分とは

遺留分とは、一定の相続人に法律上認められている、相続できる最低限の財産です。

遺留分は特定の相続人にしか認めらておらず、その割合も相続人によって異なりますので、遺言書で遺贈を行う際には注意が必要です。

 

遺留分のくわしい解説は「遺留分の割合・計算方法を徹底解説。相続に泣き寝入りは禁物です。」をご参照ください。

 

遺贈を行うメリット

遺言書で遺贈を行うメリット

遺贈を行うメリットは、なんといっても相続人以外に遺産を引き継げることです。

遺贈を行わない場合、通常は故人の遺産は相続人にしか引き継がれませんが、遺贈を行うことで、相続人でない人にも財産を譲ることができます。

相続人となるご家族以外にも大切な人がいるなどの場合には、遺言書を使って遺贈を行うことをおすすめします。

 

 

(2)相続する遺産の割合を指定できる

相続人が相続する遺産の割合を指定できる

通常、相続が始まると、法律に定められた割合に従って、相続人同士で遺産を分配することになります。

たとえば、配偶者と子ども1人が相続人となる場合、配偶者と子どもは2分の1ずつの遺産を相続することになります。

第九百条
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

しかし、ご家庭により事情はさまざまですから、法律で決められた割合に従って遺産を分けるのでは、都合が悪い場合もあるでしょう。

そこで、遺言書を使うことによって、各相続人が相続する遺産の割合を指定することができます。

 

ただし、遺言書で相続する遺産の割合を指定する場合も、遺贈を行う場合と同様に、遺留分を侵害することはできませんので、ご注意ください。

第九百二条
被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。

 

(3)遺産分割の方法を指定または委託できる

遺産分割の方法を指定または指定を委託できる

遺言書を使えば、特定の財産を特定の相続人に帰属させることもできます。つまり、ある特定の遺産を相続させたい相続人がいる場合に、その相続人に特定の財産を相続させることができるのです。

 

また、遺言書で指定することにより、遺産分割の方法を第三者に決めてもらうことも可能です。たとえば、ご家庭の事情に精通した、信頼できる知人に遺産分割の方法を決めてもらうのがよいケースもあります。

 

 

要注意!遺言書とは異なる遺産分割が行われることもある

遺言書で指定した遺産分割の方法が遺産分割協議で否定されることもあるので要注意

遺言書に遺産分割方法の指定がある場合、遺言書で指定された内容に従って遺産分割が行われるのが通常です。

 

しかし、相続人全員の合意があれば、遺言書で指定された方法以外の方法で遺産分割を行うことができます。そのため、遺産分割の方法を指定する際には、相続人全員が反対するような方法を指定するのは避けた方がよいでしょう。

第九百八条
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

 

 

(4)相続人の廃除ができる

遺言書を利用すれば、相続人の廃除を行うことができる

相続人となる人は、法律で決まっています。

しかし、遺産を相続させたくない相続人がいることもあるでしょう。そこで、遺言書を利用することによって、一定の場合に、相続人としての地位をはく奪することができます。これを「相続人の廃除」といいます。

第八百九十三条
被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

 

相続人の廃除のための条件

相続人を廃除するための条件

「気にいらない」「うまが合わない」といった理由では、相続人を廃除することはできません。

相続人を廃除するためには、被相続人に対する虐待や重大な侮辱があったこと、またはその他著しい非行があったことが必要です。また、遺言書を使って相続人を廃除するためには、遺言執行者の選任が不可欠になりますのでご注ください。

 

なお、遺言書を使わずとも、被相続人が自ら家庭裁判所に対して相続人の廃除の請求をすることができます。

第八百九十二条
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

 

(5)遺言執行者を指定または指定を委託できる

遺言書を利用すれば、遺言執行者を指定することができる

遺言書を使えば、遺言執行者を指定、またはその指定を委託することができます。

 

ただし、遺言書では指定することしかできず、遺言執行者に指定された人がその就任を承諾するかどうかはわかりません。そのため、遺言執行者を指定する際には、指定しようとする人にあらかじめ了解を得ておくことが必要となるでしょう。

第千六条
遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

 

遺言執行者とは?

遺言執行者とは

遺言執行者とは、遺言書の内容の実現を託された、いわば遺言者のエージェントのような存在であり、遺言執行者は遺言書の内容を執行するために必要な一切の行為をする権限を有しています。

第千十二条
遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する

この遺言執行者を遺言書で指定することによって、遺言書の内容が実現する可能性を高めることができます。その他にも、遺言執行者を指定することによって、相続人が行うべき手続きの負担が軽減されたり、迅速に相続の手続きを終えることができるなど、遺言執行者にはさまざまなメリットがあります。

 

遺言執行者のくわしい解説は「遺言執行者とは?遺言執行者の選任の方法や職務・報酬まとめ」をご参照ください

 

 

(6)子どもを認知できる

遺言書を利用すれば、認知することができる遺言書を使わずとも認知をすることはできますが、遺言書を使って認知することもできます。ただし、遺言書を使って認知する際には、遺言執行者が必要になりますので、注意が必要です。

第七百八十一条
認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。
2 認知は、遺言によっても、することができる。

【関連記事】遺言執行者とは?遺言執行者の選任の方法や職務・報酬まとめ

 

 

(7)未成年後見人を指定できる

遺言書を利用すると、未成年後見人を指定することができる

遺言書を使うと、未成年後見人を指定することができます。

第八百三十九条本文
未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。

 

未成年後見人とは?

遺言書で指定できる未成年後見人とは

未成年後見人とは、特定の未成年者を守る・後見する役割を負う者をいいます。20歳未満は未成年者として、親権者の親権に服することになっています。

 

しかし、両親が2人とも亡くなった場合や、実親が親権を適切に行使できない場合もあるのです。こうした場合に未成年後見人が選任され、未成年後見人が未成年者の世話をすることになります。

 

もしもの時に備えて、お子さんが生まれたらすぐに遺言書を作成して、未成年後見人を指定されるケースもあります、

 

 

有効な遺言書でないと意味がない

有効な遺言書でないと意味がない

遺言書はただのお手紙でないことは冒頭でも説明しましたが、ただのお手紙ではないが故に、その作成にはルールがあります。このルールを守らないと、最悪の場合、遺言書そのものが無効になってしまい、せっかく作成した遺言書が無駄になってしまいますので、ご注意ください。

 

遺言書が無効になってしまうケースのくわしい解説は「遺言書が無効に!?自筆証書遺言が無効になる9つのケース」をご参照ください。

第九百六十条
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

 

この記事のまとめ

遺言書の効力に関する専門家の見解

いかがでしたか?

 

遺言書を使うと、非常にたくさんのことができるようになります。

ぜひ一度、遺言書のご利用をご検討されてみてはいかがでしょうか?

 

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執筆者: やさしい相続編集部