持ち主がわからなくなっている土地の活用を進めるため、政府が新たな制度づくりに着手した。新制度では、道路や公園の整備、再開発事業といった公的な目的であれば、所有権をそのままにして行政が利用できるようになる見込みだ。

 

義務でない登記制度の問題点

土地の持ち主に関する情報は不動産登記簿に記載されている。持ち主が亡くなり相続が発生すると、相続登記を行い持ち主の情報を書き換えることになる。ところが、登記は法律上の義務ではないため、相続登記が行われず放置されている土地が少なくない。極端なケースでは、登記制度が始まった120年前の人が持ち主になっているケースもあるという。

 

相続登記がきちんと行われない場合、登記簿上は亡くなった人が持ち主のままとなり、実質的な所有者がだれなのかわからなくなってしまう。これが何世代も繰り返されると相続人の共同所有者がネズミ算式に増え、自分が権利者であることを自覚していない人も多くなる。こうした土地の売買を行うためには、100人を超える権利者全員の同意を取り付ける作業が必要なことも珍しくなく、公共利用の際に行政コストの破綻につながってしまう。

 

震災復興でも登記されない土地が社会問題に

東日本大震災の復興事業において、増えすぎた相続人に連絡がつかないなどで行政の復興計画が阻害されたケースも多数報告されており、社会問題となったことは記憶に新しい。近年、高齢化にともなう相続件数の増加や都市部への人口流出によって、地方を中心に持ち主のわからない土地がますます増加している。土砂崩れの危険があるにもかかわらず所有者が不明なため防災工事が進められないなど、身近なケースで実害が増加することが予測される。

 

今回検討が始まった新制度は、権利者全員の同意がなくても土地を利用できるようにすることで、防災などの緊急性の高い課題に適切に対応できるようにする狙いがある。

 

土地を所有する側から見ると、今後はきちんと登記を行わなければ知らないうちに土地を利用される可能性が出てくる。土地は私有財産である一方、地域コミュニティにおける公共財という側面も併せ持っていることを認識すべきだろう。空き家放置問題と同様、利用価値がない土地だからといって放置してしまうと周囲に大きな迷惑をかけてしまう。重大な実害が発生した場合には所有者としての管理責任や賠償が問われることになる。

 

相続にはさまざまな手続きがあり、義務でない不動産登記は後回しになりがちだ。そうして2世代目まで持ち越された相続の際には権利者が把握づらくなり悪循環になってしまう。相続人どうしで早めに連絡を取り合い、相続登記で権利の所在を明らかにしておくことが、将来の思わぬトラブルや損失を避けるためには必要になってくるだろう。

 

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執筆者: やさしい相続編集部