相続税の節税のためアパートを建てる人が増えている。国土交通省によると2016年度に着工された住宅は97万4137戸(前年度比5.8%増)で、2年連続の増加となった。中でもアパートを含む「貸家」の着工数は前年度比11.4%増の42万7275戸と目立った伸びをみせ、リーマンショックのあった2008年度以来の高水準となった。

 

建築資金をまかなうためのアパート融資も、2015年の相続税改正後に急増している。日本銀行の統計によると、2016年12月末の融資残高は過去最高の22兆1668億円(前年同月比4.9%増)にのぼった。所有地にアパートを建てると更地や畑の場合よりも土地の評価額が低くなり、相続税を安くすることができる。2015年の税制改正によって相続税が実質的に増税され、節税対策への関心が高まったところに、低金利下で貸出先を拡大したい金融機関の思惑が重なり新築ラッシュが起きたとみられる。

 

節税が本末転倒に アパート経営のトラブルに注意

 

このところ大手不動産業者に対する集団訴訟が報道されるなど、アパート経営を巡るトラブルが表面化してきている。この背景にあるのが不動産業者がオーナーにアパートを建築させた上で一括で借り上げ、入居者に転貸しする「サブリース」という契約形態。大家であるオーナーは入居率にかかわらず一定の収入が得られるうえ、アパート経営に関する業務をすべて代行してもらえるため、経験がなくてもアパート経営を始められるという利点がある。

 

一部の業者は入居見込みもないような場所にアパートを建築させ、建築費で収益を上げる一方で、オーナーに対しては「家賃を保証する」といううたい文句で契約を勧めておきながら契約期間中に賃料の引き下げを迫ったり、一方的に契約を打ち切るなどしてトラブルを起こしている。期待どおりに家賃収入が入らなければ、建築費用として借りたお金を返せなくなり、節税分よりも損失の方が大きくなりかねない。

 

不十分な規制 より慎重な判断で自衛を

 

トラブルに発展するケースでは、賃料改定や契約打ち切りの可能性について不動産業者がきちんと説明せず、「30年間の一括借り上げです」「安定収入を保証します」などと不正確な説明しか行っていない場合が多いとみられる。

 

このようなトラブルが後を絶たない原因のひとつに、サブリースに対する規制の甘さがある。企業と消費者の利害が対立する場面では通常、弱い立場にある消費者を保護するために、企業側に大きな義務が課される。たとえばアパートの賃貸契約では、貸主は入居者に対して「重要事項説明」を行う義務がある。しかしアパートを経営するオーナーは「消費者」ではなく不動産会社と同じ「事業者」と見なされるため、とくに保護するための法律がない。オーナー自身がリスクをきちんと把握し、トラブルを避けるために自衛しなければならないのが実情だ。

 

トラブルに巻き込まれないためには、不動産会社の勧誘をうのみにせずアパート経営のリスクに目を向ける必要がある。問題が相次ぐ根本的な原因は十分な入居者数が見込めないにもかかわらず、アパートが次々と建設されていることだ。地方部を中心に人口が減少する中、住宅需要に見合わないアパート建築が続けば空室が増えるばかりで経営が成り立たなくなるのは明らかだろう。

 

相続税対策のつもりで借金をした挙句に入居者の入らないアパートを建築したのでは、相続人に負の遺産を残すことになってしまう。アパート建築を検討する際には、中長期的なアパート経営の見通しや、無理のない返済計画を考慮することが重要だ。

 

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執筆者: やさしい相続編集部