第二次世界大戦中、ナチスの迫害から逃れるユダヤ人を救ったことで知られる外交官・杉原千畝の遺品の相続について、千畝の妻の遺言の有効性をめぐって争われていた裁判で、東京高等裁判所は6月26日、遺言は有効とする判決を言い渡した。

 

1986年に死去した千畝の遺品は妻が相続していたが、妻も2008年に死去している。遺言は妻が入院中の2001年に公証人が作成し、遺品を長男の子2人に相続させるとしていた。これに対して千畝の四男が、妻は遺言作成時には意識障害があり、遺言の内容を確認できる状態ではなかったとして、遺言の無効確認を求めて訴訟を起こしていた。

 

昨年の一審判決(東京地方裁判所)は、四男の訴えを認め、遺言を無効とする判決を下した。しかし今回の高裁判決は、妻が退院後も講演活動を続けていたことなどから、遺言の内容を確認できないほどの重篤な障害があったとはいえないとして、一審の判断を覆した。

 

遺産相続の順位

遺産の相続では、遺言書で指定されていなければ、法律に定められた相続順位にしたがって相続するか、相続人の間で遺産分割の協議を行って配分を決めることになる。相続順位は、故人の配偶者と子が最も高い。今回の事例では、故人(千畝の妻)の配偶者(千畝)と長男・次男・三男はすでに亡くなっており、四男がすべての遺産を相続できる。しかし、故人が遺言書を残している場合は、遺言書の内容が優先されるため、長男の子が相続する。つまり、遺言の有効性しだいで相続人が変わる状況だった。

 

遺言書を残していても注意が必要

どれだけきちんと遺言を残していても、その内容が遺族にとって納得できないものであれば、トラブルの原因になることもある。元気なうちに、遺産についての思いを関係者に伝え、理解を得ておくとよいだろう。

 

また今回の事例では、遺産の内容は千畝の手記や写真など、経済的価値はほとんどないものだった。たとえ大金をめぐる争いでなくても、故人の思い出がつまった遺品などは、遺族のこだわりもあり、思わぬ形で対立を生むことがある。「遺産争いをするほどの財産はない」と他人事のように思っている人も、油断は禁物だ。

執筆者: やさしい相続編集部